第4話 魔法の適性と計測
数学、国語、社会、理科の授業が終わると、夜宵と一緒に食堂へ向かった。
「ここってすごいですね。公立中学校なのに、食堂があるなんて」
「だよね。普通は給食だもんね」
「午後の授業は体育と魔法実技なので、食べ過ぎると動けなくなっちゃうので、気をつけてくださいね」
「そんな時間割組んだやつ、絶対生徒のこと考えてないだろ」
他愛もない話をしながら歩いていると、食堂に到着した。中では、食堂のおばちゃんが魔法を使い、空中に浮かせた包丁で大量の野菜を手際よく切っていた。
へえ、こんな魔法の使い方もあるんだな。しかも、めちゃくちゃ手慣れてるし。
俺はカレーを、夜宵は洋食セットを注文した。魔法のおかげか、すぐに料理が運ばれてきて、席に着いて食べ始める。しばらくすると、夜宵が話しかけてきた。
「魔法実技の授業って、やっぱり戦闘系の魔法を習うんですかね」
この地域は戦場から少し離れていて大きな被害は出ていないが、戦争中なのは確かだ。戦闘系の魔法を学ぶことになるのは、まあ当然だろう。
「そうだね、戦争中だから」
「ですよね‥。千年前に魔法を開発した人って、何のために作ったんでしょうね」
人の役に立つため‥そう。それが理由だった。でも現実では戦争に使われている。もちろん、それだけじゃないのは分かっているけど。
「どうだろうね。でも、戦争のためじゃなかったと思うよ」
「ですよね。私もそう思います」
昼食を終え、魔法実技の授業が始まった。だが、意外にも教室内での座学だった。
「まず魔法の基本的な使い方だが、手のひらの上に魔法陣を浮かべ、そこから使いたい魔法をイメージすることで発動する。ただし、魔法には“適性”があって、例えば火の魔法を使いたくても適性がなければ発動できない。そこで」
そう言って先生は、教卓の下から奇妙な機械を取り出した。
「この機械は、魔法の適性を調べる装置だ。手をかざすと色が浮かぶ。赤なら“火”、黄色なら“雷”といった具合だ。それじゃあ、一人ずつやってみよう」
左の席の人から順に調べていく。大抵の人は一属性らしい。適性は親の遺伝が強く、どちらかの属性を受け継ぐことが多いという。
そして夜宵の番になり、機械に手をかざすと、緑と水色が浮かび上がった。
「おおー!夜宵は風と氷か!」
彼女のクールな雰囲気にぴったりの属性だ。そして数人の生徒が調べ終えて俺の番。手をかざすと、青と赤、そして“白”が浮かび上がった。
「遥斗は、水と火と‥ん?白?これは初めて見たな。本にも載ってない。大学の教授か、魔法に詳しい人に調べてもらうしかないな」
千年経っても、解明されてない魔法があるのか?
全員の適性を調べ終えると、場所を外に移して実技の授業が始まった。
「全員そろってるな? それでは今から実際に魔法を使ってもらう。そこに十個の的があるから、四人一組でひとつの的を使ってくれ。自分の最大火力の魔法を的にぶつけて、威力を測定してもらう。結果は成績に入るから、しっかりやるように」
やはり戦闘系の実技か。とりあえず班を組まないと。すると。
「私と組んでくれますか?」
夜宵が声をかけてくれた。今のところ他に友達もいないし、正直助かる。
ちょうど別の二人も誘ってくれて、四人がそろった。空いている的の前に立ち、順に測定を始める。
「じゃあ、俺からいくな」
班の一人が前に出て、魔法陣を展開。すると、十センチほどの石が現れ、それを的に向けて撃ち出す。しかし、金属製の的には傷一つつかなかった。
判定結果はFランク。
「はっはっは、最初はそんなもんだ。まあ、評価には入れるけどな」
先生がそんな事を言う。最後の一言、いらないだろ。
二人目も同様にF判定。そして夜宵が前に出る。暗い表情で、あまり乗り気には見えなかった。淡い水色と緑の魔法陣を浮かべ、竜巻を起こし、その中に氷の礫を込めて放った。的に直撃し、判定はDだった。
あの表情だったのに、良い結果を出すんですね。
そして俺の番が来た。反抗しても意味ないよは理解してるけど、真面目にやるのも何か癪だな。うーん、まあ遊ぶか。
的に向かって歩きながら、手のひらに魔法陣を浮かべ、それを空へ向ける。そこから水を球状にして放出。水球は地面をバウンドしながら進んでいき、的に向かって飛んでいく。
「はい、バウンドしてー、バウンドしてー、バウンド〜」
水球は的に命中した。
あれ、俺ってこんなことする年齢だっけ? 体に精神が引っ張られてるのかもな。
「おいおい、なんだ今のは!? 水をバウンドさせるなんて、どうやって魔法操作してるんだ? これは成績に入れるぞ。威力はFだけどな!」
あの先生はいちいち余計なこと言わないと気がすまないのか。とりあえず計測は終了。そして、六限の体育をして今日授業を全て受け終えて帰宅の時間になった。
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