エピローグ


白色の空間で俺は目を開ける。


さて、これで俺は無事に異世界へと来たわけだ。しかし、辺りを見回しても誰もどころか何もない。


俺は首をかしげながらも、辺りを散策する。




「お兄ちゃん」




俺は後ろからした声の主に振り返る。声からして女性の声だ。しかも美人だろうことが容易に想像できるような心地いい声だ。


振り返って見れば、紺色のスカートに白のブラウス。鮮やかな緑のネクタイをした超絶美人な女子高生がいた……胸大きいな。


この空間にこの美人……もしかしたら、案内人?の女神様?かもしれない。


俺はこの女子高生風美人に聞いてみる。



「もしかして、女神さまでいらっしゃる?」



「へ?……ぷははははは」



笑った顔が滅茶苦茶似合うな。亜麻色の髪もソレを引き立てている……ん?亜麻色の髪?いや、まさかだ。年齢が違い過ぎる。



「分かんない?私ナナだよ?おにいちゃ?」



「っ!!」



……いや、マジかよ。



「何でここへ?」



「ああ、うん、実は少しだけ時間を貰ったんだ。私が高校生になった頃くらいに突然、『今ノ生活ヲ授ケタ者アリ、汝、会フ事ヲ望ムベシ」ってね」



なるほど、俺も出会ったアレだろう。



「そしたらこの空間に来て、何があったのか全部思い出したわけ。しかも、こうなってたかもなんてIFルートも説明されて、今ちょっとブルーなの」



「なるほど、経緯は分った。けど、俺に何の用だ?」



「お兄ちゃんに、感謝を伝えるためだよ」



「感謝?」



「うん、あの時私は幼かったからね。ちゃんと言葉にしておきたいから」



俺は黙ってその言葉を受け取る。



「お兄ちゃんのおかげで、私の人生は良いものに変わっていきました。これからは、私自身の努力も必要だけど、それが出来るのもお兄ちゃんのおかげです。


心から感謝してます。ありがとう…大好きです」



「ハハハ、大好きって言葉は好きな奴にとっておけよ」



「あんな風に助けられたなんて知ったら、惚れない女の子なんていないよ」




チュッ



柔らかな感触が唇から伝わる。



「ありがとう、すげーうれしい。女神って言ったのは間違いじゃない。本当にそれくらい綺麗になったな。……綺麗になったナナちゃんの姿を見ることが出来て、良かったよ」



「……お兄ちゃんって、本当にカッコよかったんだね……グスッ……やだよ……一緒に居たいよ……」



涙交じりのナナちゃんの声がする……正直もらい泣きしてしまいそうだ。


でもそれ以上に、色んなことに冷めてしまったこんな俺でもこんなにも想ってくれる人がいるんだという暖かな気持ちになる。



「ありがとう、そこまで想ってもらえて俺には身に余る光栄だ」



「っ!!」



俺はナナちゃんを優しく抱きしめる。



「俺はいつまでも見守っている」



見守っているなんて無責任な言葉は俺は正直嫌いである。でも、そういうしかない場面もあることを俺は知った。




「分かった……私も頑張るね。お兄ちゃん、ありがとうっ」



最後に見た、泣き笑いのナナちゃんの顔が印象的だった。




ああ、ホント、助けられてよかったぜ。

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異世界に旅立った日 リンゴの騎士 @hima-ringo

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