〜第八話〜
永太は駄菓子屋へ向かっている途中、あることを考えていた。
それは、もしまたループをするとして、何回までループすることが出来るのかだ。回数制限があるのか、それとも本当に彼方を助け出すまでループから抜け出せないのか。しかし、考えても答えが出るわけではなかった。
「よう、早いな」
急に話しかけられ、永太は驚き前を向く。すると、そこには優斗がいた。考え事をしていて気付かなかったが、既に駄菓子屋の前まで来ていたらしい。
「健太と彼方はまだ来てないぜ。まあ、まだ集合時間の5分前だから気長に待とう」
「あ、あぁ。そうだな」
その後、健太と彼方が来て、1ヶ月前に聞いた会話をする。永太はチャンスだと思い、彼方に山について聞くことにした。
「なぁ、俺らが小学生の頃よく行ってた山のことって覚えてるか?」
「ん?あぁ!あそこか!あの頃は楽しかったなぁ」
健太が感傷に浸るように言う。
「でもどうして急に山のことなんか聞いてきたんだ?」
「いや、少し気になっただけだ。そういえばよく山で遊んでたよなって思って」
正直、健太と優斗の反応はどうでもよかった。なぜなら、永太が求めているのは彼方の反応だったからだ。そして、彼方が口を開く。
「確かに、小学生の頃はよく行ってたなぁ。でも、最近はきっかり行ってないな」
その言葉を聞き、永太は疑問に思った。じゃあなぜ1ヶ月後、彼方は山へ行っていたのか。そういえば、彼方が日課として散歩を始めたのはいつなのだろうか。この疑問を訊かずにはいられなかった。
「そういえば風の噂で聞いたんだけど、彼方、最近朝に散歩してるって本当か?」
彼方が少し驚いたような顔で言う。
「あー、実はそうなんだよ。最近日課として朝ランニングしてるんだよな。親には散歩って言ってるけど。正直に言えば知られたくなかったんだが、仕方ないか」
そういい、彼方は笑った。そして、永太の疑問が加速した。今さっき彼方は、最近は山へ行っていないと言っていた。嘘をついているのか?そう思ったが、彼方がわざわざ嘘をつく理由はないはずだ。ただ単に1ヶ月で走るルートが変わっただけかもしれない。永太の頭を疑問が埋め尽くしたが、これ以上は訊くわけにもいかないと思い、その日はそのまま遊んだ。
家に帰り、考えを整理する。しかしいくら考えても、いい案は浮かんでこない。彼方が死ぬのは1ヶ月後。時間はまだ残っている。そう思うと、さっきまで遊んでいたことによる疲労感が襲ってきた。
「今日はもう寝よう」
そう呟き、ベッドに寝転がる。永太は、過去に戻って初めて安心してゆっくり眠った。
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