第35話「王都への道と聖女との出会い」

#第35話「王都への道と聖女との出会い」


王都へ向かう旅が始まった。


留守を任せたマルク、テオ、カイ、エマたちに見送られ、私たちは馬車に乗り込み、長い道のりを進み始めた。


今回の王都への旅はルカ、ガイル、父さん、母さんそして私と家族は5人。そしてバルド団長を含む護衛の騎士団10人が同行する。


道中はおおよそ一週間。途中で何度か宿を取り、野営も挟みつつ進む。



旅は考えていたよりも平穏とはいかなかった。何度か魔物に遭遇した。騎士団がその魔物を討伐していく。ルカも魔物討伐に参加したがり、時には私たちも前に出て討伐した。


私達の領では魔物討伐が進み、一般の道で魔物が出てくることは少なくなったがこの辺りの領ではまだ普通に出てくるようだ。


国中で魔物の被害が出ているとは聞いていたがこれほど多いとは。この辺りは派閥が違うので簡単ではないとは思うが我が騎士団が遠征して討伐することも検討するべきだろう。このままでは被害が大きくなってしまう。


もちろん、討伐の戦闘に立っているバルド団長や父さん、母さんもこの状況を見ているので同じ考えだろう。私が言うまでもない話だ。



そうして私達が魔物を討伐すると他領の人々が凄く感謝してくれた。これは嬉しいことだ。


交戦中の騎士団たちを助けた時、「リリア様、ありがとうございます!」と深々と頭を下げられた。私の名前がこの辺りにも知れ渡っていることは嬉しいがやはり様付けは辞めて欲しい。ルカが「みんな、リリア様って呼んでいる。リリア姉凄い!」と目を輝かせているがさすがに照れる。



そして王都まであと少し、という六日目のことだった。斥候の叫びが響いた。


「前方の馬車が魔物に襲われています!」


その言葉に、私たちは即座に現場へ急行した。特にルカが早い。私と共に身体強化を使って進んでいく。


すると、そこには高級そうな馬車と、その周囲を取り囲む黒毛の猿型魔物の群れがいた。あれはシャドーモンキーか?単体では強くはないが統率された集団で動くのでやっかいな魔物だ。


我が領ではあまり出ない魔物だが、うちの騎士団は大丈夫か?いや、そんなことを考えている場合でもないな。


「先の馬車に聖女様が乗っています!どうか助けてください!」


叫ぶ騎士の声に、私はそちらの馬車の方を向いた。確かに向こうにも馬車がありシャドーモンキーが襲っているように見える。


そちらにすぐに移動する必要があると思った――が、私よりも早く、ルカがすでに駆け出していた。


「ああ、もう!」

ルカの単独行動を叱りつけたい気持ちもあるがそこに聖女様がいるならば急行する必要があるのも事実。まずはルカを後を追った。


現場へ到着するとすぐに魔法を撃つルカ。遠目で見ても分かる。やはりルカの魔法コントロールは凄い。しかも複数の魔法を同時に操っている。その魔法同時制御は明らかに私よりも上だ。


シャドーモンキーは慎重に動く相手だがルカの魔法に相性が良い相手とも言える。ルカの魔法を慎重に待っていたらすぐに餌食になる。


シャドーモンキーはあっという間に殲滅されていった。そうしてルカは私が出る前に解決してしまったのだ。本当に強い。すでに魔法使いとして私と同等かそれ以上だ。そこら辺の魔法使いをはるかに凌駕している。



私が到着するとすでに魔物の死骸が散乱している状況で残りはいない。ルカが1人でこれだけの群れを完全に討伐したわけだ、本当に恐れ入る。


そして馬車の前には呆然とした女性騎士と、その後ろには聖女と思われる小さな少女がいた。


女性騎士は状況を把握できてない様子。私達2人に気が付くと、ルカではなく私に声をかけてきた。


「……助かりました、リリア様!」


「いや、今回の討伐は……」


と、言いかけた私の横で、ルカがそっと首を振った。――ルカが討伐したのだ。だが事情を知らない騎士たちは私が救ったと思い込んでいる。


そしてルカの魔法の威力が上がったのはは2人の秘密にしている。ここは私が討伐したことにするべきだろう。ルカの成果を大きく喧伝したい気持ちだが隠す必要がある。複雑な心境でもあるが仕方がない。


それから数時間後――私たちは“聖女様を救った騎士団”として大歓迎を受けることとなった。

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