6章「国からの呼び出しと魔術大会への出場」
第34話「突然の王都召集と魔術大会」
#第34話「突然の王都召集と魔術大会」
夕食後の食卓は、珍しく静まり返っていた。
父さんが滅多に見せない真剣な顔で、私たち家族を見渡している。
「ルカ、リリア、ガイル……少し大事な話がある。みんなも聞いてくれ。」
その一言で、空気が張り詰めた。
隣のルカも少し緊張しているようだ。
私も背筋を伸ばして、父さんの言葉を待った。
「実は、王都セレスティアから正式な呼び出しの連絡があった。最近のヴェルド領の発展が、国の耳にも入っているらしい。貴族評議会で現状報告をして欲しいとのことだ」
「王都から……?」
隣でガイル兄も息を呑んでいるのがわかった。
王都。私や家族にとっても遠い存在だ。こんな田舎とは全く関係ないと思っていた。悪くいえば王都もうちの領のような田舎は本来はどうでもいいはず。その王都からの呼び出しを受けたということは喜ばしいことだ。まさかこんな形で聞くことになるとは。
父さんは続けた。
「それと、国から大会の推薦状が届いている――」
推薦状?
大会って何の?
頭が追いつかないまま、父さんは当たり前のように告げた。
「王都では、剣術大会と魔術大会が開かれる。その推薦状も一緒に届いていた。これは断れないから出場してもらう。」
「剣術大会と……魔術大会……?」
魔術大会。
その言葉を聞いた瞬間、胸がどくんと跳ねた。
「ルカ、お前は剣術大会。5歳から8歳の部門だ。」
「え、ええっ!?俺、魔法の方が得意なんだけど?」
弟の戸惑う声に、思わず笑いそうになるのを堪えた。
確かにルカは魔法の方が圧倒的に得意だ。それに剣術大会はまだ早い気がするけれど……国が決めたなら仕方ない。
父さんは少し口元を緩めてから、こちらを向いた。
「リリアは魔術大会に出場する。15歳から20歳の部門だ。お前は上位入賞をかなり期待されているぞ。」
「……!」
頭が真っ白になった。
魔術大会。
地方から勝ち上がった強者が集まる、魔法使いにとっては夢の舞台。
それに私が――
「……わかりました。私、頑張ってきます。」
言葉にした瞬間、背中に冷たいものが走った。
私が、国の魔術大会に……。
かつて“魔力は中の下”と笑われ、泣きながら魔法を磨き続けた私が――
あの舞台に立つことになるなんて。夢にも思わなかった舞台だ。
「ガイルも21歳以上の成年の部で剣術大会に出場する予定だ。」
「任せてください。ルカの手本になります。それにしても国の大会に出られるとか、初めての経験だな。」
ガイル兄の拳が震えているのがわかった。
私と同じ気持ちかもしれない。
緊張と、どこか誇らしい気持ちで胸がいっぱいになる。嬉しい。少しでも良い成績を収めたい。
「だから今回は、私、エリザ、ガイル、リリア、そしてルカの5人で王都に行く。留守はマルク、テオ、カイ、エマに任せる。」
「はいっ!」
マルク兄たちの返事も頼もしい。
思えば、私は初めて家族と一緒に領を離れるかもしれない。領を離れる時はいつも1人だった。
「それと、リナからも手紙が届いた。」
「リナ……?」
「ルカは知らないか。リナは王都近くで商業を学んでいる。お前の8歳上の姉だ。ちょうどいい機会だから一緒に戻ってくる段取りにしてある。」
私の妹――リナに久しぶりに会えるのは楽しみだ。大きくなっていることだろう。商業地に行っているというから頼もしい。
でも……それ以上に、頭の中は魔術大会でいっぱいだ。
(魔術大会……私が、あの場所に……!)
魔法使いにとって夢の舞台。その大会にでるために地方予選から頑張っている人は多数。そしてその地方大会すら通らず諦めていった人がどれだけいたことか。
それを国が推薦してくれるなんて――
ちょっとずるかもしれないが地方大会が免除されるのはありがたい。近くの領だけでなく、国からも魔法使いとして認められたのも嬉しい。
隣のルカが不安そうに私を見上げている。
「リリア姉、大丈夫?」
「……うん。大丈夫。ルカも頑張ろうね。」
思わず弟の手を握った。
不安はある。
でも、それ以上に胸が高鳴っている。私もルカの手本になるようにしっかりしないとね。私が不安そうにしていたらルカも不安になってしまうだろう。
(私が、私の魔法で――国に認められたんだ。)
一歩ずつ進んできたこの道を、もう一度確かめるために。
私は魔術大会の舞台に立つことを決意した。
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