〜第三話〜

学校に着いた永太は、席につき周りの様子を窺う。

「とりあえず、周りの噂話でも聞こうかな」

しかし、自分が話しかけられては本末転倒だ。その為に永太は本を読むフリをするという作戦に出た。そうして周りの話を聞く。大体が世間話ばかりで、彼方が行方不明になったことに関与するような情報は聞くことができなかった。そもそも、クラスの連中が知っているとも考えにくい。と少し考えて思った。そうしている内に、人に話しかけられた。

「よう河村!お前本読むようなタイプだったのか?」

周りの話を聞くのに集中していた為か、近くに来られていることに気づいてなかったので、永太はビックリした。

「あ、あぁ。気分転換だよ。親に本を読んだ方がいいって言われてね。」

「そうなのか。じゃ、頑張れよ。まあお前のことだから1週間後には読むのやめてそうだけどな」

言われたことに少しイラつきながらも、永太は周りの話を引き続き聞くことにした。


結局のところ、情報は得られなかった。彼方に対しての噂も、当たり障りないものばかりだった。そもそもクラスが違うのだから、彼方のことを話してるやつなんかほとんどいなかった。

今日も健太からメールが来た。いつも通り、みんなで遊ぼうといった内容だった。

彼方もいるのでもちろん行ったが、何も情報は得られなかった。

このようなことが数十日間続き、永太は焦っていた。彼方がいなくなるまで、残り1週間を切っていたからだった。彼方を助ける良い案も浮かばなかった。そもそも、いなくなる原因も分かっていないのに、良い案が浮かぶわけがなかったのだ。

「このままではいけない。なんとかしないと」

そのような言葉が永太の頭を渦巻き、焦りを加速させた。

そうして考えた作戦は単純明快、いなくなる日の前日に彼方と一緒に過ごそうというものだった。彼方と一緒に居るには、彼方の家に泊めてもらうのが1番良いと思った。

「俺だけじゃ少し不安だな。健太と優斗も呼ぼう」

そう考え、健太と優斗にメールを送った。すぐには返信は来なかったが、両方共承諾してくれた。これで一安心。そう思うとなんだが眠くなっていった。作戦決行日は5日後。それまではゆっくり過ごそうと考え、永太は眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る