第5話 ツクモの余裕?「ツクヨの自動迎撃古武術」

霧ヶ峰中学 放課後 職員室

ハヤシバラ メグ(23歳)は自分の机に頭を打ち付けていた

(バカ バカ バカ バカ 私の馬鹿ぁ~ぁぁぁぁぁ~)


(私はあの時 確かに触れた 確かに触った 確かに握った・・・

思い出せぇ~ あの感触 あの質感 そしてあの肌触りをぉぉぉ~)


荒い息を整え 冷静に思考を巡らせる メグ先生

(あの時は緊急事態・・・おびえるツクヨさん それを庇う私・・・

あぁ~そのシチュエーションだけでどんぶり飯三杯は行ける

胸熱展開のはずだったのにぃぃぃ~!!!)


再び机に頭をガンガン打ち付ける メグ先生

(バカ バカ バカ バカ 私の馬鹿ぁ~ぁぁぁぁぁ~)


一度整えた呼吸を再び荒げてしまう メグ先生

頭の中の理性は 壊れようとしていた・・・

(ダメだぁ~ダメだ ダメだ ダメだ ダメだ ダメだぁ~

一目会ったその日から・・・卒業までの三年間・・・

あぁ~考えただけでも お漏らししてしまいそうになる・・・

転校初日でこの有り様・・・このままでは・・・

私の身も心も・・・体がもたんっ! 辛抱たまらんっ!!!)


(せめて・・・ツクヨさんの写真を 一枚・・・・・あっ!)


大事なことに気付いてしまった メグ先生 ニヤ付く

「何を迷っているの ハヤシバラ・メグ・・・

私はこの学校の写真部の顧問 思うがまま撮ればいい・・・」


机の足元の奥にしまってある 大きなジュラルミン製の

カメラケースを引っ張り出し 重々しくそれを開けた

重厚感あふれる カメラとレンズたち 

「カメラ馬鹿」 ハヤシバラ・メグの機材のほんの一部

(総額・・・1000万円以上の写真機材が 鈍い光を放つ・・・)


ほくそ笑む メグ先生に 周りの先生たちは少し引いていた・・・




ハヤシバラ・メグ(23歳)

明治時代から代々続く ハヤシバラ写真館の一人娘

一族経営 カメラの小売業で財をなした ハヤシバラ家をバックに

彼女の手元には 最新鋭のカメラ機材が集まっていた・・・




「ひいじいちゃんの名にかけて・・・」




おもむろに取り出した 二台のカメラと二本のレンズ

(ドイツ製 L社のカメラとレンズ 総額500万オーバー)


二本のレンズをカメラに装着 (この間 約三秒・・・)


