ナナたん トマトサンド

オカン🐷

🍅サンド

「ママ、あのね、ミューミューがね」


 隣に座った隼人から声がした。


「ミューミューって但馬みゆきちゃんだろ?」

「にいたん、なんでちってるの?」

「「みゆきちゃんの兄ちゃんと同じクラスなんだ。ナナがミューミューって呼ぶから嫌がってるらしいぞ」

「えっ、ナナには『かわいいなまえをありがと』っていってたのに」

「人間、本音と建て前があるんだ」

「ホワ~」

 ……。


「それでミューミューがどうしたの?」


 ママが優しく訊いた。


「えっ? ああ、ミューミューがね、みゆきちゃんがね」

「だからみゆきちゃんはわかったから先に進んでくれ」


 隼人がチャチャをいれる。


「トマトのサンドイッチをもってきてて、かえっこちたの。おいちかったの」

「食パンにバター塗って薄切りにしたトマトを挟んで」


 ルナはダイニングテーブルの上で作り始めた。


「トマトにはちみちかけうの」

「ハチミツ~。でも、小さい子に蜂蜜はダメなんじゃないの?」

「それは1歳未満の子よ」


 涼子も参戦してきた。


「ナナは4ちゃいでちゅ」

「話し方は1ちゃいだけどな」

「あらっ、美味しい」

「どれ」


 次々に手を伸ばした。


「本当、美味しい」

「うん、悪くない」

「でちょ、おいちいでちょ」

「ナナ、みゆきちゃんの話だけど『ミュータント』って呼ばれるのが嫌って言ってたんだった、ごめんよ、間違えて」

「じゃ、ミューミューはおこってないの?」

「ああ」





「ピアノ たれがひいているのかわからないの。みにいくとたれもいないの」

「だからナナたんは幽霊がいると思うのね」

「りょうたんはゆうれいみたことある?」

「ないよ。だから幽霊初体験。ワクワクしちゃう~」

「りょうたん、おててつないで」

「やだよ。幽霊出たら走れないじゃん」

 

ナナは涼子のTシャツの裾を掴んだ。


「りょうたん、ゆうれいでてもおいてかないでね」

「そんな、幽霊出たら逃げるよ」

「いやー、おいてかないで、りょうたん、おねかい」


 ナナは幽霊が出る前からべそをかいている。


「ハハハ、ナナは怖がりだな。ほら、幽霊なんていないよ」


 ナナは涼子の身体に隠れるようにしてピアノが置いてあるエレベーターホールを覗き込んだ。


「よかった」


 ナナは小さなため息をついた。


「そんな油断すると、そこ、ほらっ、そこに」

「キャー」


 ナナが飛び上がった。


「な、わけないじゃん」

「もう、りょうたんちらい」


 ハハハッ





 ナナの振るタクトに合わせてマナ、エナ、ケントのコーラスが地下のシアタールームに鳴り響いた。


 おたんじょうび、おめでと~。おたんじょうび、おめでと~。だいすき~ばあば~、おたんじょうび、おめでと~。


 開け放たれた扉の向こうのエレベーターホールからピアノの伴奏が聞えてきた。

 エレベーターからは山根シェフが押すワゴンに大きなバースデーケーキにロウソクが立てられている。

 ロウソクの火が吹き消されると拍手が起こり、「おめでとう、ばあば」のラッシュが。

 ジョーから花束が渡され、次々にプレゼントが手渡された。

 ケーキを食べながら隼人のマジックショーが始まった。


「オリーブの首飾りひいて」


 りょうがピアノに向かって言った。


「ひいたことないよ」

 タラララララー、タラララーラ、を繰り返したらいいから」


 鼻の頭に生クリームをつけたナナが出て来た。

ティッシュを掴んだルナがその後を追いかけた。


「ママ、そーにいたん」

「まあ、蒼一郎がひいてたの」



         【了】



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ナナたん トマトサンド オカン🐷 @magarikado

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