接触-明かされるカラクリ-

「-なるほど、話は分かった。…おい、例の物を彼に」

「イエス、マイロード。

 -こちらを」

 防衛隊長がそう言うと、副官の人が一枚の書類を俺の前に置く。…それには、複数人の名前が記されていた。

「それは、ここ数時間の内にこの街へ入った者達の記録だ」

「…っ!拝見します」

 なので、俺はそれを手に取り内容を確認していく。…ざっと見た感じ、『アタリ』は居ないように思える。

「…その様子だと、目当ての人物は記載されていなようだな」

「まあ、予想通りですよ。

 -…ですからその三組の旅人を探す際は、彼らが身に付けているであろう『不思議なアイテム』を道しるべにするのが良いかと」

「…ほう?…確か、その旅人達はルランスファの防衛隊から『顔を忘れられて』いたな。

 つまり君は、それがアイテムの効果だと考えているのだな。

 …では、今回は特例として『アレ』を使って探すとしよう」

「ですね。なら、自分は直ぐに準備させますのでここで失礼します」

 すると、副官は一礼し部屋から出ていく。…二人の口ぶりからして、かなり凄い方法なのだろう。もしかしたら、特殊なアイテムか『魔法道具』かもしれない。


「では、どうかよろしくお願いします」

「ああ。吉報を待っていてくれ。…っと、今日の宿は、何処にするつもりだ?」

「…そうですね。

 -叶うなら、彼らと同じ宿にするつもりです」

 その質問に、俺はそう返す。その方が、安全かつ素早く接触出来るからだ。…けれど、そうするには一つ決めないといけない事がある。

「…なので、それまで私達は広野へ向かう門の付近で待ち構えていようと思います」

「…なかなか頭が回るようだ。確かに、彼らが街に長居する可能性は低いかもしれないな」

 居場所を告げると、隊長はこちらを称賛し猶予がない事を口にする。…さあ、どっちが早いか勝負と行こう。

 そんな事を考えながら、俺は部屋を後にして素早く待機場所に向かった-。


「-……」

 待機場所に到着して、数時間。…未だに、防衛隊からの連絡も『待ち人達』の来る気配もないが、俺は辛抱強く待っていた。

「「…っ!」」

 すると、空からレターワイバーンがやって来て相棒の肩に留まる。…そして、相棒は直ぐに防衛隊からのメッセージを開いた。

『-星空亭に対象らしき旅人を確認しました』

「…確か、旅人向けの素泊まりの宿でしたな」

「…じゃあ、念のため此処は頼んだ」

「お任せを」

 一応、彼らが『勘違い』で逃走した時に備えて相棒には門に残って貰う。…果たして、どんな人達なのだろうか?

 そんな事を考えながら、俺は目的の宿屋をめざした。

 そして、程なくしてそこに着くと防衛隊の人が宿屋の裏手で待っていた。…多分、中にいる彼らに気付かれないようにする為だろう。


「…お疲れ様です」

「ご足労いただき恐縮です。…宿の主人によると、例の者達は3階の部屋だそうです。

 また、一組づつに分かれて泊まっていると」

「…っ。分かりました」

 念のため宿の3階を確認すると、部屋は3部屋しかなかった。…これなら、ハズレ無しで行けるな。

「それと、万が一彼らが逃げた場合に備え既に二つの門は固めています。ですから、どうかご安心を」

「ありがとうございます」

 なので、俺は早速宿に入り3階に居る彼らの知り合いを装う。…だが、決してそのまま部屋に行かずとあるメモを主人に託した。

 当然、主人は従業員にメモを持って行くように指示してくれた。…さあ、彼らは気付いてくれるかな?