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~」


本能が彼女を突き動かし 図書室へ全力疾走・・・

ツクヨのいる約束の地へ・・・だが・・・

途中 校長先生に遭遇 こっぴどく叱られた・・・




急ぎ足のメグ先生 図書室に向かう階段の踊り場で

取り巻き五人を引き連れた 背の低い要注意人物とすれ違う


「彼女こそ 僕と付き合うのにふさわしい そう思わないかい?」

二年B組 ミゾグチ・ヒデヤスが口を開いた・・・


取り巻きの一人が口を開いた・・・

「レベル高過ぎる あの可愛さ・・・」


もう一人の取り巻きも口を開いた・・・

「日本のアイドル 終わったなぁ」


もう一人の取り巻きも口を開いた・・・

「うちの学校の 女子 全員モブ確定」


全てを悟った メグ先生 階段を登り切り

身を隠しながら カメラをいじるふりをして聞く耳を立てる


「だからこそ ふさわしいと思わないかい? 君たち・・・?」

ミゾグチ・ヒデヤス いやらしく 笑う


メガネをかけた取り巻きの一人が おべっかを使う

「そうだよ 間違いなく最高のカップルだよ」


もう一人の取り巻きも口を開いた・・・

「ミゾグチくんの凄さを知ればあの子も絶対納得するよ」


取り巻きの中で一番ガタイのいい男子が口を開く

「でもよぉ あの一年なんなんだよ 

ボディーガード気取りやがって・・・」 


ミゾグチ・ヒデヤス 物思いながら

「確か 通訳とか言ってましたねぇ 幼馴染みであるとも・・・」


ガタイのいい男子が口を開く

「あの馬鹿力 俺の手を軽くひねりやがった・・・」


ミゾグチ・ヒデヤス 笑う

「フフフ とんだ醜態をさらしましたね・・・

少なかったとはいえ 何人かの生徒に見られてしまった・・・」


ガタイのいい男子 苦虫を嚙み潰したように・・・

「くっ!」


ミゾグチ・ヒデヤス 語る

「悔しいですよねぇ~許せないですよねぇ~フフフ」


「そこで・・・お仕置きが必要だと 思いませんか?」


取り巻きたちが ニヤ付く

「それじゃ 三年のイシバ君を・・・」


ミゾグチ・ヒデヤス いやらしく・・・

「あまり暴力は好きではないのですが・・・

無知な一年をしつけるという意味では 致し方ありませんねぇ フフフ」


「明日の昼休みには この問題はかたづくでしょう」


ミゾグチ・ヒデヤス ひらめく

「そうですねぇ~この際ですから 彼女・・・

ホウショウ・ツクヨさんにも認知していただきましょう・・・


この学校 この町の いずれはこの国の権力者になるエリートの存在

ミゾグチ・ヒデヤスの求愛を受けることの意味を 知ってもらいましょう」


取り巻きたちが一斉に喚起する

「おおおぉぉぉ」




聴く耳を立てていた メグ先生 ワナワナと体を震わせていた・・・

震わせて・・・いた? その表情は怒りに満ち溢れていた


「クソがぁ~クソ クソ クソ クソ

クソ クソ クソ クソ クソガキぁぁぁ~~~!!!」


「許さん 断じて許さん 絶対に許さん バチくそ許さん・・・!!!」



普通の女性 新米の女教師ならば慌てふためくところ 彼女は違った

ハヤシバラ・メグ(23歳) 覚悟を決めた・・・決まっていた・・・

彼女の頭の中では ツクヨ=神 神=ツクヨ・・・

その存在に対して 親の権力にすがり事を運ぼうとする

その思惑が許せなかった・・・


「ツクヨさんは ツクヨたんは 私が守る!!!」


約束の地 図書室に全力疾走する メグ先生

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~」


途中 教頭先生に遭遇 こっぴどく叱られた・・・




図書備品室のドアの前に椅子を置きマンガを読む ツクモ

メグ先生が声をかける

「早速・・・何かあったみたいね・・・」


チラリとメグ先生を確認 マンガに目をやる ツクモ

「あぁ 丁重にお断り お帰り頂いたぜ」


メグ先生 ツクモに・・・

「そのことで チョット話があるんだけど・・・」


深いため息のツクモ 真剣な表情で

「先生 話は手短に・・・俺は今

一秒でも早く このマンガに集中したい・・・」


ツクモの体は小刻みに震え 感動していた

