第54話「ガイル兄のプロポーズ」
#第54話「ガイル兄のプロポーズ」
ガイル兄とカレンさんの仲は、誰が見てもいい感じ。私を含めた家族のみんなもカレンさんはほぼ家族同然だと思っていると思う。
けれど、ルカによるとガイル兄はまだプロポーズしていないらしい。
ということでいつものように作戦タイムとなった。ルカ、エマ、リナと私で密談を開始。
これがとても楽しい。私は男に興味がない。だから自分自身の恋愛には興味はないけど……どうやら他人の恋愛には興味津々らしい。
「ガイル兄に勇気を出させるには?」
「やっぱり2人きりになれるチャンスを作るのが一番ね」
「あとは背中を押してあげることよ!」
みんなで意見を出し合う。
そして、ルカにガイル兄にそれとなく話しかけるように伝えた。ルカは頭がいいのでいつも上手に伝えてくれる。
「ガイル兄、まだプロポーズしていないの?そろそろプロポーズした方がいいんじゃない?前にも言ったけどカレンさんはいつ王都に戻ってしまうか分からないよ。早いうちに、ちゃんとプロポーズしておくべきじゃない?」
そんなルカの言葉に、ガイル兄は真剣な顔で頷いている。
「……そうだな。ルカの言う通りだ。何度かプロポーズしようと思ったけど勇気が出なかった。でもいつ帰るか分からないよな。今がチャンスなんだからプロポーズするよ!」
そしてルカはガイル兄に小さな箱を差し出した。
「これ、プロポーズの時に渡すといいよ。お揃いの指輪。カイ兄に頼んで作ってもらったんだ」
銀色にきらめく対の指輪は、シンプルだけどどこか温かみがある。
「騎士団は危険な仕事だから、これを“自分だと思って身に付けて欲しい”って言って渡せば、気持ちも伝わるはずだよ」
この指輪を渡すという提案はもともとルカのもの。聞いた時にはびっくりした。とても素敵なプロポーズになりそう。
(そして私は早速ルカとをカイに発注。プロポーズはないけど……これでルカといつも一緒だね)
……いよいよ作戦決行となった。
ガイル兄とカレンさんが2人きりになれる状況はあまりないのよね。そこで騎士団の協力を取り付け、討伐中に2人きりになれる状況を作って欲しいと依頼。私とルカがその様子を見守ることにした。
なかなかうまくいかなかったが数回のチャンスの末、ついに決定的な瞬間が訪れた。
魔物討伐の最中、「こちらは2人に任せます」と不自然なタイミングで団員たちが去っていく。やや近くで見ていた私達もその大根役者ぶりにはひやひやしたがうまくいったように見える。
残されたガイル兄とカレンさん。2人共に強いので付近の魔物はすぐに討伐され、そして2人は自然と向き合っていた。
「これで討伐完了だな」とガイル兄
「そうだね。今日もこれで終了かな」とカレンさん
少しの間向き合っていた2人。そしてガイル兄は意を決したようだ。そっと指輪を取り出してカレンさんを見つめる。
「カレンさん、こんなところで言うのはおかしいかもしれないが……俺と結婚して欲しい。そしてこれを受け取って欲しい。この2つのうち1つをいつも身に付けて欲しい。もう1つを俺が付ける。そうすれば俺たちはいつも一緒だ。……もう一度言う、俺と結婚して欲しい」
カレンさんは少し驚いた顔をした後、柔らかく微笑んだ。
「……ありがとう、嬉しい。これずっと身に付ける。あなたもお願いね」
そうして、2人は指輪を交換した。
影で見ていた私とルカはその様子を見てガッツポーズ。
もちろんすぐにエマ姉、リナ姉にも報告し、作戦の成功を分かち合ったよ。
――そしてその夜。
夕食後、家族がそろったタイミングで、ルカがわざとらしく口にする。
「ねぇ、ガイル兄とカレンさんって同じ指輪してるよね?なんで?」
ガイル兄は一瞬戸惑ったが、カレンさんの方を見ると、彼女は小さくうなずいた。
「……実は今日、カレンさんにプロポーズした。そして……OKをもらったんだ」
「まぁ! おめでとう!」と母さんが喜び、父さんも深くうなずいた。この2人の様子を見るとすでに2人から話は済ませてあったようだ。
「私たちはもちろん賛成よ」「おめでとうガイル兄」とみんな次々に声をあげる。
そして父さんは続けた。
「ガイルとマルク、そして私たちで話し合って、マルクが家を継ぐことで合意しているんだ。だからガイルにはバルド団長と共に騎士団を任せたい。そして将来的には騎士団の団長を任せたい。カレンさんもそれでいいかな」
「はい。話はガイルから聞いています。それでお願いします」
そうして家族全員で2人を祝福し、ガイル兄のプロポーズ大作戦は見事に大成功となった。
幸せそうな2人。
私にはそういった未来はないとは思うけど……こうやって家族の幸せそうな顔を見ると私も幸せな気分になる。
私はこの笑顔を守る。これでいいと思う。
ただやっぱり……ルカが誰かと一緒になるのは心からの祝福はできそうにない。ルカ、それだけはごめんね。
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