第33話「好きの形」

#第33話「好きの形」


魔物討伐の仕事を終えた夕方、私の部屋をノックする音がした。


「リリアさん、今いいですか?」


それはユリアだった。

私の騎士団の同僚であり、同じ女性としても不思議に縁のある子だ。


彼女は男性が苦手で、女性が好きだと勇気を出して私にだけ話してくれた。私が男嫌いということで共通点があると思ったようだった。


彼女も私も世間一般の普通の恋愛ができないという意味では同じだ。


いつもより少し頬が赤いユリアを見て、私は何かあったのだろうと察した。


「どうしたの?何かあったのか?」


「えっと、私……告白してきました。」


声が小さくて、でも隠しきれない嬉しさが滲んでいた。


「そうか……うまくいったの?」


ユリアはこくんと頷いた。


「そう……良かったじゃない!」


思わず椅子を立って、ユリアの手をぎゅっと握った。

彼女は小さく笑って、それでも少しだけ寂しそうに視線を落とした。


「彼女への告白は……うまくいったんですけど。でも……やっぱり他に言える人がいなくて。家族にも友達にも言えないし……リリアさんだけなんです、私、こうやって話せるの」


私は少しだけ胸が痛くなった。

ユリアの言葉の重さが、どこか昔の自分と重なって見えた。

誰にも相談も報告もできない。そういった意味では私も同じだ。



「私には、いつでも話していいからね。私はユリアの味方だから。」


私がそう言うと、ユリアは少し泣きそうな顔で笑った。


ユリアを見送った後、机に向かいながら考えていた。


(ユリアは、自分の“好き”を伝えられたんだな……それでうまくいったんだ)


良かったと思う反面、心の奥に小さな棘が刺さる。


(私の場合は……どうなのだろう。)


私は男には全く興味がない。今後どう変わるかは分からないけど現時点では全く興味がわかない。


貧乏だった頃、何もしてくれなかった人たちが、私が“魔法使いのエース”と呼ばれるようになった途端に声をかけてくる。


そんな人たちに心を動かされるわけがない。しかも私よりも魔法の実力が下の人ばかり。どこに惹かれる要素があるというのだ?私には男は不要だ。


でも、じゃあ女性が好きかと言えばそうでもない。

ユリアのように、女性にときめくこともない。


私が好きなのは――

弟のルカだけだ。


命を救ってくれたのも、苦しい時に黙って話を聞いてくれたのも、泣きたい夜にそばにいてくれたのも、全部ルカだ。私はルカさえいればいい


(……でも。)


私はユリアのように告白なんてできない。

おかしいし、そもそも“そういう好き”なのかどうかも分からない。


「好き」だとは毎日のように言っている。

でもそれは家族に言う「好き」とは違う。


かといって、ユリアのように恋人を求める気持ちとも違う。

もしかしたら……ルカがもう少し大きくなったら異性として恋人を求める好きに変わるのだろうか?


現時点では何も分からない。それにルカとは15歳も年齢が違う。歳が離れすぎていて、いくら異性として好きになったとしても現実的ではない。


はぁ、私の好きは、一体どこに置けばいいのだろう。考え出すと、胸がざわざわする。


私は――いずれはルカから離れなければならないのだろう。


その時に私はどうするのだろう?諦められるのかな?でも――


「……やめた」


考えても答えは出ない。これまでも考えたけどずっとそうだった。何も出てこなかった。


今は、ルカが近くにいる。

それで十分だ。


未来のことは、いつか考えればいい。申し訳ないが未来の自分に託すしかない。


そして今はこの“好き”の形を、誰に笑われても大切にしていたい。


私の幸せは――

ルカと一緒に生きている今、この時間だから。

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