メグ先生にそのマンガを差し出した


全てを理解した メグ先生 真剣に言葉を返す

「わかったわ・・・」


手塚治虫の 「火の鳥」だった・・・・・






「ミゾグチ・ヒデヤスぅ~?」

あっけらかんとした態度の ツクモ


メグ先生 答える

「あなたとんでもないヤツに目を付けられたのよ」


「この学校のカーストトップって存在ね・・・

父親は都議会議員の ミゾグチ・ヒデカツ 

祖父はこの国の大臣 国土交通大臣 ミゾグチ・ヒデノリ・・・」


「親戚にも何人か地方議員がいて 俗にいう政治家一族・・・

ハッキリ言うわ この町の権力者 そのボンボンってところね」


少しの疑問? ツクモ

「へぇ~ずいぶんな言いようだな 先生・・・

ただのボンボンだろ? そいつ・・・何か恨みでもあるのかよ」


一年前のことを語りだす メグ先生

「私は去年 教育実習でこの学校に来たのよ 二週間だけどね」


「その間に ある事件が起きたんだけど・・・」


少し身を乗り出す ツクモ

「事件?」


話を続ける メグ先生

「去年一年生だったミゾグチは 同級生の女の子に交際を申し込んだの

おとなしくてかわいい子でね そのおとなしさに付け込んで

自分の思い通りになると思ったんでしょうね あのボンボンは・・・」


「最初は遠回しに彼女も断ってたみたいだけど

金に物を言わせたプレゼント 周りの友達への根回し

必要以上の付け回し ある意味ストーカー行為よねぇ」


「もちろんプレゼントなんかは受け取らずにその場で断ってたのよ

でも 耐えきれなくなった彼女は・・・」


「好きな人がいるから ごめんなさい・・・」




「生まれて初めての挫折 何の苦労もなく

プライドだけが取り柄の 親の権力を振りかざす

無能のガキが激情して やることと言えば・・・」


ツクモ 一言

「イジメか・・・」


メグ先生 続ける

「同時に その好きな人探しも始まって・・・

小さい頃から仲のいい男の子がやり玉に挙げられた・・・」


「サッカーが得意で 将来有望とか

そんなんじゃなくて サッカーが大好きで

そんな彼を応援するのが 彼女の幸せだったのに・・・」


「上級生イシバ・シゲジからの呼び出し・・・


階段から突き落とし その上からわざと転んだふりをする

100kg近い巨漢が 彼を圧し潰す・・・」 


「右膝靭帯断絶・・・」


語気を強める メグ先生

「あの生活指導のイワヤ・トシミツってのもグルなのよ!

二人の生徒が目撃してたの・・・

あの場所にイワヤ先生は居なかったって!」


「PTA 教育委員会の根回し 事件の被害届をもみ消した警察署

この町全ての権力を使って 全てを事故で片付けたのよ!」


「そのことを知った彼女は 絶望して自らの体に深い傷を付けた

幸い未遂に終わったけど 今でも彼女の心と体の傷は・・・」


ツクモ 一言

「エグイなそれは・・・」


下を向く メグ先生

「私はその時 無力だった・・・何も出来なかった・・・

この話の成り行きを知ったのも 実習を終えた後だった・・・」


「でも 今は違う 新米と言えど私も教師

あなたたちに迫る身の危険は 私が全力で止めて見せる!」 


ツクモ立ち上がり メグ先生の肩をポンっと叩く

「ありがとうね先生 その気持ちだけ受け取っとくよ♡」」


拍子抜けする メグ先生

「えっ?何っ?  気持ちだけって・・・?」


笑って返す ツクモ

「ノープロブレム 明日の放課後には キレイに片付けるよ(笑)」


驚き興奮する メグ先生

「きっ キレイに片づけるって・・・冗談言わないでよ

悪いことは言わないから 明日は学校を休んで 様子を見て

その間に 私が出来る限りのことをするから・・・」


なだめる ツクモ

「落ち着けよ 先生 だいたい先生の

出来る限りのことっていったい何をするんだよ!」


不気味な笑みを浮かべる メグ先生

「ふっふっふっ 死なばもろとも・・・

たとえ刺し違えようとも・・・ヤツらの玉を取るまで・・・

ツクヨたんを危険にさらすものを 私は排除する にちゃぁ~」


さすがにドン引きする ツクモ心の中で・・・

(ぁ゛ぁぁぁ~聞いた俺がバカだったぁ~

怖いよぉ~怖いよぉ~怖いよぉ~ 助けてぇ~ツクヨたぁ~ん!)


