接触-アピールタイム-

『-………』

「…これが、今『二つの世界』で起きている危機だ。そして、此処からが『本題』だ」

「「「……っ」」」

 そう言われて龍騎士達は、ゆっくりと顔を上げてこちらを見る。…三人共、僅かだがやつれていた。

「…あんた達は、どうする?

 危機的状況のなかで、『誰かが解決する』のを世界の隅でびくびくしながら待つか?…このリアルになってしまった世界で、いつか来るかもしれない『リタイア』をただ黙って受け入れるのか?」

「「………」」

「それとも、この危機を俺と共になんとかしたいか?混沌の奴らと戦い自分の大切な人達を助けたいか?

 当然、混沌の奴らは容赦なく襲って来るから命が幾つあっても足りないだろう」

「「……」」

「…君は、どうしてそんなに覚悟が決まっているんだ?」

 二つの選択を突き付けると、三人の内二人は本気で悩み始めた。…一方、年上の龍騎士は俺に問う。


「『俺にしか出来ない』から。…自分の大切な人達を助けられるのは自分だけ。

 だったら、どれだけ怖くてもやるしかないんすよ」

「「「……」」」

「…それに、『勝算』もありますから」

「「「……え?」」」

「…知りたいなら、どうすれば良いか分かるよな?」

 すると、彼らは少し瞳に希望を宿した。…勿論俺は、直ぐには見せず先に答えを求めた。当然彼らは、顔を見合わせる。

「…少し、話し合わせくれ」

「…まあ、いきなりこんな話をしても理解出来ないっすよね。ただ、なるべく早く-」

 期限を決めている最中、不意に宿全体が揺れ始める。…なので、インベントリを確認すると特別な魔石達は使用可能になっていた。


「…な、なにこれっ!?」

「じ、地震っ!?」

「…み、みんな、直ぐにベッドの下にっ!」

「「「……違う」」」

 龍騎士達が慌てる一方、彼らの相棒達は宿の外を見てそう呟いた。…はあ。このタイミングで襲撃するって事は、『権能』のリキャストタイムが終わったと考えるべきだろうな。

「…な、なにが来たってんだよ?」

「…『混沌の勢力』だよ」

「…う、ウソ」

「…どうやら、『向こう』は待ってくれないみたいですね」

「…ど、どうする?」

「…今の俺らじゃ、逆立ちしたって勝てねぇだろうな」

「…仕方ない。

 -出血大サービスで、『勝算』を先に見せてやる」

 そう言って、インベントリから例の魔石達を取り出し素早くセットする。それが済むと、相棒は窓を開け飛び降りた。


『-っ!』

 その直後、下から眩しい光が発生た。そしてそれが収まると、ドラゴンに戻った相棒が窓の外で待機していた。

「とりあえず、防衛隊と一緒に街の上空で観戦してなっ!」

『……っ』

「ヴァイスッ!」

『イエス、マスターッ!』

 なので、俺は素早くライドし相棒の背中から彼らに告げた。すると、彼らはまた顔を見合わせた。だが、俺は返事を待たずに相棒にゴーを出す。

 直後、相棒は飛翔を始め瞬く間に街の上空に到達した。それから、相棒はなるべく早く広野の方へ向かう。…っ!

