第9話:兄妹とは(哲学)

 真っ昼間からの怪談話に肌寒さを感じながらも、俺はまだ帰らなそうなリアと話すことにする。一旦状況はやばいけど、多分認識かなんかが互いにずれてるんだろう。

 というかそうでなきゃ困るというか……マジ怖いというか。


「だいじょぶ?」

「あ、はい――えっと、その……つかぬ事を聞くのですが」

「うん、いいよ」

「兄妹だと結婚できませんよね?」


 さりげなく言われた結婚というワード。

 とりあえず無視できず、とにかくツッコみたかったので聞いてみた。

 一方的に顔を見られるこの状況。冗談かもしれないと思って……というか祈っていれば、彼女は一切の不純物のない曇りなき眼で。


「大丈夫、血は繋がってないから」

「……でも、ご兄妹と?」

「うん。あ、義理じゃないよ?」

「…………?」

 

 どうしようあり得ないくらいに頭痛が痛い。

 どういうこと? これ本当にまっとうな言葉で合ってる?

 今俺は自分の顔を見ることは出来ないが、きっと鏡馬あればそこにはとてつもなく間抜けな顔の俺が写ってそう。

 そう自分で思えるほどに今の俺は混乱しており……なんというか、意味が分からなく――それどころか、ずっと疑問符ばかり。


「それは、そのエルフの文化で?」

「あれ、エルフって言ったっけ?」

「……年齢的に?」

「納得、良い勘だね」

 

 純粋に凄いと思ってるのか笑顔のリア。

 誤魔化せはしたものの、ボロが出そうになったことで自分が冷静でないと知る。

 というか頼むからそういう文化があってくれ。知らないだけでそういう文化があるのなら俺が悪いで終わるから。


「うーん、ないよ?」

「では、なにゆえ?」

「エルフの本能」


 何の本能なんだろう。 

 ……兄求本能的なのがエルフに備わってるのだろうか? 確かに昔旅で兄妹が欲しいと言ってたけど、年齢的に彼女は姉ではないだろうか?

 状況的に俺は年下の兄? いや、そんな矛盾を持った存在がいて良いわけがないし、マジでなんだこれ。というか冷静になれ、俺はリアの兄じゃない。


「お相手の方は、どう思ってるのでしょうか?」

「……? 私の事好きだと思うから大丈夫」


 それとこれは別じゃない?

 ……えと、確かにリアは大事な仲間だし好きではある。 

 だけどそれはライクの方で大切な仲間という面の方が強い。


「相思相愛なんですね」

「うん、昨日も彼シャツさせてくれたし、受け入れてると思う」

「へー」


 そういえば、昨日のTシャツ返してもらうの忘れてたなー。

 朝見送った段階で別の服に着替えられてたから気にもとめなかったが、割とお気に入りだったTシャツこいつに奪われたのか。

 返して? と言いたいけど、なんか今までの話しを振り返るに返されたら返されたで怖い。


「……あ、今日はありがと。そろそろ用事あるから帰る」

「あ、はい。お越しいただきありがとうございます……そのお兄さんとお幸せに?」

「うん、ここで式あげてもいいよ」

「それは楽しみですねー」


 そうして閉じられる扉。

 向こうの部屋から完全に気配がなくなったのを感じてから、俺は一度空を見上げ。

 

「…………こわぁ」


 自然とそんな声が漏れてしまった後で項垂れた。

 もうなんだろうね、泣きそう。

 昨日久しぶりに会った感動は、今や恐怖に塗り潰されている。とりあえずジョセフ爺さんに今日は疲れたから帰るとだけ伝えて、今更ながらに最高峰のセキュリティの筈の我が家にリアがどうして侵入できたのかわかず余計怖くなった。


「なぁダイン、兄妹って何だと思う?」

「字の通りなら血の繋がった兄や姉、妹とか弟?」

「あ、よかった俺の常識って変じゃないんだ」

「……変なノクス」


 ……わぁーいやったオレマトモー。

 そう心の中ではしゃいだ俺は、夕方頃からふて寝した。

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