声を震わせながら ツクモ

「あのぉ~そのようなことをされましてもぉ~

ツクヨは喜ばないと 思うのですがぁ~」


ツクヨの名を聞き 我に返る メグ先生

「はっ・・・私としたことが つい本音を・・・」


大きな咳払いを一つ ツクモ

「おっほん この件に関して 先生は心配ご無用

他言無用 ツクヨにも言っちゃだめだぜ」


食い下がる メグ先生

「でもぉ~」


ツクモ 有るものに気付き ひらめく

「そうだぁ このことを黙っていてくれたら・・・

先生にとっても良いことがあると思うんだよなぁ~」


メグ先生 キラぁ~ンと目を光らせる

「いいことって・・・なにっ?」


ツクモ ニヤ付く

「ところで先生 首からぶら下げたそのカメラと

右手に握りしめたそのカメラ

この図書室で・・・いったい何を・・・(笑)」


不意を突かれた メグ先生 アタフタと言い訳

「こっこれはねっ 違うの・・・?違くないの・・・?

これは そう 写真部の顧問として・・・スナップ写真?

そうよ 卒業アルバムにのせる 日常のスナップ写真を

撮るために・・・持ってきたのよ・・・」


メグ先生の肩に手をまわす ツクモ 耳元で囁く・・・

「素直になりなよぉ メグ先生 そして想像するんだぁ

俺ならツクヨに あんなポーズやこんなポーズを

取らせることも・・・取らせることもぉ…ムフフふぅ」」




メグ先生 頭がオーバーヒート!!!

体をビクつかせながら 昇天してしまう

「・・・・・はひぃ~仰せのままに いたしましゅぅ~」




ツクモ ニヤリと笑い 心の中で一言

(チョロいな メグ先生)






翌日 12:35分 霧ヶ峰中学 昼休み5分前・・・

女子更衣室 ハヤシバラ・メグ(23歳) 白衣を着用

その背中には 鉄製のカメラ用大型三脚を 隠していた

「殺傷能力の高い この三脚なら・・・」


12:36分 1年A組 昼休み4分前・・・

何も知らない ホウショウ・ツクヨ ニコリと笑う

「楽しみだなぁ~」


12:37分 1年A組 昼休み3分前・・・

何も知らない ワタラセ・アイラ ニコリと笑う

「楽しみだなぁ~」


12:38分 1年A組 昼休み2分前・・・

クサナギ・ツクモ 一枚のプリントを両手に持ち

ワナワナとその体を 震わせていた・・・

「レトロゲーム同好会・・・会員募集中ぅ~だとぉ~?」


12:39分 1年A組 昼休み1分前・・・

クサナギ・ツクモ ドキドキが止まらない

ブツブツ独り言を・・・唱える

「入会希望者は 3年C組 ナンバ・シオンまで

入会希望者は 3年C組 ナンバ・シオンまで

入会希望者は 3年C組 ナンバ・シオンまで

入会希望者は 3年C組 ナンバ・シオンまで

入会希望者は 3年C組 ナンバ・シオンまで・・・」




12:40分 霧ヶ峰中学 昼休み始まりのチャイムが鳴る


ツクモがツクヨに声をかける

左手をツクヨの目の前に差し出し パチンっと指を弾く

「・・・・・」


ツクヨの両目が 鈍い光を放ち それはすぐに消えた

確認した ツクモ

「よぉ~し バフ付け完了 後は・・・」


ツクモ ワタラセ・アイラに声をかける

「ワタラセさん これからツクヨと図書室かな?

ありがとうなぁ~ツクヨと仲良くしてくれて」


ツクヨの手を取り アイラに預ける ツクモ

ツクヨの体がアイラの体に触れたことを確認する

(大丈夫だなぁ ツクヨに対して悪意を持たない

ワタラセさんには このスキルは発動しない・・・)


(だがしかぁ~し 悪意を持ったものがツクヨに近づけば・・・

半径1m以内の対象を瞬時に迎撃・・・

確実に相手の動きを止める パッシブスキル 名付けて・・・)


(ツクヨミ式・自動迎撃古武術 ・・・

うぅ~ん 我ながら素晴らしい命名だなぁ~)



大事なことに気付く ツクモ 

手に持つプリントを握りしめ・・・心をたぎらせる


「目指すは 3年C組・・・ナンバ・シオン」


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~」




もっと大事なことを すっかり忘れていた ツクモ・・・




第六話 「我らは (紅白) 日ノ本の夜を照らす者」 

                    につづく


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