第8話 ツクモとツクヨ「日ノ本神話の末裔」その②
霧ヶ峰中学屋上・・・
険しい表情のメグ先生がツクヨとアイラの前へ一歩出る
「二対一にはさせない クサナギ君加勢するわ!」
歩みを進めようとする メグ先生・・・その手をとる ツクヨ
「・・・大丈夫 ツクモは大丈夫だから・・・」
ツクヨの言葉に耳を疑う メグ先生
「ツクヨさん 一体何を・・・」
メグ先生の手を強く握る ツクヨ
「お願い 信じて・・・」
突然のシチュエーションに
スイッチが入ってしまう メグ先生
「おっひゅ~ 仰せのままにいたしまひゅ~」
ツクモににじり寄る イワヤとイシバ
「先生 確かボクシングだろ・・・どこまで行ったんだ?」
イワヤが答える
「インターハイでメダルは取ったよ(笑)」
イシバが笑う
「それなら俺の邪魔にはならないなぁ(笑)」
イワヤが笑う
「イシバ もっと年上の者を敬え・・・
お前のそういうところ 先生嫌いたぞ(笑)」
二人の間合い 構えもなく余裕の表情
ツクモ 両手を使って 手招きをする・・・
「かもぉ~ん(笑)」
渾身の右ストレートが放たれた・・・それをかわす
少しのバランスを崩す・・・見逃さない
軸足 体重の乗った左足 くるぶしにつま先を引っ掛けて
力点を数センチずらした・・・
「滑る」 感覚が体を支配する
大きくバランスを崩す・・・対処不可能・・・
殴りかかった対象か突然視界から消え
手を突く暇もなく イワヤ 顔を地面にこすりつけていた
「イワヤ・アウト♡」
右下段蹴りを仕掛ける・・・左足裏でそれを受け止める
そのまま体重をかけて 踏んづけた・・・
不安定な上半身 自由の利かない下半身
大きくバランスを崩す・・・対処不可能・・・
蹴り倒す対象が「つまらない」と言いたげな表情を残しながら
手を突く暇もなく イシバ 顔を地面にこすりつけていた
「イシバ・アウトぉ~」
静寂に包まれる 一同・・・
ミゾグチの取り巻きたちは唖然としている
ワタラセ・アイラは言葉をなくす
「・・・・・」
平然と見守る ツクヨ
メグ先生 声を震わせながら 一言
「滑らせた・・・」
ハッとする ツクヨ
「今のが見えたんですか?」
無言でうなづく メグ先生
「・・・・・」
言葉をかける ツクヨ
「それって 凄いことですよ 先生」
起き上がる 二人 イワヤ叫ぶ
「クソガキぃ~何しやがったぁ~」
ツクモ 呆れる
「教えてやってもいいけどさぁ~」
人差し指で 頭をトントン 二人を煽る
「理解できないと思うから止めときなよぉ~(笑)」
本気になったイワヤ 構えを取り ジャブのけん制
フェイントの右ストレートから渾身の左フック
後ろに回り込むイシバ 低い体勢からの高速タックル
ツクモ半歩 左にずれる・・・
イワヤの視界から突然消えた ツクモ
同時にイシバのタックルが 襲う・・・
見事なまでの同士討ち
受け身を取り損ねるイワヤ 後頭部を痛打
もがき苦しむ・・・
「うわぁ~痛そうぅ~!
でも俺悪くないのねぇ~ん 避けただけだしぃ~(笑)」
メグ先生 ぼそりとつぶやく
「私は何を 魅せられて・・・」
天才は天才を知る・・・?
