第16話 ガソリン単価リッター五円の損
結局。姫華に絡んだニッカポッカ野郎三人に、厳重注意する形で、場を収めたあの警察官ら。物的証拠の映像があれでは、尋常では野郎どもが嫌がる姫華にしつこくハラスメントを企てたことになる。俺らを疑ったことは何にも触れずじまいで。「ご協力ありがとうございます」「あの者らには厳重注意しましたので」と二人揃って、銭湯を出て行った。
ま、公務を全うしただけで、疑うのが商売っていうことなのだろお……!
と俺たちは、すっかり暗くなったスーパーな銭湯パラディアンの駐車場を出て……軽バンのガスリンを給油するために、今では当たり前のセルフスタンドに寄って。そこから道なりの推定十五キロメートル弱の帰路についている……。が、このバンにナビは無く……俺の脳裏のマップ上でも描いている。
「くそ。スタンドのタイムセールが、わやだ」と、左耳のインカムをオンにする俺。
「……ごめん、ダディ。アタシが……」
「いいや。あれなら仕方ないぜ。姫華。チョッカイだしやがったのは事実だしな」
「お巡りさん。公務とは言え時間がかかり過ぎだし?」
「両方の意見を聞いて、判断すれば、もっと短時間ですんだはずだがな」
「もっとうまくやるし。今度は。ね、ダディ」
「時間っていう奴だけは、どんなことをしても、取り返せないんだ」
「そういえば、さっきのダサ三人が、やっぱり、あの人と繋がっていたようだし」
「え?」
「駐車場で見かけたでしょ。屯っているところを」
「ああ。なんかしてたな」
「電話していて。探ったら。相手があのオバサンだったし」
「ハッキングか? 内容は?」
「そこまではしていないし。セキュリティに引っかかっては本末転倒だし」
「ああ。まあな」
帰宅途中の軽バンの中で、姫華と話していると。若木妻からゲリラ的仕事依頼がインカム仕様の電話に入る。コール二回で自動的にオンになり……。
「明日はホリデーとさせていただきたく。若木家は毎週木曜日とさせていただいておりますので、そのときにお願いします。若木家奥様の秋菜様」
「また堅苦しいわね。もお! なにか? 御用でも?」
「え? ああ。まあ」
「支障がない範囲で構わないので。お聞かせ下さる?」
「明日。助手と社員交流会をする予定ですが。住み込み助手とは言え、コミュニケーションは大事ですから」
「……そうね。わかったわ。では、来週ね」
「はい」と言っている間に、電話がプチっと切れた。数秒後インカムが自動オフとなる。
一瞬隣の姫華と見詰め合って……まもなく見えてくる俺んちを探し見る俺。
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