第3話 美少女の笑顔「ツクモのやさしいウソ」

霧ヶ峰中学 一時限目の始まり

一年A組 日直の当番が 声をかける

「起立・礼・着席」


メグ先生が黒板に 「ホウショウ ツクヨ」と「クサナギ ツクモ」の

名前を書き上げる


「今日は皆さんに 転校生を紹介します」


ざわつく生徒たち


メグ先生が声をかける

「welcome」


ガラガラっと教室のドアが開く

昨日の屋上での姿とは違い 学生服のカラーを閉め

最低限の身なりを整えた ツクモの姿・・・

163cm一年生にしては長身の背丈に

体操選手のような体つき・・・

学生服の上からでもそれは見て取れた


少しあどけなさの残る その端正な顔立ち


一族の里での経験と記憶 

「剛力」の持ち主として生まれた運命

数々の訓練を鍛錬として過ごした日々

そして数々の修羅場を渡って来た自信

ツクモの目の奥底に それは宿っていた・・・


照れ隠し 穏やかな表情で小さく手を振りながら

余裕を見せる ツクモ


「いやぁ~どうも どうもぉ~」


クラスの女子全員が ツクモに好意の目を向ける


何かに気付くツクモ ツクヨが入ってこない・・・


「ツクヨぉ~ かもぉ~おん~」




それはまさに 映画のワンシーンのように・・・

それはまさに スローモーションのように・・・


はにかんでいるツクモ その笑顔を頼りに一歩を踏み出す ツクヨ


白と黒の対比 長い黒髪がゆれる 見え隠れする長く透き通った首筋

かき上げた髪を 耳にかけ 映し出される白い輪郭

横顔からうかがえる 目鼻立ちの陰影


モノクロームの写真を 切り抜いたように・・・


浮かび上がる 恍惚とした表情

白と黒の世界 その中で唯一 色づくモノ・・・ 

にじむように 桜色した その唇


ゆっくりとツクモの隣に立つ 

正面を向き 少し深く頭を下げる


美しく 清楚 そして可憐

クラスメイト全員が 刮目した・・・


ゆっくりと頭を上げる ツクヨ

クラスメイトの視線が自分に集中

恥ずかしさの中 軽く握った左こぶしを口元に当て

ツクモの学生服を引っ張る 右手

頬を染めて トコトコとその背後に隠れてしまう・・・



可愛いは 正義

そのしぐさに 女子全員の乙女心は ときめいた

そのしぐさは 男子全員の恋心を

つらぬき 撃ち抜き ぶち抜いた・・・


静寂に包まれた 1年A組

メグ先生が咳ばらいをしながら


「おっほん それでは自己紹介ね 

まずは クサナギ ツクモ君から・・・」


余裕を見せる ツクモ

「にっひぃ~ クサナギ ツクモです

趣味はゲーム マンガやアニメも好きだぜ

みんなぁ~よろしくぅ~」


余裕の挨拶 笑顔 照れ隠し・・・

くせっ毛の頭を 少しポリポリとかきながら


ツクヨの衝撃に当てつけられた クラスメイト達

我に返った女子の数名が パチパチと拍手し始め

後に続くように 大きな拍手の音が響いた


拍手が鳴りやみ 待ってましたとばかりに

ツクヨの自己紹介に期待するクラスメイト達


メグ先生が 口を開く

「続きまして ホウショウ ツクヨさん なんだけど・・・

クサナギ君 説明ヨロシク!」


何も知らない ツクヨ 緊張が少し溶けキョトンとした顔を

メグ先生に向ける