いや 「天才ハヤシバラ・メグ」は理解に苦しんでいた・・・
自問自答の考察
(私は今まで どんな物の瞬間でも この目で捉えて来た・・・
野球のホームラン バットにボールがめり込む瞬間
ボクシングのKO劇 インパクト 拳が頭蓋骨を歪める瞬間
一流のアスリートが 自身の体を鍛え上げ 人の限界を越えようとする
一切の無駄を省き 鉄を鍛えるような鍛錬を繰り返す・・・
そして超一流だけが手にする 鍛錬の結晶
私はそれを 「人差し指のひと押し」で残してきた・・・
「予備動作」
流れを作り 間を作り リズムを作り
最大限の力 インパクトを生むもの
人は動くとき 何かしらの「予備動作」をする
それはその人のクセであり個性だ
スポーツの世界 対戦相手はそのクセを見破ろうとする
それを隠すために 選手たちは
日々フォームやスイングを固める努力をする
だがもっとシビアな世界がある
それは格闘技だ・・・
「テレフォン・パンチ」
言葉の通り 大きな「クセ」が次の攻撃を教えてくれること
ケンカ自慢の素人と経験者の差はそこだ
至近距離 手を伸ばせば自分を倒そうとする人間がいる
相手の視線 呼吸 闘争心が 目の前のリアルに・・・
大ぶりのパンチや蹴りなど 命取りにつながる
「予備動作」を潰すこと・・・格闘家は鍛錬する
一流の格闘家はフェイントやフェイクを織り交ぜながら
まるで詰め将棋の様な戦術を立てていく
だが超一流 一握りの天才たちは別の次元へ・・・
「ノーモーション」からのスピードの暴力
ボディバランス どんな体勢からでも
相手をねじ伏せる一撃を放つ 奇跡の「体幹」
「反応速度」「動体視力」それはまさしく才能
努力や訓練 鍛錬を積み重ねてもたどり着けない至高の頂き)
もう一度つぶやいてしまう メグ先生
「私は何を 魅せられて・・・」
(この距離 この遠距離でも全てを理解しきれない
上半身は動かない ブレない
膝下のわずかな収縮運動が全ての攻撃を
紙一重 ひらひらとよける様に・・・)
「私には 見えない・・・彼の「予備動作」が・・・」
その言葉を聞いたツクヨ メグ先生の手を強く握り返す
「あれは脱力・・・先生 見えないものが見えるんですね」
メグ先生 理解に苦しむ
「脱力・・・??? 見えないものが見えている・・・?」
一分間 二分間と 二人の攻撃が続く中
同士討ちを何度も誘う ツクモ
それを眺めながら・・・メグ先生
「あの二人には クサナギ君が
突然 消えているように見えるでしょうね
まるで魔法のように・・・」
ツクヨ うなずく
「・・・はい ツクモは強いですから・・・」
刻一刻 三分を待たずして イシバ・シゲジが片膝をつく
呼吸は乱れ 肩で大きく息をする
無酸素運動をつづけた 成れの果て
唇は 濃い紫色に代わっていた・・・
ツクモ 一言
「チアノーゼ・・・だなぁ(笑)」
同士討ち イワヤのパンチを何発も食らい腫れあがった顔面
根性だけで ツクモに向かっていった
体力の限界がイシバを襲う・・・
過呼吸するも 酸素を求める体に追いつかない
容赦ない ツクモ
「しばらく そこで苦しんでろ!」
苦しみの中 自問自答する イシバ
(最初から・・・これが・・・狙いかよ・・・
触れない・・・かすりもしねぇ・・・何も出来ねぇ!・・・)
一対一で対峙する イワヤ 肩で息をする
「お前・・・何者だ?・・・
それだけの才能・・・世界チャンプも 夢じゃないだろ・・・」
ツクモ ムッとする
「はぁ~? 世界チャンプも夢じゃないぃ~?
あんた 本当に失礼な奴だなぁ~」
首をかしげる イワヤ
「はぁ~?」
呆れる ツクモ
「あのさぁ~あんた自分が対峙した
相手の力量も分からない バカだろ(笑)」
「空手・総合格闘技・ボクシング・・・
人様のやってる格闘技なんざ 興味はない・・・
どうだっていいんだよ そんなもの・・・」
「教えてやるよ あんたに
世界チャンプより 上の存在を・・・」
激怒する イワヤ
「ボクシングをなめるなぁぁぁ!!!」
動じない ツクモ
「だったら俺を倒してみなよ それが出来たら
俺は服従する あんたの靴でも舐めてやるよ」
左手をイワヤに真っすぐ差し出す ツクモ
イワヤ 呆れる
「何の真似だそりゃぁ 舐めてるのか お前・・・」
ツクモ 答える
「デコピンだよ・・・そして俺はあんたを舐めてる(笑)」
怒涛のラッシュを仕掛ける イワヤ
当たらない・・・かすりもしない・・・