「-っ!」

 それから少しして、奥にある階段から足音が聞こえて来た。…しかも、先程のメモの内容に従いそれぞれ相棒を連れて来ていた。

「…やあ、『壮健そうでなにより』」

「「「…っ!」」」

 そして、男子と女子で半々になっている彼らに分かりやすい『キーワード』を伝える。…すると不安そうだった三人のルーキー達は、一気に安堵した顔になった。

「…どうやら、大切な知り合いみたいだね」

「ええ。…ところで、こちらの宿はまだ空きがありますか?」

「「「…っ!?」」」

「…っ!ああ、丁度二階の真ん中の部屋が空いてるよ」

 どうやら運良く空いてたようで、直ぐに相棒と防衛隊に連絡する。それから二人分で宿泊を取り、三人の中で一番年上そうな人の部屋に向かう。


「-…まさか、私達の他にも『ログアウト』出来ない人が居たなんて」

 部屋に向かう途中、ふと同い歳くらいの女の子がそんな事を言った。…多分、ゲームのプレイ中に『巻き込まれた』のだろう。

「…どうした?…お前は、俺達に会えて嬉しくないのか?」

「…まあ、確かに嬉しいですが同じくらい不安も感じています」

「…っ!…ハッキリ言うな~」

「…ようやく会えたプレイヤーが、俺達みたいな『頼りなさそうな奴ら』じゃ当然か」

 正直な感想を伝えると、二人の男性龍騎士は肩を落とした。…さて、どうしたものか。

 とりあえず情報共有しよう。だが、問題は彼らに『覚悟』があるかどうかだ。…そして、仮に彼らと協力関係になったとしても問題は山積みだ。


「-…どうぞ」

「失礼します」

 そうこうしている内に年長者の部屋に着いたので、一旦考えるのを止めた。そして、中に入ると変装を外す。

「…っ!なんだ、そのアイテム?」

「…見た事ないわ」

 当然、ルーキー組は驚く。…まあ、これは後半のサブクエ報酬だから知らないのも無理ないだろう。

「…もしかして、他にも凄いアイテム持ってたりするのか?」

「まあね。…でも、そっちだって俺の知らない不思議なアイテムを持ってるじゃないか」

「…っ!?どうしてそれを?」

「だって、ルランスファの龍騎士達が誰一人としてあんた達の特徴を覚えてないんだぜ?

 普通に考えれば、『特別なアイテム』って分かるさ」

「「……」」

 年上の男性龍騎士の質問に、俺は情報と経験から導かれた答えを返す。…それを見て、二人のルーキーはポカンとしていた。


「…参ったな。どうやら、君はかなりの上級者みたいだ」

 年上の男性龍騎士は、こちらを称賛しつつ首に装備されたネックレスを取り出す。…その装飾には、クリーム色の魔石が使われていた。

「これは、『夢霧のネックレス』というダウンロード版の購入特典だ。…その効果は、自分よりも高レベルのエネミーにエンカウントしにくくなるというものだ」

「なるほど。そりゃ、知らない訳だ」

「…だが、どうしてあの都市の防衛隊の人達は俺達の容姿を覚えていなかったんだ?」

「…確か、基本アクセサリーとかって街中で効果を発揮しないですよね?」

 すると、残りの二人は新しく生まれた疑問を口にした。…多分、青い髪の少女龍騎士はこういうゲームの経験があるとみた。それに、赤い髪の年長者は『俺と同類』かもしれない。


「…じゃあ、その辺りの事を含めて情報共有するとしますか」

「「「…っ!」」」

 こちらの言葉に、ルーキー組は真剣な表情をした。…そして、いざ話そうとしたタイミングで部屋のドアがノックされる。多分-。

『-失礼します。…お知り合いの方がお越しになりました』

「「「……?」」」

「ありがとうございます。彼もこの部屋に案内して下さい」

『畏まりました』

「…もしかして、貴方の相棒?」

「そうだ」

「一体、どんな奴なんだ?」

「「「-……っ!?」」」

 そんな話をしていると、急にドラゴン側が緊張した様子になる。…そういえば、彼らは相手の放つオーラでその強さを測るんだったな。

 これは、ある意味話しがスムーズに進むかもしれないな。


「…おい、どうした?」

「…なんだ、このヤベエ覇気は?」

「…え?そ、そんなに強いの?」

「…ええ。しかも、この高貴なオーラは間違いなく『かの一族』に名を連ねるお方」

「…いや、マジでどんな奴なんだ?」

「…まあ、見れば分かるよ~」

『-再び失礼します。お連れいたしました』

「失礼します」

『……っ』

 そんななか、再びドアがノックされゆっくりとドアが開きヴァイスが入って来た。…すると彼らは、相棒を見て息を飲んだ。

 ルーキー組は、多くの者を惹き付けるその容姿に。そして、ドラゴン達は一目見てその種族を察したからだろう。

「遅れて申し訳ありません」

「いや、丁度良い。

 -ヴァイス。彼らに、『情報共有』を」

「畏まりました。

 それでは皆様。こちらをご覧下さい」

「「「…っ!」」」

 すると、相棒は直ぐにムービーウィンドウを展開し『現状』を流し始める。…すると、彼らは言葉を失った。

 やがて、彼らは絶望で顔を覆ったりあるいは放心して天井を見上げたり、または恐怖で涙を流していた。…まあ、当然の反応だろう。

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