第6話「その観測、理不尽につき。」


第6話「その観測、理不尽につき。」


 


【朝・教室】


 


「ふむ……」


紫藤美月は、今日もノートPCを広げていた。

内容は\“クラス行動パターン分析アプリ『HEXA』の実験ログ。

簡単に言えば、「こいつ次どんな動きするか予測するアプリ」だ。


 


(千里、今日も3.4秒おきに髪をいじる。よし、予測値一致)

(仁、2分周期で奇声。妥当)

(花守……視線の移動が昨日と変化。感情の変動あり)


 


だが、一人だけ——


 


「……神谷零だけは、全く読めない。」


 


アプリの予測では“座る”と出ていたのに、彼は唐突に教室の隅に前転した。


(なぜだ)


 


神谷「うぉっと、ペンが……落ちたー的なー!?」


(前転で拾う必要があるか!?)


 


美月は彼に、興味と違和感と恐怖を抱いていた。


 


(あの動きは……“逃走訓練経験者”のそれだ。しかも自然すぎる)


(神谷零……お前、本当に“普通の人間”か?)


 


 


【昼休み】


 


美月は思い切って声をかける。


「神谷くん。君、避けるの上手すぎじゃない?」


「え、まぁ、反射神経? 鍛えてないけど!」


 


「……たとえば、“催涙ガス”撒かれても、君なら真っ先に無傷で逃げ切れそうだよね」


「なんで例えが戦場なん!?」


 


(くっ……探り入れてきてる!?)


 


「……君みたいな異物、好きだよ。この世界には、合理じゃ測れない物が必要だからね。」


 


「怖っ……なんか今ちょっとだけスカウトされた!?」


 


 


【放課後・コンピュータ室】


 


美月は、神谷を強引に呼び出した。

理由は、AIを使った「神谷零パターンの解明」実験。


 


「この“HEXA AI”に君の行動パターンを叩き込んだら、きっとバグる」


「やめて!? バレるとかじゃなく、俺がバグりそう!!」


 


実際に起きたこと:

AI「神谷零の行動予測:1秒後に後方宙返りして壁を蹴って退室」

→神谷「するわけないだろ!? ……いや、これ緊急時なら……」


 


「やっぱり訓練されてるな、君……!」


「なんでそこで確信持つのやめてぇぇぇぇ!!!」


 


 


【数日後】


 


美月は神谷にこう言い出す。


「君、私と一緒に【対異常存在特化型AI研究会】入らない?」


「何その厨二感あふれるサークル!? 」


 


「……君はきっと、何かを隠してる。

 でも私、そういうの\“好き”なんだよ。理不尽と戦う、名もなき兵士の話とか」


 


(やめてくれ……そっち系のストーリーモードに入るな……!)


 


 


【結末】


 


美月はノートに書く。


 


**「神谷零:観測不能の変数。非常に面白い。**

**……今後、何かあれば“協力者”として利用価値あり。」**


 


→協力者(物騒)

→利用価値(闇)

→観測不能(それもう人外扱い)


 


神谷「……あの子、花守以上に怖くない?」


心音「……女ってそういうとこあるから」


 


> ——第6話、完。


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