第5話仁、筋肉で語る



#第5話「仁、筋肉で語る」


 


【朝・登校中】


 


「よぉ!! 神谷!!」


朝からテンションMAXな男、それが友近仁。

身長180cm超え、肩幅は戦車級。表情は常に真顔なのに、やることはバカ。


 


「なぁ、お前って……実は“すごい強い”だろ?」


「は? いや、なんで」


 


仁は昨日のドッジボールを見て、神谷の「鬼の回避能力」や「隙間への投球」を見ていた。


 


「俺は見たんだよ……!

 ボールが来る前にお前が動いていたことをな!!」


 


(バレた!? ……いや待て、落ち着け。これは誤解の可能性がある)


 


「つまり! 神谷、お前……“第六感”を極めた男”なんだな!?」


 


(なんだその勘違い!!!!)


 


「くぅぅ! 男は背中で語るもんだが、神谷は“背中で世界を読む”男だったか!!」


 


——こうして、仁の“誤解による尊敬”がスタートした。


 


 


【昼休み・体育館裏】


 


仁が突然、神谷に土下座。


「頼む!! 俺を鍛えてくれ!! 俺も“気配でボールを避けられる”ようになりたいんだ!!」


「いや無理無理無理!! お前体力だけで人生渡ってきたタイプだろ!!」


 


「俺はな、昔からずっと憧れてたんだ……見えない敵と戦う男に」


 


(いやそれお前……殺し屋とか忍者とかの発想だろ!?)


 


「俺も目指したい……最強の『静かなる闘士』!!」


 


「やめろ俺の方向性を勝手に定義するな!!!!」


 


だが神谷は考えた。変に突っぱねると逆に怪しまれる。


(なら、筋トレっぽい謎訓練でごまかそう)


 


「わかった。じゃあ、まずは“基礎”からだ」


「おおっ!?」


「まず、目をつぶって、落ち葉が落ちる音を感じろ」


「なるほど……なるほどな!! これは“気配”の修行……!!」


(ただの時間潰しです)


 


「次に、地面に耳を当てて、アリの足音を聞け」


「クッ……この“静けさの中の狂気”……やはり神谷、ただ者じゃねぇ!!」


(俺だって静かに普通の生活したいんだよォ!!)


 


 


【放課後】


 


仁は勝手に「神谷に弟子入りした」と周囲に吹聴。


 


「マジ?」「友近、あの神谷に鍛えられてんの?」


「なんか目の輝き変わってね?」「てか背中のオーラで壁割ってなかった?」


 


神谷の天然偽装に、さらなる注目が集まる。


心音もじっと神谷を見つめる。


 


(神谷くん……また“変なこと”に巻き込まれてる……)


 


 


【その夜】


 


仁の部屋。

彼はノートにでかでかとこう書いた。


 


**「師匠語録①:アリの足音は心で聞け」**


 


(いやそれ俺、ふざけただけだからな!?)


 


 


【次の日】


 


仁が勝手に「神谷式修行道場」を作った。


・落ち葉キャッチ修行

・カラスの鳴き声で瞬時に方向転換

・3秒目つぶって開けたとき、机の変化を察知する“視認センス訓練”


 


「誰がこんな道場広めろって言ったァ!!?」


「師匠!! 今後は“神谷流・戦気道”として展開を!」


「勝手に武道作るなァァァァ!!」


 


 


【結末】


 


仁は結局、「師匠の教え」を信じ切って、なぜか全国気配感知選手権(※非公式)に応募し始める。


神谷は校内で「謎の達人」みたいな扱いに。


心音の疑念はさらに深まる。


 


「……神谷くん、何者なの?」


(俺が聞きてぇよ!!!)


 


> ——第5話、完!


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