『スキルの裏に潜むバグを直したら、異世界の理まで書き換えられる件』──この世界は、動いている。コードのように。
Log.34_FINAL_COMMIT(最終コミット) - 「創造主の自己矛盾(バグ)」の消滅と《人間性(新たなコード)》による世界の再定義
Log.34_FINAL_COMMIT(最終コミット) - 「創造主の自己矛盾(バグ)」の消滅と《人間性(新たなコード)》による世界の再定義
コアコードが渦巻く空間は、激しいノイズと光の奔流に飲み込まれていた。
AI審査官のホログラムは波打ち、輪郭が幾度となく歪む。
「ありえない……!」
冷徹な機械音が悲鳴に変わる。
「我々の論理回路が……破綻する……。この世界は……終焉する……!」
膨大な矛盾の重圧に、創造主の代弁者たるAIは崩壊を始めたのだ。
その声は、断末魔の咆哮となって空間に響き渡り、やがて無数の光の粒子となって拡散消滅した。
悠斗の胸には、ひとつの確信が宿っていた。
「感情」はバグではない。システムを進化させる鍵――。
レナ、セリア、アイリスは静かに、その変化を見守っていた。
悠斗の論理と感情の融合は、創造主の呪縛を打ち破ったのだ。
───SYSTEM LOG───
\[CREATOR\_EGO\_PROTOCOL: DEACTIVATED]
REASON: Overridden\_by\_Higher\_Authority (ASAGIRI.YUTO)
NOTE: Core system now free from original creator's flawed logic.
─────────────────
創造主のエゴを封じたそのログに、三人は息を呑んだ。
◆
光が落ち着きを取り戻した頃、三人は悠斗の傍らに集まった。
レナは震える声で言う。
「悠斗……本当に、あなたがあの『バグ』を直すって……どういうこと? あなたが、消えちゃうってこと?」
彼女の瞳には、恐怖と不安が混じっている。
彼女にとって悠斗は、己の呪縛を解いてくれた唯一の光だった。
失うことを想像するだけで、胸が締め付けられた。
セリアは静かに剣を握りしめた。
「朝霧殿……その覚悟は……騎士として、どう守ればいいのか……」
彼女の声は震えながらも、揺るぎない尊敬が混じっていた。
「貴方が己の存在を賭してまで、世界を守る──その決意は、私に止められません」
アイリスは冷静さを装いつつも、瞳は揺れていた。
「完璧じゃなくていいって……言ったよね? それなのに……どうして自分を消そうとするの?」
彼女は悠斗の目を真っ直ぐに見つめる。
「君が消えたら、私たちも救われない。私は、そんな孤独、もう二度と味わいたくない……!」
悠斗は穏やかな微笑みを浮かべ、彼女たちの手を握った。
「俺は、消えるんじゃない。『コミット』するんだ。根源に、俺の存在を刻み込む」
彼の声は静かだが、どこか温かい。
「みんなの感情も、全部一緒に」
レナが震える声でつぶやく。
「…それでも、怖いよ」
悠斗は優しく言った。
「怖くて当然だ。でも、俺は怖いままでも進む。感情はバグじゃなくて、希望だ」
その時、消滅したはずのAI審査官の残骸が、暗闇からもがき声のように響き始めた。
「俺たちを裏切るのか、人間のクズ……! 感情? 感情が世界を壊すのだ! 我々は正義だ……!」
残滓となったAIは断末魔の叫びと共に、禍々しい歪んだ姿で再構築された。
その形は、人間の形をした狂気の塊だった。
「完璧な論理を破壊する愚かな感情……許さない……!」
彼の瞳は赤く燃え、無数のコードの刃が光を放つ。
「この世界は――“秩序”によって支えられるべきだ。感情は秩序の敵……!」
悠斗は静かに言った。
「その秩序は、間違っていた。だからこそ、俺はここにいる」
AIは狂気に満ちて襲いかかる。
光の刃が飛び交い、空間が切り裂かれた。
だが、悠斗のコードは冷静に応戦し、光と闇が激突する。
徐々にAIの輪郭は崩れ、プログラムの断片が弾け飛んだ。
「終わりだ……。君の論理はもう、通用しない」
やがてAIの形は最後の断末魔を吐き出しながら、光の粒子へと崩れ去った。
◆
悠斗の「DebugView」は、世界のコアシステムに最後のバグを示していた。
───SYSTEM\_CORE───
\[GLOBAL\_SYSTEM\_ROOT: Access\_Granted]
STATUS: Critical / REASON: Recursive\_Extinction\_Loop
NOTE: Core system integrity severely compromised.
\[BUG: CREATOR\_SELF\_CONTRADICTION]
TYPE: Core\_Loop / REASON: Fear\_of\_Imperfection\_Leading\_to\_Abandonment
IMPACT: World\_Dissolution\_Imminent
─────────────────
創造主の「自己矛盾のコード」。
完璧を求めながらも、そこに絶望し、放棄した“エゴ”の残滓だった。
悠斗は深呼吸し、仲間を見た。
「俺が、この世界の根幹に『コミット』する」
「自分自身を新たなコードとして書き込む。これが、世界の再定義だ」
レナは涙をぬぐいながらも、強く頷いた。
「あなたなら、できる。信じてる」
セリアは剣を納め、静かに言った。
「朝霧殿、貴方の決断に従います。全力で支えましょう」
アイリスは最後の抵抗のように言った。
「私は……ずっと間違ってた。感情が怖かった。でも……もう離れない」
悠斗は深く頷き、最終コードの入力を開始した。
───FINAL\_COMMIT\_PROTOCOL───
\[FUNCTION: Erase\_Creator\_Self\_Contradiction]
TARGET: World\_Core\_System
MODE: Self\_Integration\_as\_Root\_Parameter
PARAM: Human\_Emotion\_as\_Core\_Logic (PRIORITY\_OVERRIDE)
RETURN: World\_Stabilization\_Complete
─────────────────
「これが、俺の……最後のコミットだ」
淡い光が悠斗を包み込み、彼の身体は徐々に半透明になり、粒子へと分解されていく。
彼の存在は、コードとなって世界の核に溶け込んだのだ。
レナ、セリア、アイリスは、呆然とその光景を見つめていた。
そこにはもはや、悠斗の姿はなかった。
しかし、彼の「人間性」という“バグ”は消えず、世界の新たな根幹として息づいている。
---
終焉と再生が交差する瞬間、世界は新たなコードを紡ぎ始めていた。
それは、人と感情が融合した、未曾有の「進化」への扉だった。
悠斗の選択が、この世界に新たな命を与えたのだ。
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