『-主力は敵の殲滅に向かえっ!残りは街の防衛に務めよっ!』

『イエス、サーッ!』

 その途中、防衛隊が次々と出撃するのが見えたので相棒は高度を少し上げた。…さてと-。

 それに合わせて、俺は望遠鏡で敵の勢力を確認する。…見た所、巨兵等の厄介な奴はいないみたいだ。


「-フラッシュっ!」

「協力しますっ!」

「助かるっ!…それにしても、なんて数だ」

「ええ。…まあ、厄介な能力を持つ奴が居ないのがせめてもの救いですね」

「…いや、本当に君が居てくれて良かった。

 ならば、奴らの攻め方も分かるか?」

「はい。…では、お手数ですが主力の人達を集めて貰えますか?」

「分かったっ!」

『-っ!』

 隊長は二つ返事をすると、笛を吹いた。それを聞いた隊員達は、即座に集まって来る。…すると、三つ目の魔石の効果が発動した。

『…っ!?』

「今、皆さんには『母なる存在』の力が宿りました。…なので、皆さんの力はどれだけ戦っても無くなる事はありませんし、敵のいかなる攻撃も皆さんを襲う事はありません」

『……』

 簡潔に効果を説明すると、隊員達はポカンとしていた。…正直、彼らの立場だったら俺も同じ反応をしていただろう。


「…これが、偉大なる存在の力か。

 -ならば、恐れる者は何もないっ!」

『オォォォォォーッ!』

 けれど、隊長は感動した様子になり直後戦意を漲らせて叫ぶ。…それを聞いた隊員達は、突然雄叫びを上げて応えた。確か、今のは戦意を高めるバフだな。

「攻撃、開始ぃーっ!」

『イエッサーッ!』

 そして、隊長が号令を出すと隊員達は混沌の軍勢に突撃していく。…すると、少しして派手な爆発があちこちで起きた。

「…いやはや、お見事ですね」

「これも、君のおかげさ。…それにしても、連中は何の目的でこの街に来たのだろうか?」

 それを眺めていると、ふと隊長は当然の疑問を口にした。…考えられるとすると-。

 俺は、後ろをチラリと見ながらとある予想を立てた。…そうなると、やはり『アレ』には相応の制限があるのか?


「…どうした?何か、心当たりがあるのか?」

「…そうですね。とりあえず、無事に片付いたらきちんと説明します」

「…ふむ。では、翌朝私の執務室に来い」

「了解です。…おや?」

 そんな話をしていると、急に激しい戦闘の音が止んだ。なので、直ぐに広野を確認すると確かに敵は殲滅されているように見える。…しかしどうしても嫌な予感がするので、俺は素早くメガホンの形をしたアイテムを取り出した。

「『-油断しないで下さいっ!敵は地下にも居る可能性がありますっ!』」

『…っ!?』

「な、なんだと?」

「…もしかしたら、地上を進んでいた奴らはこちらの目を欺く『デコイ』かもしれません」

「ちいっ!降下だっ!」

『グルアアアッ!』

「…っ!」

『-グルオオオオッ!』

 可能性を告げると、隊長はパートナーを操り街へと急降下した。その最中、笛の音が聞こえ門の付近に待機していたドラゴンが返答する。


『…っ!マスターッ!』

 その時、確認用のメッセージウィンドウが展開した。…その内容は、『アースドラゴンに涙石の効果を適用しますか?』というものだ。

 当然、俺は迷わず『はい』を選択するとアースドラゴンにも効果が現れる。

『グルオオオオッ!』

 直後、アースドラゴンの下に魔法陣が展開しその巨体が陣の中に沈んでいく。…あれが、あのドラゴン固有魔法である『ランドディグ』である。

 アースタイプは、唯一飛べない種類である上に一番足の遅いタイプだが、その代わり地中を高速で移動出来るのだ。ただし、モンスターとのエンカウントも避けれてしまうので、あんまり調子乗って進んでいるとレベル不足になって苦労する事だろう。…と、攻略サイトに記載されていた。

 しかし、まさかこの街の部隊にアースドラゴンがいたとは知らなかった。…まあ、もしかしたら設定はされていたのかな?

『-ギャオオオオッ!?』

『ビャアアアアアッ!?』

 そんな事を考えていると、地面から混沌の奴らが飛び出して来た。しかも、その中に黒いドリルのような先端の槍を装備した奴らもいた。


 -奴らの名は、『混沌の掘削兵』。

 その名の通り、地中を掘削しながら移動し拠点侵入をアシストする奴らだ。…最初の拠点防衛クエストの時は、コイツらに気付かなくて失敗したっけな~。

 まあ、アースドラゴンがユニットに居た意味を理解したおかげで、二回目でクリア出来たんだが。


『-グルアアアアアッ!』

『ピギョオオオオッ!?』

 一方、空中ではまたドラゴン達による殲滅が行われていた。…当然だが、空中で自由に動けないエネミー達はただの的だ。なので、もはは殲滅ではなく『掃除』という作業ゲーと化していた。

「-…ふう。今度こそ、終わりか?」

「…でしょうね。いや、本当にお見事でした」

「…ありがとう。

 では、後はこちらに任せて君は宿に戻れ」

「はい。では、また後程」

「ああ」

 そこで隊長と分かれて、ルーキー達が待つ宿に戻った。…すると、案の定彼らだけでなく相棒達もポカンとしているではないか。…それを見て、『良い答え』が期待出来るかもしれないと思った-。

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