10秒 20秒と無呼吸の連打を続ける
親指を立ててのサミング(目潰し)までも繰り返す
冷静にそれを見極める ツクモ心の中で・・・
(おぉ~やることやってるねぇ~セコイ奴だぁ)
力尽き 連打が止んだ
もうろうとする意識の中 荒い呼吸音が響く
肩で息をする 体力の限界・・・
視界が狭まり 少年の顔を睨み付けることが
わずかな抵抗だった・・・
少年の左手が ゆっくりとあご下に近づく・・・
動けない 拒むことも出来なかった
荒い呼吸音が響く・・・ニヤ付いた表情
少年は 耳元で・・・つぶやいた・・・
「お疲れ・・・ちゃん(笑)」
ふざけている・・・舐められたと思った瞬間・・・
あご下で指の弾ける 音がした
睨みつけていた視線は 空を映し出し
脳と体が切り離される感覚・・・が・・・
体は硬直 頭を揺らされ目が回り そのまま前のめりに
気が付けば 少年の靴に 唇を付けていた・・・
静まり返るその場
ツクモがミゾグチの取り巻きたちに命令する
「お前たちは教室に戻ってろ
どうせ金とのつながりだろ? 守る価値も無いと思うけどなぁ」
各自が顔を見合わせ うなずき出口に向かう
ミゾグチ 恨めしそうにそれを見送る
「そっそんなぁ~」
ツクモ にらみを利かせ 一言付け足す
「お前らの顔はしっかり覚えた
わかっているよなぁ 他言無用・・・
少しでも俺とツクヨの変な噂が流れたら 連帯責任
俺が直接一人一人にトラウマを植え付ける・・・(笑)」
大きくうなずき 駆け足で出口に向かう 取り巻きたち
ミゾグチに向かい歩く ツクモ
逃げ出し 倒れているイシバとイワヤのもとへ
「畜生ぉ~!!!」
ミゾグチが倒れている二人に罵声を浴びせる
「立てぇ 立ってアイツをやっつけろぉ~」
イシバに蹴りを入れる ミゾグチ
「イシバ早く立てぇ お前にぃ~お前の親の会社にぃ~
何十億・何百億の公共事業を与えてきたのは
誰のためだと思ってるんだぁ~」
イワヤに蹴りを入れる ミゾグチ
「イワヤ早くしろぉ 車を買い与え毎月のこずかい
いい思いをさせてきたのは なんのためだぁ~」
アイラ・ツクヨ・メグ先生 生理的な拒否反応
「最低!・・・最悪!」
一歩一歩と近づく ツクモに ミゾグチ恐怖する
「僕に暴力を振るったら・・・ただじゃすまないぞ」
お構いなしのツクモ むんずと髪の毛を鷲掴み
無言の圧力・・・平手打ち
初めての恐怖 初めての痛み
その場でしゃがみこみ 失禁・・・涙を流す
「うっ・・・うわぁ~ん!!」
冷めた目をした ツクモ
無言の圧力・・・平手打ち
「うっ・・・許してよぉ~」
冷めた目をした ツクモ
無言の圧力・・・平手打ち
「うっ・・・お金なら上げますから・・・」
ツクモ ミゾグチに語る
「お前は今まで運が良かった・・・
金持ちの家に生まれ 地位と名誉を振りかざす
大人を手本に生きて来た・・・
殴られたこともなく 他人の痛みも知ろうともせず
わがままに人の大切にしてたものを壊してきた」
「今日のお前は最悪だ
金にものを言わせた取り巻きたち
金で雇ったボディーガード
誰も今のお前を助けてくれない」
「そして明日のお前を教えてやろう それは絶望だ」
「お前は運が無かったな お前の親もその親族も・・・
うちの「姫様」に無礼を働いた・・・ホントに残念だよ」
「知らなかったとはいえ その無礼は 万死に値する
理不尽だよなぁ・・・でも理不尽なことはお前たちも
散々やってきたことだ・・・」
「ただ一人 一度の過ちが 一族郎党を迷わせる」
「因果応報・・・これからのお前に一生ついて回る言葉だ」
パトカーのサイレンが遠くから伸びてくる
一台・二台・・・気付けば数十台のパトカーが
霧ヶ峰中学を取り囲んでいた・・・
不安に駆られる アイラ
「・・・先生 私・・・何だか怖い・・・」
アイラの手を強く握る メグ先生 不安を隠しながら
「だっ大丈夫・・・心配しないで ワタラセさん・・・」
「紅白」の名のもとに
日本神話からつづく日ノ本の守護者たち・・・
ツクモがツクヨに目くばせをする
「・・・・・」
静かにうなずく ツクヨ
「・・・・・」
二人のその目に力が宿る
ホウショウ・ミツキと相対するために・・・
第九話 ツクモとツクヨ「日ノ本神話の末裔」
その③に つづく
デュクシ!! 高島ま~屋(あまぐりこ) @amaguriko
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