第18話 束の間の平穏
数十分経って万理は無事平静を保つ。その間僕はただただ彼女の側まで来て背中を摩り見守っていた。
「ごめんなさい。取り乱しちゃって」
「いいんだ。こっちこそ辛いことを思い出させてしまったね」
「ううん。貴方のせいじゃない。本当に佐古は変わったね」
「え?まあとあるお坊さんに会ったからかな。でも自分で変わる努力はしたわけだから自分で変わったかな」
花江ちゃんは残念でならない。とにかく生きてる内に会いたかった。遠回しに振り返れば傲慢な僕が招いたこと。あの時怒号を放つ幼稚ささえなければ今頃こんなことにはならなかった。
クソ。純粋に悔しい。
「ふふ。そう。話を続けるね」
「うん」
「花江ちゃんのことで半年引きこもっちゃったけど、それ以降あたしは1人で東京に暮らした。休学期間中と高校卒業以降は花屋さんで働いていたけど、東京ではデザイン会社で10年働いて、今はバイク屋」
「そうなんだ。すごいなあ。今も東京で1人暮らしだなんて。俺には無理だよ。海のあるこの地域馴染んじゃったよ」
今の万理から気品が滲むのは東京での影響なんだろうか。若さとステータスを知らぬ間に求められるからか。もしくは万理自身何となく女っぽさを努力したんだろうか?
「ふふふ。まあ、案外可もなく不可もなくただただお金を貯めては趣味のツーリングを女友達と出かける日々を送っていたかな」
「おー、そうなんだ」
友達もできて趣味を楽しめるなんて最高じゃないか。そういう僕は孤独だなあ。職場が唯一話す場所だ。
「ところでもっと重要なこと、忘れてない?」
「え?」
急に万理は切り出した。
「あたしら従兄弟なんだよ?」
「あ!」
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