第55話「ガイル兄のエバルート家での挨拶」

#第55話「ガイル兄のエバルート家での挨拶」


 我がヴェルド領の騎士団に魔物討伐の依頼が入った。

 ただし今回はいつもの討伐依頼とは少し違う。なんとカレンさんの領からの依頼。


「討伐依頼が入った……行き先はエルバード男爵家だ」


 ガイル兄の言葉に、私とルカは思わず顔を見合わせた。


「それって、カレンさんの?」

「そう。武人系の名門、エルバード男爵家だ」


 カレンさんの実家――エルバード家は、リヴェル・ハーベル派閥に属する歴戦の名家であり、代々優れた武人を多く輩出している地方の男爵家。カレンさんが王国騎士団に所属していたのも、その背景があってのこと。


「最近は魔物の出現が激しくなっていて、各地の領で苦労しているの。エルバード領も例外じゃないわ」


 カレンさんは少し肩を落としながら言った。


「王国騎士団も手が回らなくてね。私が今、ヴェルド領にいることもあって今回の魔物討伐依頼はこっちに回ってきたのよ」


 そして小さな声で、恥ずかしそうに続けた。


「あと、ちょうどいい機会だから……ガイルとの結婚報告も兼ねようと思ってるの」


 顔を赤らめながら言うカレンさんの姿に、私とルカはニヤニヤが止まらなかった。


「その討伐、もちろん俺も行くよ!」

「私も同行させていただきます」


 そうして私とルカは騎士団と共にエルバード領に向かった。途中途中で魔物を討伐しながら進行。とは言え順調に進んだ。

 

 エルバード家の屋敷に入るとそこにはエルバード男爵夫妻、そして先ほど戦場で出会った長男ゼノスさん、次男のラウルさんがいた。


「ようこそ、我が家へ。私はエルバード家の当主、ベルトラン・エルバード。そしてこちらが妻のマティルダ、長男のゼノス、次男のラウルだ」


 それぞれが丁寧に頭を下げる。騎士の家らしく礼儀正しい所作だった。


 予めカレンさんから聞いていたがベルトランさん、ゼノスさん、ラウルさん共に剣の実力者らしい。その雰囲気を感じる。


 ゼノスさんは25歳、ラウルさんはガイル兄と同じ23歳ですでに2人とも結婚しているとのことだった。奥様方は所用で出ており明日、戻って来るらしい。


 そしてカレンさんが一歩前に出て、落ち着いた声で言った。


「父上、母上。改めてご紹介します。こちらが私の婚約者、ヴェルド子爵家の長男、ガイル・ヴェルドです」


 ガイル兄は背筋を伸ばし、騎士らしい堂々とした口調で言った。


「ガイル・ヴェルド、ヴェルド子爵家の長男にして騎士団の一員です。エルバード家の皆様にこうしてお会いでき、光栄です。今回の魔物討伐、必ず成功させます」


 続けてカレンさんが私を紹介する。


「こちらはガイルの妹、リリアさん。先日の魔術大会15~20歳の部の優勝者で、ヴェルド領の魔法の柱です」


私は緊張しながらも自己紹介。

「リリア・ヴェルドです。魔物討伐、精一杯お手伝いします」


「こちらはガイルの弟、ルカ君。先日の剣術大会5~8歳の部の優勝者で剣の腕も確かだけど、魔法の腕も素晴らしく戦力として申し分ありません」


ルカも少し緊張しながら自己紹介。でも立派だ。さすがだね。

「ルカ・ヴェルドです。騎士団の一員です。よろしくお願いいたします!」

(かなり緊張したけど、なんとか、かっこつけられたよな?)


 紹介が終わると、場に静寂が流れた。エルバード家の屋敷は壁に並ぶ剣と盾の家紋が騎士の誇りを感じさせる。聞いていた通り武人系の名門という感じがする。



 そしてガイル兄が一歩前に出て、真剣な表情で言った。結婚の挨拶だ。


「この場を借りて、お願いがございます。私はカレンを愛しています。ヴェルド子爵家の長男として、彼女とその家族を守ることを誓います。どうか、結婚をお許しいただけないでしょうか」


 するとベルトランさんの顔が一瞬険しくなった。どうしたのか?


「ヴェルド子爵家の長男、ガイル殿。貴殿の名声は耳にしている。だが、今回の魔物討伐はカレンが目的か? 領民や王国のためではないのか?領民や王国よりも女が大事なのか?そんなよこしまな心では、我が娘はやらん!」


(うわ、厳しい言葉だな。ガイル兄は大丈夫かな?)


 でもガイル兄は落ち着いて、まっすぐにベルトランさんを見返した。


「はい。確かにカレンが目的です。よこしまな心がないと言えば嘘になります」


「ですが、私はカレンを誰よりも大切にしたい。その気持ちは誰にも負けません。カレンの家族もこの領地も命をかけて守ります。一番大切な人、そして家族を守れぬ者に王国民を守る資格はないと信じています」


 カレンさんが頬を赤らめている。やるなガイル兄。そしてカレンさんも続いた。


「父上、ガイルは私の誇りです。私も彼と共に、領民そして王国民を守るつもりです」


 沈黙の後、ベルトランさんが破顔した。

「ほう、カレン、実直な良い男を見つけたな。ガイル殿、貴殿のまっすぐな心に、俺も惚れたぞ。我が家の娘の伴侶として申し分ない」


「父上、惚れたって何よ!? 私が先に惚れてるんですから!」とカレンさんは抗議する。


「おいおい、早くも惚れ負けか?」


 その言葉に緊張が解けた。どっと笑いが起きる。


「もう、父上ったら!」 とカレンさんはベルトランさんの肩をポカスカ叩いた。



 続いてマティルダ夫人が優しく微笑んだ。

「ガイル殿、カレンをどうぞよろしくお願いします。エルバード家としても、ヴェルド家との絆を大切にしたいと思っております」


「ガイル殿、私からもお願いします。かなり強気な妹なので扱いには苦労するかと思いますが宜しくお願いします」と長男のゼノスさん。


「なっ!ゼノス兄さん、強気は余計よ!」とカレンさんが抗議する。


「いや、間違いなく強気だよな。妹のはずなのに姉かと思うぐらいだよ。ガイル殿、

私からもお願いします」次男のラウルさんだ。


「もう、ラウル兄さんまで!」とカレンさん。


 再び、どっと笑いが起こった。

 こうして、ガイル兄はエルバード家から祝福を受けた。


 私とルカと顔を見合わせてお互いに頷いたのだった。


(少しひやひやしたけど、ガイル兄はたいしたものだ。恋をすると人は成長するのかもしれないね。私はそんなみんなの笑顔を守っていきたいな)



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 2025年8月3日、この55話で一旦完結とします。

 ただし本編でリリア姉の魔法使いとしての仕事や他の登場人物の恋愛事情などに進展があればこちらも更新する予定です(プロット見る限りは、まだまだ更新あると思います)。


 とりあえずは本編の方で物語の続きをお楽しみください(200万PV以上の大作です)。

 また本編のエピソードの中でこちらに追加して欲しい話があれば感想でお知らせください。追加について検討させていただきます。


本編:転生貧乏貴族~魔力微力チート無しからの成り上がり!~(ルカ主人公)

https://kakuyomu.jp/works/16818622174444390930

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凄腕魔法使いは15歳年下の弟に恋をした? まめたろう @tmsnet

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