第19話 違和感

「そういえば、そうだった。でも、いつから気付いたの?僕はまあ、今日知ったけど」

「2年前。お盆で久しぶりにあたしの実家に帰省して、母からあたしが独身なのを危惧された。そんな時家系図を見せられたの」

「家系図」

「最初はわからなかったけど何となく結婚を意識して『恋愛したの佐古だけなんだよなあ』と思い出してたら、あたしの母の旧姓と佐古の名字が一緒だったことに気付いたの。家系図を基に直に母から聞いたら、佐古の母はあたしの母の5つ年上の姉だったの」

「え、え!じゃあ僕の母は万理の母と5歳離れた姉妹だったの!?」

というか5年も万理は母に内緒で僕と付き合っていたのか。いや待て。万理は中学の頃から親元を離れて1人暮らしだったんだ。1人暮らしは万理が希望して中学から叶ったこと。何かと自由にやらせてくれる裕福な家柄というのは付き合っていた当時から聞いていた。距離があれば親だろうと秘密は知れない。

「ふふふ。道理であたしら共通点が多いと思わない?」

「えー、そうかな」

「中学に入学して早々、初めて会ったあの階段」

っ!!覚えていたのか!?万理は今日1番の満面の笑みで口を開く。

「曜日は違えど同じ場所で弁当を食べていた頃から」

「はは、流石に覚えているよね」

しかし疑問が浮かぶ。従兄弟と知っている彼女がなぜわざわざ僕を会いに来たのか。また、なぜこうも誇らしげに語るのか。肉体関係を持ち僕と彼女のとの命まで宿してしまったのに。まだ真意を知れてない気がする。どこか、今の僕とは何かがズレている気がする。決定的な何かが。

『行動して世の中を知りなさい』

世の中を知る。僕の万理に対する探究心はここで留まるべきだった。そうなれば、夜の海でカッターを持ち、自ら死に行く蛮行は止められたはず。

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