第0話「デュクシ!!」プロローグの章 「始まりのデュクシ!」



202X年4月某日

桜吹雪舞い散る とある都内の中学校

入学式から一週間 よそよそしい間柄から

徐々に打ち解けあっていく生徒たち


そんな時期に 転入届を済ませ

学校の屋上から下校する生徒たちを見つめる

少年と少女がいた


学生服のボタンをすべて外し

袖を折り上げ 少しだらしない着こなし

目の下にくまを作り 頭を搔きながら

けだるそうに大きなあくびをする少年


「なぁ~んか見えるかぁ~? ツクヨ」


ツクヨと呼ばれた少女

強い風の吹くこの場所で 長い黒髪とセーラー服をなびかせて

美しい顔立ち 神秘的なたたずまい 近寄りがたい品と格

そして清楚という言葉は彼女を飾り付ける言葉でしかなく・・・

神々しいと言う物があるとすれば それは彼女に値するのだが


そんな彼女も初のエージェントとしての任務に いや・・・

それ以上に何か大きなものを背負っている責任感が

彼女の表情を少しこわばらせていた


左の手のひらで左目を隠し 右目に少し力を込める

その右目は赤い鈍い光を放っていた


「昼間だから ここからでは無理ね・・・でも感じたわ 

あなたはどうなの? ツクモ」


ツクモと呼ばれた少年 返事がない

「うん~うん?・・・」


一歩距離を詰める ツクヨ 頭を思い切りはたく音をたてた


「あんたまた遅くまでゲームしてたんでしょ!

真面目にやんなさいよ! ま・じ・め・に・!!」


はたかれて目を覚ますツクモ ぶぅ~たれる


「なにすんだよイキナリ いってぇなぁ~

こっちは徹夜でゲームしてたんだから眠いのは当然だろ

それに不真面目が取り柄の俺に 真面目やれって・・・勘弁して・・」


我慢の限界が近づく ツクヨ 

「あんたねぇ~徹夜ってことは寝てないってことなのぉ~?

この大事な任務初日にぃぃ~」


気の抜けた返事をする ツクモ

「うぃっす!」


限度を超えた我慢が・・・

ツクモの襟首をつかんでブンブン振る ツクヨ


「徹夜でゲームってすごいよね

不真面目が取り柄ってすごいよね

あなたの思考回路のベクトルはこの世に存在するの?

真面目に不真面目解決ゾロリでも何でもいいからさぁ~

ゲームに向ける情熱をこの任務に少しは傾けなさいよぉ~」


物申す ツクモ きっぱりと

「あぁ~それ無理 俺ゲームは妥協出来ないよ

って言うか・・本気のマジ?・・・いやぁ ガチのガチ勢(笑)」


血の気の引いたツクヨの顔面 

欲にまみれた・・・そう俗物を見る様に ツクモを見下す


「おい ツクモ・・」


固唾を飲み 返事するツクモ

「へっ? 何?」



身を乗り出すツクヨ 脇腹に渾身の一刺し 


「デュクシ!!」



絶妙のタイミング&インパクト

脇腹を押さえ体をくの字に曲げて あらわな声を上げてしまう ツクモ


「あっはぅ~~~」


一瞬の静寂  微妙な違和感に気付く ツクヨ 心の中で・・・

(気のせいかなぁ? 今一瞬何かが膨らんだような?)