肩透かしの クラスメイト達

任せろとばかりに ツクモが語りだす


「OK! この子はホウショウ ツクヨ

俺とは小さい時からの 幼なじみってやつだ

両親の仕事の都合で海外生活が長くて

いわゆる帰国子女って事なんだけど

日本語忘れちまったみたいで 只今学習中ってところかな・・・」


「そこでみんなに頼みがあるんだけど・・・

しばらくの間 この子に話したいことがあった場合

俺とハヤシバラ先生が間に入って通訳するって事で

理解してもらいたいんだよねぇ」


「もちろん英語が出来るなら直接話しかけてもOKだぜ!」


「ツクヨもみんなと仲良くしたいと言ってたし

そのために日本語頑張って覚えるとも言っている」


「ちなみにツクヨの趣味は読書だ

本が好きで読書が趣味の子がいたら仲良くしてやってくれ」



固唾を飲むクラスメイト達 

そんな中一人の少女は何故か ドキドキしていた


ツクモがツクヨの耳元でささやく

「ツクヨ ほらぁ よろしくお願いいたします だぞぉ」」


ツクヨ コクリとうなずく

ツクモの横に並び 浅く息を吸い込み


「よっ よろしくおねがっます・・・?!」


緊張の余り噛んでしまう ツクヨ

だが クラスメイト達に笑うものはいなかった・・・

慣れない日本語で頑張った挨拶と受け取った そして可愛いと思った・・・


拍手が始まった 席を立ちあがり拍手する者につられて

全員がスタンディングオベーション


この光景に満足しながら拍手の手を強める メグ先生


(素晴らしい なんて素晴らしい眺めなのかしら・・・

そうよぉ~もっと拍手を もっと喝采をぉ~

称えるのです もっと彼女を称えるのよぉ~)


鳴りやまぬ拍手の中 

ツクモがメグ先生にアイコンタクトをとる

心の中で先ほどのツクモとの密約を回想する メグ先生




「ハヤシバラ先生 正直に答えてくれよ・・・

先生はツクヨの事・・・」


食い気味に全てをさらけ出してしまう メグ先生

「好きィ~♡ すき・すき・大好き・大好物です!!」


チョット引いてしまう ツクモ

「うっ大好物って・・・まぁいいかぁ」


「ツクヨには悲しいトラウマ 

人には言えない秘密があるのだが・・・

ツクヨに危害を加えないと 誓えるか?」


涙目で懇願する メグ先生

「しない・絶対しない・そんなこと出来るわけない!!」


すがるようにツクモを見つめる メグ先生 答えるツクモ

「知りたいか? ツクヨの秘密・・・かなしい過去」


間をためてゆっくりと首を縦に振る メグ先生

「はいぃ」


念を押すようにメグ先生の瞳を見つめる ツクモ

「その代わりこのことは他言無用 絶対の秘密厳守

もちろん ツクヨ本人にも悟られてはいけない・・・

その覚悟・・・先生にはあるのかい?」


目を見開き覚悟を決める メグ先生

「教えてくださいぃ 教えてくださいぃ 何でもしますからぁ

秘密は絶対守りましゅぅ~

私の宝物・・・カメラ機材の全てを捧げる覚悟をぉ~」


重い口を開く・・・ツクモ


「ならば教えよう・・・ 

ツクヨは・・・コミュ症だ!」


衝撃の事実 

コミュ症と言う言葉がやまびこのように

頭の中を往復する メグ先生

(ツクヨさんがぁ コミュ症~コミュ症~コミュ症~コミュ症ぅ)


