第2話 美少女の憂鬱「ツクヨはコミュ症」





翌朝   霧ヶ峰中学 一年A組に向かう

女性教員とツクモとツクヨ


ハヤシバラ メグ23歳

今年から初めての担任を受け持つ英語担当の新米教師


先ほどから後ろを付いてくる ツクヨをチラ見しながら

ぎこちない笑顔を振りまいていた・・・振りまいていた・・・


人と言うもの ましてや大人と言う生き物は

理性的で有る・・・有るはずなのだが・・・


ハヤシバラ メグ(23歳)彼女の理性は今 壊れようとしていた

かつて経験したことのない心拍数の上昇

たぎる血潮は体の隅々の毛細血管を押し広げ

思考回路は致死量を超えるような脳内麻薬に支配されようとしていた


「神来た! 神来た! 神来た! 神来た! 神来たぁ~!」

「無理 無理 無理 無理 無理 無理ぃ~」

「死ぬぅ~ 死ぬぅ~ 死ぬぅ~ 死ぬぅ~」


ハヤシバラ メグ(23歳) 好きなもの=美少女

ハヤシバラ メグ(23歳) 趣味=美少女の写真を撮ること

ハヤシバラ メグ(23歳) 幸せを感じるとき=美少女たちに囲まれること

自分の野望をかなえるため 教師になった女・・・


「何よぉ 何よぉ なんて可愛さと美しさなのよぉ~

今までの推しの子たちが 一瞬でモブキャラと化したわぁ~」


「抱きしめたいぃ・・・抱きしめたいぃ~~~!!!

あぁ~いいぃ 凄くいいぃ 抱っこしてぇ~ おんぶしてぇ~

そのままこの子を 奪い去りたいぃ~!!!」


妄想を暴走させる

立ち止まり振り向き ふくみ笑いをする メグ先生

口の中にあふれ出るもの

「じゅるり」と音を立て「ゴクリ」とそれを飲み込んだ


「うっふふふっ・・・ニチゃぁ~」


ぎこちない笑顔を通り越し もはや変質者のそれである


流石にドン引きする ツクモとツクヨ

怖がりツクモの影に隠れてしまう ツクヨ

ツクモ物申す


「先生・・・流石にチョット怖いんですけど・・・

ツクヨがおびえちゃってるんだけど・・・」


ハッと我に返る メグ先生


「えっ? ハッ? ちっ違うの・・・これは 違うのよ・・・

これはね ふっ二人が自己紹介で緊張しないように

変顔してる だけだから・・・体を張ったギャグなんだから・・・」


体をクネクネさせながら キラキラした目線をツクヨに向ける メグ先生


疑いの目を向ける ツクモ 心の中で・・・

(もしかしてぇこの人・・・あっちの世界「百合」の住人かぁ・・・?)


学生服の端を引っ張り ツクモに気付いてほしい ツクヨ

その手はプルプルと震えていた


「ツクモ・・・どっどうしよう・・・

自己紹介・・・どうしようぉ~・・・」


頭をかきながら ふぅ~っとため息を付く ツクモ心の中で・・・

(あちゃ~余計なプレッシャーでガチガチだなぁ

ツクヨのコミュ症 いまだ治らず かぁ~)


数百年に一度の生まれ変わり・・・

物心ついた時からの英才教育・・・

生きるか死ぬかのトラウマで 心閉ざすのも無理はねぇ~よなぁ

あの力が暴発したら・・・小学校なんて通えねぇ~よ


世間知らずのお姫様が 今さら中学校通って友達作れって・・・


今にも泣きそうなツクヨを見る ツクモ


「大ババ様の頼みだからな・・・何とかするかぁ」


ツクヨの頭をポンポンと 笑いながら

「任せとけよ ツクヨ」


目をウルウルさせて言葉にならない声を発する ツクヨ

「ぅぅ~」




体をモジモジさせながら 熱い視線をチラチラと

ツクヨに送る メグ先生

ツクモにある アイデアが生まれる


「先生 少々お話が・・・」


我に返る メグ先生


「はっ?・・・なっ何かしら クサナギ君?」


廊下の角を曲がり ツクヨに聞こえないように

ヒソヒソと話し込む ツクモとメグ先生


しばしの時・・・


ツクヨのもとに戻る ツクモとメグ先生

顔つきの変わった メグ先生

それは教育者としての 凛とした顔つきであった


「安心して ホウショウ ツクヨさん・・・

貴方が楽しい学校生活を送れるように

全力でサポートするから・・・」


ニヤリとする ツクモ 挨拶をうながす 

「よかったなぁ ツクヨ ほらぁよろしくお願いしますだぞぉ」


メグ先生の目を見る ツクヨ 恥ずかしくなり目線を避けながらも

「よっ よろしくお願いします・・・」


昇天しかけるメグ先生 心の中の妄言大爆発

(あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~いいぃ~バチくそたまらん~

全力サポートどころではないはぁ~~~

全身全霊ぇ~命をかけてぇ~ハヤシバラ メグの全てを捧げてぇ~

君を 君を・・・君を守るぅぅぅ~!!!)


嫌らしい含み笑いのツクモ ニチャりとする


「よ~しツクヨ 次は仲良しの握手だぁ~」


ツクモに絶対の信頼を寄せているツクヨ

ツクモの言われるがままに右手を差し出す 




心の中で何かがプチンっと切れる音がした・・・メグ先生

手が触れるまでのわずかな時の中で

永遠とも言える思考を巡らせていた

それはまるで 走馬灯のように・・・


(あっ握手・・・それは 肌と肌との ふ・れ・あ・い・・・

笑っている・・・クサナギ ツクモと言う男の子が 笑って・・・

これほどの ご褒美を・・・いともたやすく 彼は・・・

悪魔との契約? どうでもいい そんなことはどうでもいい・・・


あぁ 時が満ちてゆく・・・私はこれから 私の知らないどこかへ・・・

怖くはない・・・恐れなど何もない・・・

とても穏やかに 心音が聞こえ・・・

とても心地の良い彼女の黒髪の残り香に吹かれて・・・


私はこれから誓いを立てよう 小さくそしておごそかに・・・

神々しいまでの存在に 飾り付けた言葉は意味がなく

彼女の品格に対して・・・それはそぐわない・・・)


(捧げる・・・私の全てを・・・

ホウショウ ツクヨ・・・君のためなら・・・死ねる・・・) 



今まさに手と手が触れ合おうと・・・している

その時・・・


ガラガラガラーっとドアが開いた

「先生っ? 何してるんですか? 授業始まりますよぉ~」


隣のクラスの先生が声をかけた

無情にもチャイムが 鳴り響く・・・


腰砕けにしゃがみ込む メグ先生

「はひゅ~・・・急いで 行きますぅ~」


魂の抜け殻のように力無く笑う メグ先生

「へぇっ へぇへぇへぇっ・・・」


学生服の端を引っ張り ツクヨが耳打ちする

「先生大丈夫かなぁ チョット変だよぉ~」


照れ笑いのツクモ ぎこちなく


「案ずるな ツクヨ・・・おまえに害はない・・・」


頭にクエスチョンマークをのせる ツクヨ


「ふぅ~ん?・・・???」




とぼとぼと一年A組に向かう 三人・・・


ハヤシバラ メグ(23歳)

自分の野望をかなえるため 教師になった女


だがこの先 彼女の巻き起こすハチャメチャが

ツクヨのコミュ症を解決するカギになることを

ツクモとツクヨの二人はまだ知らなかったので・・・あった






第三話 美少女の笑顔「ツクモのやさしいウソ」につづく






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