第10話:魔法使いとの出会い 

 彼と出会ったときの一瞬を、私は絶対に忘れない。 

 例えこの先の長い果てない命で記憶が薄れようとも、その先で死んだとしても私は、彼の事を忘れないと言えるだろう。

 出会いは偶然。

 私が封印されてたエルフの神域に彼が迷い込んだから。

 ――私はずっと神様なんて信じてなかったけど、あのときの事を思うと運命なんてものがあるのなら感謝したい。

 

『……誰』


 私以外に何もなく、だだっ広い森の神殿。

 急に宙から落ちてきた何者か、意識がなく動かないので怖かったが、数百年ぶりに見る他人が私の住んでる場所で死ぬのは嫌で、治療したことを覚えている。

 だけど、話しかけるのは怖いから……物陰で見守ってたんだけど。


『……幽霊に、助けられたのかなぁ』


 目覚めた彼は、心底驚いた顔でそんな的外れなことを口にして、すっごく悩んだ後で『ありがとう』と口にした。

 ちょっとそれがおかしくて悪戯のつもりで、神域の木に生えている果物を投げて渡してみれば……。


『あれまじで、幽霊?』

『幽霊じゃないよ』

『わっひゃぁー!』

『わぁ変な悲鳴だ』


 ゆっくりと耳元で囁けば、思わず笑ってしまうほどの変な悲鳴を上げて彼は飛び跳ねた……感情が出やすいのかわかりやすい彼。面白いなと思いながらも、私は話しかける。

 

『それで貴方は誰?』

『…………えっと、他称勇者の――ノクス?』

『どういうこと?』

『……いや、勇者って呼ばれてるんだけどまだ何も出来てないから他称かなぁって』


 詳しく話を聞けば彼は女神とやらに魔王打倒を任される勇者として選ばれた少年らしい。歳は十三……そんな年齢で旅立つなんて凄いと思うけど、そんな子供を勇者として選ぶのは酷いとは思った。

 でも、彼の様子を見るに嫌とは思ってないようなので……私の中にそれをしまう。


『えっと、それで君は?』

『……私? 私は、エルフのリア。よろしく』

『うん、よろしく。それでなんだけどさ、ここって……どこ?』

『私のお家?』

『それは、ごめんなさい?』

『なんで謝るの?』

『だって、めっちゃ不法侵入だし……治療してくれたのにお礼してないし』

『……変な子、気にしなくて良いよ』


 きっとこの子は素直な子なんだろう。

 変な子と言えば、見て分かるくらいに顔を赤くしつつも……ちゃんとお礼を言ってきた。


『えっと帰り方って分かりますか? 幼馴染みとはぐれ? ちゃって』

『……ちょっと難しいかも、ここからは出られないし』

『え、それはどういう?』

『ここは神域で、私が守ってるから?』


 約八百年以上、私はここに住んでいる。

 ……理由は簡単に言えば生け贄で、この場所に封じられているエルフを恨む邪神を封じてるから。ここを離れればそれが解き放たれて、最悪が訪れるし離れられない。

 しかも、私を出さないための決壊もあるからこの子には悪いけど出ることは出来ないのだ――でも、それを伝えるのはこの子の表情を見ると出来ないので。


『……冗談だよ、今は出れないけど出る魔法を作るから安心して?』


 普段ならそんな事は考えない。

 ……だけど、そのときだけはこの子の為に魔法を作っても良いかなって思えた。

 どうしてかなんて分からないけど、これが明確なターニングポイントだったんだと思う――それが、ノクスとの出会い。私を救ってくれた大切な人との始まりだった。


 

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