【極秘指定】

追補報告書番号:第117-YYS-1021-A

提出先:内閣特別事象対策本部(CPC-JPN)

報告者:主任分析官 黒瀬 誠二(対超常事象部門 第六分科)

分類:S-3 特異存在由来人格変質事案(仮称「ゆらゆら様」関連)追補調査


Ⅰ. 調査背景

当該対象者・明智良平(以後「対象者」)における異常現象は依然として継続中であり、身体および精神状態は著しく悪化。第117-YYS-1017号報告にて記載の通り、「神の座」板が発する未知の波動と共鳴し、対象者は“ゆらゆら”と揺らぐ人格状態に陥っている。


本報告は最新の施設内観察およびデータ解析に基づき、対象者内における憑依・人格乗っ取りの可能性を検証し、経過報告する。


Ⅱ. 観察結果と解析

赤黒い染みの拡大と形態変化

 保管室内、対象者病室の壁面に出現した赤黒い染みは、時間経過と共に拡大し、明確に「老婆」の輪郭を示す形状に変化。

 DNA解析試料と対象者の皮膚細胞に類似性はなし。これが老婆“ひずみ”の残留物質である可能性が高い。


対象者の言語パターン変化

 録音・解析データより、対象者の言語は「ゆらゆら」等の断片語の反復から、徐々に「わたしはひずみ」「あなたはわたしのもの」など明確な意思表示を含む文節へと変容。

 この変化は意識の二重化・人格交代を示唆。


脳波および精神活動の二重化

 脳波測定にて二重波形(多層活動)が検出され、同時に複数人格の存在を示唆。MRI映像には物理的な脳変異は見られないものの、電気活動が通常のヒトの範囲を逸脱。


神の座と対象者間のエネルギー共鳴

 「神の座」の微弱振動と対象者体内の振動が完全に同期。電磁波スペクトル上でも強い相関関係が確認されている。


異常現象の拡散傾向

 対象者の近傍に置かれた金属製器具や電子機器に揺らぎ、誤作動が頻発。映像記録では霧状の影が対象者の体外へと広がる様子も捉えられている。


Ⅲ. 現時点での結論

老婆・ひずみは「神の座」を媒体として対象者の精神に侵入、二重人格を形成しつつある。


対象者の自己意識は徐々に薄れ、乗っ取りの進行は急速。


「ゆらゆら様」の本質は、古木板を介した人格侵食および乗っ取りのメカニズムを含んでいると考えられる。


乗っ取られた対象者は“第二のゆらゆら様”として、さらなる異常拡散の危険性が高い。


Ⅳ. 今後の対策提案

対象者の隔離強化および電磁遮断室への移送。


「神の座」の封印および断絶措置。破壊は困難と判断されるため、冷凍保存を継続しつつ、精神干渉の遮断装置設置。


精神安定剤および電磁干渉技術による乗っ取り進行の遅延試行。


追加調査にて、乗っ取り人格の実体化防止と除去技術の確立を急務とする。


Ⅴ. 付録・資料

付録A:対象者の発話変遷録音データ


付録B:脳波・MRI解析報告書


付録C:赤黒染みの画像解析およびDNA検査結果


付録D:対象者周辺機器の誤作動記録


報告書発行日:令和七年七月五日

提出者署名:黒瀬 誠二(押印済)

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