【極秘指定】
【極秘指定】
報告文書番号:第117-YYS-1017
提出先:内閣特別事象対策本部(CPC-JPN)
報告者:主任分析官 黒瀬 誠二(対超常事象部門 第六分科)
分類:S-3 特異存在由来人格変質事案(仮称「ゆらゆら様」関連)
Ⅰ. 概要
2025年6月18日、岡山県北部における“ゆらゆら様”関連事案終息後、都内に帰還していた元作家・明智良平(仮名・40代男性)が突如精神錯乱状態に陥り、異常言動および肉体変異の兆候を呈した。該当人物は過去に「ゆらゆら様の事案の記録集」と題した小説作品を執筆しており、その執筆動機として“牧田家の者を名乗る差出人”より分厚い古木板(以後「神の座」と記載)の提供を受けたと主張していた。
該当人物の行動と言語構成、ならびにその保有物より検出された未知の振動数、および“視認困難な反射歪”は、先の津山事案で確認された“ゆらゆら様”と同一波長域のものと一致。現在、当局は明智良平を特別管理対象【S-YY-02】に指定。民間との接触は完全遮断中。
Ⅱ. 対象人物の経緯と変異過程
6月20日: 編集者と最後に連絡。意味不明な言葉と笑い声を残す。録音には「ゆらゆら」「あかいふくが きえる」といった言葉が繰り返されている。
6月22日: 都内某病院に強制入院。医師らが診察中、視線のズレや語彙の歪みを訴える。
6月23日: 背後の空間に“波打つような揺らぎ”が確認され、カメラ映像には不可解な歪みが多数記録される。
6月25日: 保管されていた「神の座」より、微弱な心拍様の振動を検出。同日、病室の壁に赤黒い染みが出現。染みの形状は「椅子に座る老婆」に酷似。
Ⅲ. 神の座の性質について(物理解析)
材質は樹齢推定800年以上の欅。年輪に逆転箇所が存在。
脈動を伴う微細な熱放射あり(周期:1分16秒)。
放射される音波には、霊安室内の複数個体に一時的記憶障害を引き起こした前例あり。
接触した職員2名が“腰掛ける夢”を反復体験中。「老婆が前で歌を歌っていた」と証言。
Ⅳ. 対象人物の現在の状態(第六施設保護下)
明智良平は現在、言語の発話が「ゆらゆら」「うえうえ」「まもるよ」などに限られている。
食事摂取不可。代謝活動に異常増加あり。皮膚の一部が紫色に変色。
周囲の金属面に揺らぎのような反射が生じ、映像記録が困難。
直近では「すわって あげる すわれば なかま」と言いながら、自身が“神の座”の上に座り続けている。
Ⅴ. 結論と今後の対応
明智良平は現在、精神構造・物理存在ともに“人間”と断定することが困難な状態にある。
ゆらゆら様は「人格に寄生する怪異」ではなく、「存在を模倣し増殖する神格的模写体」である可能性が浮上。
明智個体は第二の“ゆらゆら様”の原種と化しつつある。
神の座は絶対隔離対象として冷凍保管中。接触禁止。
参考資料(抄録)
【添付1】:医療記録・異常言語記述例
【添付2】:防犯カメラ映像の揺らぎ記録
【添付3】:音波解析結果
【添付4】:夢記録報告書(職員3名)
【添付5】:赤い服を纏う人影の視認報告(別施設含む計7件)
報告書発行日:令和七年六月三十日
提出者署名:黒瀬 誠二(押印済)
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