ガクリと膝から崩れ落ちる メグ先生 涙を貯めながら

「ツクヨさんがぁコミュ症だなんて この世はなんて残酷なの・・・?」


さらに追い打ちをかける ツクモ

「そしてもう一つ 悲しいかな

ツクヨは自分が美しく可愛いと言う 自覚が無い!!!」


カミナリに打たれたような ショック&ダメージ 

ボロボロと大粒の涙を流し 悲しみにくれる メグ先生


「おう・まい・ごっど・・・神は何て無慈悲で・・・

何て 酷い仕打ちを・・・」


淡々と語り始める ツクモ

「生まれてからの英才教育 想像を絶する厳しさ

勉学・語学・運動・数々の習い事・そして厳しいほどのしつけ

それはまさに スパルタ教育・・・

365日一日12時間以上の過密スケジュール


大人たちに囲まれてそれを受け入れてしまったツクヨは

次第に自我を失い 心を押し殺すように・・・


そんなツクヨの唯一の楽しみが読書だ

ヘトヘトになって眠りにつくまでのわずかな時間

夢のような優しい物語・・・


純粋無垢 優しいだけの純粋無垢

自我を持たない 自信を持てない 優しいだけの存在


女子小学校の入学式 ツクヨは好意の目にさらされた


子供は時に残酷だ

可愛いものが大好きな女の子は まさにモンスターだ

服を触られ 頬をつねられ 頭を撫でられ 髪を引っ張られ

拒むことの出来ないツクヨ イヤとも言えず 止めてとも言えず

自分の感情を表現することが分からない 泣くことも出来ずに・・・」


「後は想像に任せるよ・・・先生」


鼻水を垂らしながら号泣する メグ先生

「うぅ~つくよたん つくよたん つくよた~ん」


泣き崩れるメグ先生の手を取り起こそうとする ツクモ


「2年前 心機一転の海外留学も 一週間で帰って来たしなぁ」


「ツクヨは筋金入りの コミュ症だ!」


メグ先生の両腕を取り起こし上げる ツクモ


「だから俺はウソをつく ツクヨを守るためのウソを つく」


頭に?を並べる メグ先生

「ウソ???」


笑いながら答える ツクモ

「まぁウソなんだけど ツクヨを守るための設定かなぁ~」


興味深く話を聞く メグ先生

「ツクヨさんを守るための 設定?」


メグ先生に説明する ツクモ


「英語の出来る先生 語学が堪能なツクヨ 俺も英語はOKだぜ」


「この三人で言葉の壁を作る

帰国子女 日本語がちょっと不自由なツクヨの設定

これを自己紹介で 俺が説明して

ツクヨと話がしたければ 俺か先生を通訳として間に入れる

これなら突然話しかけられることもなく

ツクヨにも質問に答える 余裕が生まれる

元々日本語での質問にツクヨは理解しているからな」


納得のメグ先生 ツクモに問う

「なるほどね!コミュニケーションの苦手な子は

相手の会話を理解しててもどう応えるかで考えすぎてしまって

言葉のキャッチボールが出来なくなっちゃうのよねぇ~」


「そのための時間稼ぎの言葉の壁かぁって

クサナギ君・・・貴方 英語が話せるの?


ニヤリとする ツクモ


「俺ゲーマーでさぁ 日本はともかく 

海外でもチョットは知られる 有名人なんだぜ(笑) 

ボイスチャットで覚えたんだ 友達も何人かいるぜぇ」


目を丸くする メグ先生

「すっ凄いのね・・・君 もしかして 天才?」


照れる ツクモ

「へっ 俺のことなんてどうでもいいよ」


ツクヨを気遣う ツクモ

「ツクヨが楽しく過ごしてくれれば それでいい」


メグ先生に問いかける ツクモ

「どうたい先生・・・俺のウソに手を貸してくれるかい?」


メグ先生 微笑む

「やさしいウソね クサナギ ツクモ君・・・

幼なじみを守るための そのやさしいウソに 私は協力する」




拍手が鳴りやみ ふと我に返る メグ先生

「ハイ それではクサナギ君の説明通り

ホウショウさんとお話ししたい人は クサナギ君か

私を通訳として聞いてくださいねぇ~

みんなぁ~わかったかなぁ~?」


クラス全員の声が響いた

「ハイっ」


ニッコリする メグ先生

「それでは二人の席は真ん中の一番後ろです

分からないことがあったら何でも聞いてください」




席に座る二人 ツクヨがツクモに耳打ちをする

「ツクモ あなた通訳って・・・いつ英語覚えたの?」


めんどくさそうに答える ツクモ

「あぁ~?うぅ~ん?・・・忘れた・・・」


ツクモの照れ隠し・・・それに気付くツクヨ

ニッコリとほほ笑む


「ありがとうね ツクモ♡」






ツクモの隣 距離を挟んだ隣の席

一人の少女 ワタラセ アイラが

顔を赤くして 左胸に手を当てていた


「どうしよう 私・・・ドキドキが止まらない!」


第四話 少女と美少女の初めて?「友達・・・?」につづく








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