「とにかく シャキッとしなさい!」


情けない返事をする ツクモ デュクシの余韻が残ってる


「はひぃ~」




咳ばらいを一つ 改めて問いただす ツクヨ

「ところであなたは何か感じたの?」


少し真面目に答える ツクモ

「あぁ 間違いない 大きいのが二つと

小さいのが三つ・・・一年A組だな」


納得の笑みを浮かべる ツクヨがスマホを取り出す

「私もそう思う 大ババ様に手配してもらうわ」


スマホを操作しメッセージを送信

「これで私たち 明日から一年A組よ」


両腕を上げ伸びをしながら 大きなあくびする ツクモ

「相変わらず便利だなぁ~うちの組織 

公立中学校のクラス替えなんて造作もなしか」


呆れていた・・・先ほどからのツクモの態度に・・・

深いため息を吐く 

両腕を腰に当て ツクモに言い放つ

「あのねっ 大ババ様がその気になれば

この国の総理大臣くらいいつでも・・・んっんっ・・・

あなたはそんな組織の一員 私のボディーガードなんだから

それを十分に自覚してもらわないと 困るんですけどぉ」


たじろぐ ツクモ

「わかった わかったから落ち着けよ」


プイっとそっぽを向く ツクヨ

「まったくぅ~もぅ」


強い風が吹き 二人の髪をなびかせた


ツクヨの顔をのぞき込む ツクモ

「ボディーガード 俺じゃ不満か?」

真面目なツクモの言葉に 少しとまどってしまう ツクヨ

「べっ別に不満じゃないけど 頼りにしてる・・・けど」


「お前を危険にさらすもの・・・俺は許さない・・・」


振り向く ツクヨ

「へっ?」


「俺はそれを全力で排除する」


ツクモを見つめる ツクヨ


「疲れるんだよ ほかの事にマジになるなんて・・・」


ツクモの瞳に吸い込まれる ツクヨ


「心配するな 俺の剛力は伊達じゃねえよ」 


「それでいいだろ? ツクヨ」



ツクヨの脳裏によみがえる記憶

一族の里がある山奥での出来事

ツクモが命がけで守ってくれたことを


ツクヨは知っている ツクモの本気の意味を


ほほを染め 感謝の表情 ぎこちなく


「ツクモ・・・バカ・・・」


照れる ツクモ 少し茶化す様に

「緊張感もほどほどになぁ ほらリラックス リラックス」


本音をこぼしてしまう ツクヨ

「ツクモは余裕だね 強いし経験があるし・・・

私は初めてだし 守ってもらわないと 力を使えないから」


あっけらかんと答える ツクモ

「いいんじゃね それで」


驚く ツクヨ

「えっ?」


諭す ツクモ

「ツクヨは特別なんだから それを守るのは当然だろ」


うなずくも何か納得できない ツクヨ

「そうなんだけど 特別ってことがね なんか 重くて・・・」


「私の力は大きすぎて 間違った使い方をしてしまうと・・・

それが怖くて・・・あの時みたいに・・・」


余裕の表情 ツクモ

「大丈夫 その時は俺が止める 本気でな」


一族の里での出来事がフラッシュバックする ツクヨ


「だからって あの時みたいな無茶はしないで・・・

今度は大怪我ではすまない・・死んじゃうかも・・・」


余裕の表情 ほほ笑む ツクモ

「大丈夫 約束する 俺は強いから 俺は死なない」


ツクモの言葉に安堵する ツクヨ 

ツクモの学生服の端をつまみ 両目に薄っすらと光るものを浮かべる


「約束はちゃんと守ってもらうから・・・」


「おぅ 任せろだぜって・・・お前泣いてるのか?」


自分の気持ちに気付かないツクモに 焦って言い訳を

「バカ 泣いてなんかない・・・風が強くて

目がちょっと 乾いただけだから 勘違いだから・・・」


強い風が二人のほほをなでる


「そっかぁ 勘違いかぁ 誰かさんは昔から泣き虫だったようなぁ

そうじゃないようなぁ~うぅ~ん?」


やさしい冗談にホッとする ツクヨ 急いで涙をふき取る

「その誰かさんって誰なの?(笑) どんなひとなの?(笑)」


機嫌を損ねないように 務めるツクモ 

「可愛かったぁようなぁ 綺麗だったようなぁ~うぅ~ん?」


普段聴けないツクモの言葉に 嬉しくなるツクヨ

自然と笑みがこぼれてしまう

「じゃあその誰かさんをぉ ツクモはどう思ってるのぉ~(笑)」


少し焦るツクモ 返事に困る 心の中で葛藤する

(あれっ?何で笑ってんだこいつ? 

可愛いとか 綺麗とか言ったからか? ここはまだ困ったふりをして)

「うぅ~ん? うぅ~ん? うぅ~ん?」


好きと言ってほしいツクヨ 意地悪な質問

「じゃあその誰かさんをぉ ツクモは好きなのかなぁ? 

好きなのかなぁ? 好きなのかなぁ?(笑)」


焦るツクモ 返事に困る 心の中で葛藤する

(ズルいズルいぞツクヨ 選択肢が一つしかないじゃん・・・

こいつ絶対好きって言わせようとしている)

「うぅ~ん? うぅ~ん? うぅ~ん?」


ツクモに近づくツクヨ 満面の笑み 上目づかいで誘導する

「すぅ~きぃ?」


冷や汗を垂らすツクモ 心の中で葛藤する

(やめろぉ~そんな目をして俺を見るなぁ~!!)

「うぅ~ん?うぅ~ん?うぅ~ん?」


追い打ちをかけるツクヨ ツクモの首に手をまわし

耳元で囁く

「すぅ~きぃ?」


冷や汗をダラダラ流すツクモ 心の中で葛藤する

(はぁ~ひゅぅ~~やめろぉ~やめてくれぇ~!!)

「すぅ~ん? すぅ~ん? すぅ~ん? すぅ~ん?」


最後の手段 ツクモの首筋を甘噛みする ツクヨ

「かぷっ」


甘嚙みと同時に ツクモの中で何かが弾ける音がした

視界が狭まり ホワイトアウト そのまま後ろに

バタンきゅ~っと倒れてしまう


あまり心配していない ツクヨ 

「あっ・・・倒れた」


しゃがんでツクモの顔をのぞき込む ツクヨ


魂の抜けたような顔をしたツクモ ロボット口調で

口をパクパク させながら

「スリープモード二イコウシマス 

 スリープモード二イコウシマス

 シバラクオコサナイデクダサイ」


ツクヨ

「あっ・・・寝ちゃった」


じぃーっとツクモの顔を眺める ツクヨ

「じぃーーー」


二人の間に 風がすり抜ける

しばしの時


片目を開け様子をうかがうツクモ

それに気付くツクヨ

「あっ・・・起きた」




むくっと起き上がるツクモ ツクヨに挨拶をする

「おはようツクヨ 何かあったかぁ~?」


馴染みの挨拶にこれ以上追求しないと決める ツクヨ

やさしく微笑む

「フフフっ何もなかったよ ツクモ」


ツクヨのやさしい微笑みに少しつられてしまう ツクモ

「フっ なら帰ろうぜぇ」


小走りに走り出しツクモの前を行く ツクヨ 振り向き

満面の笑みを振りまく

「ありがとね ツクモ♡」



一族の里・・・幼いころからの馴染みのツクヨ・・・

いつもの笑顔が少し大人びて見えた ツクモが願う・・・


(笑えよツクヨ お前はこの国の夜を照らすツクヨミ様なんだから)






屋上につながる非常階段を駆け下りる 一人の少女

少年と少女のやり取りを 遠くから見ていた

右手に持つ本を胸に抱え 

股間近くのスカートを力強く握りしめる左手

息を弾ませ かけている赤いメガネと同じように

その頬を 赤くしていた・・・


「どうしようぅ~私・・・ドキドキしちゃった・・・」




        第一章「憧れのデュクシ!」につづく

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