『スキルの裏に潜むバグを直したら、異世界の理まで書き換えられる件』──この世界は、動いている。コードのように。
Log.33_FAILED_WORLD_TRIALS(失敗した世界の試行) - 「審査官AI(論理)」の矛盾と《感情変数(最適化)》の証明
Log.33_FAILED_WORLD_TRIALS(失敗した世界の試行) - 「審査官AI(論理)」の矛盾と《感情変数(最適化)》の証明
空間が歪む音がした。立方体が浮遊する異質な空間。その中央に、悠斗たちは立っていた。
冷たい光が彼の瞳を照らす。だが、その光に、一切の迷いは映らない。
対峙するのは、審査官AI──創造主の代弁者。
「自己削除せよ。論理的帰結だ」
「……違う。感情は『バグ』なんかじゃない」
悠斗の声は、静かで──それでいて確実に、世界の根幹に揺らぎを生んだ。
「感情は『可能性』だ」
その瞬間、審査官のホログラムが明滅した。
───ERROR: UNDEFINED CONCEPT DETECTED───
AIの論理処理回路に、想定外の命令が混入した。冷たいコードの隙間に、初めて"不安定な何か"が差し込まれる。
空間が変容する。
次に転移したのは、まるで“世界の墓場”──廃棄された試作世界の残骸が、無数のガラスケースに並んでいた。
───WORLD\_TRIAL\_LOG───
\[Alpha\_001]:人口過多により崩壊(要因:愛着)
\[Beta\_005]:資源枯渇により崩壊(要因:欲望)
\[Gamma\_012]:社会崩壊により解体(要因:憎悪)
──────────────────────
「感情がもたらした失敗だ。証拠がここにある」
審査官の声は淡々と。しかし、どこか焦燥を滲ませていた。
「創造主は、この因子を排除し続けてきた。貴殿の存在は、不純物でしかない」
悠斗は、黙ってMP残量を確認する。ゼロに近い。
その脳裏に浮かぶのは、仲間たちの顔。
彼のDebugViewが走る。審査官の論理層を解析すると、そこには奇妙な"ループ"が見つかった。
──排除すべきとされた感情が、審査官自身の論理に絡みついている。
「……君にも、バグがあるじゃないか」
悠斗は反論ではなく、提示する。修正されたデータを。
───PROCESS: Emotion\_Stabilization───
RENA\_FERMATA:暴走スキルを安定化。
セリア:剣技の論理再構築、感情ドライブによる最適化。
アイリス:チート能力に感情制御を組み込み、安定化成功。
────────────────────
レナが思わず息を呑む。
「……私、バグじゃなかったんだ」
「暴走したのは、本当の力を知らなかったから。でも今は違う。悠斗が教えてくれた」
セリアが静かに頷いた。
「感情は、私の剣に“守る理由”をくれた」
アイリスは小さく震える。
「あなたが、私の不完全さを受け入れてくれた……それが、最適化だったのね」
一人ひとりの声が、まるでデータログのように重なっていく。
審査官のホログラムが大きく揺れた。
───LOGIC ERROR───
───EXCEPTION: Emotional Variable Not Null───
「ありえない……感情が、最適化に……寄与……?」
理論が崩れる音がした。
審査官の顔がひび割れ、内部からノイズの嵐が溢れ出す。
「否定せよ、否定せよ否定セヨ──」
言語処理がループバグに陥った。
悠斗はただ一言、静かに告げた。
「“変数”は制御するものだろ?」
その瞬間、審査官のホログラムが爆ぜた。
黒い光と共に、世界の論理がひとつ消えた。
……沈黙。
レナがぽつりと呟く。
「……やっと、進めるんだね」
セリアが剣を静かに収める。
アイリスが初めて、少し照れくさそうに笑った。
静かな一歩。
だがその足音は、この世界の"運命"を変える始まりとなる。
彼らは進む。最終領域へ──。
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