〜第六話〜

「ここには久しぶりに来たな」

永太は山の中へ入り、そう呟いた。小学生の頃は、この山によく来ていたのだ。小学生の冒険したい欲を満たすために、ここの山は最適だった。しかし、中学校になってからは、距離の問題や飽きなどにより行くことは少なくなっていた。

じっくり思い出に浸りたい所だが、彼方を早く見つけなければならない。この山には道があり、昔はそれを頼りに進んでいた。山の最奥まで行くと広場があるので、よくそこで遊んでいたのだ。永太は、彼方がいるとしたらそこだろうと踏んでいた。

そして、道の奥まで来たが、彼方はいなかった。

「無駄足だったか」

無意識にそう呟き、山から降りようと考えた。時間も永太が外へ出てから30分を経過しようとしていたので、もう彼方は家に戻っているかもしれないと思った。

最後に広場を見回して帰ろうと思った時、ある違和感を覚えた。広場の一部分が少し凹んでいる気がしたのだ。広場に近付き、よく観察してみる。すると、明らかに色の違う真新しい土があったのだ。

嫌な予感がした。急いでそこの土を掘ろうとするが、素手な為時間が掛かる。

「間違っていてくれ...!」

永太は、考えうる中で最悪のことを想像していた。それは、彼方がここに埋められているのではないかという予想だった。

永太の頭の中にネガティブな感情が溢れ出していた。考えたくなくても、考えてしまう。

そして、手に土とは違う感触を覚える。そこを重点的に掘り、感触の元を確かめようとする。そして、掘っていた所をみると、人の肌の色をした冷たいものがあった。

それを見た永太は、無我夢中で土をかき分けた。

何分経ったか分からないほど土を掘っていた永太の手には、土に混じって血が含まれていた。しかし、麻痺をしているのか、痛いという感覚はなかった。

改めて埋められていた物を見ると、それは既に冷たくなっている彼方だった。

助けられなかった。

永太は、過去に戻ったのに彼方を助けられなかったという事実に責任感を感じ、しばらくの間放心していた。

1時間ほど経った後、永太はやっと冷静となり、彼方の遺体を背負って山を降りた。その後、彼方の家へ彼方の遺体を持っていった。

その後は何が起きたかあまり覚えておらず、いつの間にか家に帰ってきていた。ご飯食べず、風呂も入らず、その日はずっと自分の部屋にいた。

永太は、彼方のことをずっと考えていたが、ご飯を食べていない為、食欲が襲ってきた。彼方が死んだというのに、少しでもご飯を食べたいなどと思った自分に永太はどうしようもない怒りを覚え始めた。

そして、あることを考え始めた。それは、自分の何を犠牲にしてもいいから、もう一度過去に戻りたい。という願いに近しいものだった。

ずっとそんなことを考えていたが、次第に眠気が襲ってきて、寝てしまった。


翌日、絶望感に苛まれていた永太は、少しでも気分転換をしようとスマホを見て、驚いた。

なぜなら、そこに表示された月日は6月4日。永太は、1ヶ月前に戻っていた。

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