〜第一話〜

永太が起き、スマホを見ると時間は7:12となっていた。しかし、いつもと何かが違う。最初の違和感は、体だった。いつもは届くはずの場所にあるスマホが、なぜか届かなかったのだ。だが、距離を見誤っていただけだろうと思い直す。しかし、これが思い違いでない事を永太は後に知ることとなる。

「あれ、おかしいな」

高校の制服を取ろうと思い、いつも置いてある場所を見るとそこには見慣れた制服があった。中学校の頃の制服だった。それに、なんだかいつもより置いてある場所が高い気がする。

「うーん、母さんが間違えたのかな」

そんなことを思いながら、階段を下りリビングへと向かう。

「おはよう」

母さんがいつも通り料理をしている。

「おはよう。って、あんたが着替えずに降りてくるなんて珍しいわね」

「それなんだけどさ、制服間違えてたよ。あれ中学校の頃のやつじゃん」

「何言ってんの?あんたはまだ中学生じゃない」

不思議そうな顔で、母さんがそう言う。

頭にハテナを浮かべながらも、一旦テーブルに着く。することがないので、視界を右往左往させていると、カレンダーが目に映った。そこには2023年と書かれていた。何かがおかしい気がし、スマホで今の年を調べてみると、そこに表示されたのは2023年。俺がいたはずの2025年の2年前だ。ドッキリ?とも考えたけど、母さんはそんなことをするタイプではない。頭を落ち着かせる為に、一度部屋に戻ることにした。

1番に最初に頭に出たのは過去に戻ったのではないか?ということだった。しかし、過去に戻った、のだとしたらなぜ戻ったのか。一応勘違いがないかGoogleや他の検索サイトで調べてみたが、いくら調べても2023年としか出てこなかった。調べるのに夢中になっていて時間を気にしていなかったが、ふとスマホの左端に目をやると、そこには7:40と表示されていた。家を出るのが8:00なのでもうあまり時間がなかった。考えても仕方がないので、急いで制服に着替えリビングへ向かう。

朝食を食べ、学校へ向かう。しばらくは通らないと思っていた通学路を通り、既に懐かしいと感じている中学校へ来た。

「2年前ってことは、中学2年生だよな...」

不安に駆られながらも、靴箱に向かい自分の出席番号の所を開ける。そこには、「永太」と自分の名前が書いてある上靴が置いてあった。

そして、周りをよく見てみると、知っている人ばかりだった。最初から周りを見ていたら、不安も少しは和らいだだろうが、永太にそのような余裕はなかった。

よく分からないまま、学校を終えて家に帰宅する。

すると、健太からメールが来た。

「今日もいつものメンバーで遊ぼうぜ!」

中学2年生の頃のいつものメンバーといえば、自分、健太、優斗、彼方...のはずだ。

すっかり頭から抜けていたが、過去に戻ったのなら彼方もいるかもしれない。そんな期待と少しの不安を抱えながら、俺は遊びに行く事を決意した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る