第27話「魔法使いのエース」

#第27話「魔法使いのエース」


 気づけば、私も20歳になった。弟のルカも、もう5歳だ。

 相変わらず私の前を歩いていく小さな背中は眩しくて、少しだけ切なくなるが負けるわけにはいかない。


 私は今日も他領の魔物討伐に出た。


 最近では依頼が更に増えた。みんなの期待に応えるためにも、そして我がヴェルド頑のためにも頑張ってそれらの依頼をこなしている。


 いつもの討伐の進行中、ふと空気の流れに違和感を覚えた。


(……右前方、いる。)


 私はまずは周りの騎士団にも注意を促した。間違いない。魔物がいる。


 そして軽く魔法を撃った……つもりだった。



……何かがおかしい。


 私の魔法が以前と違っている。

 ここ2年ぐらいルカの紙玉の特訓で精度が上がったのは分かっている。


 でも現実にはそれだけじゃなかった。ここ最近は威力も増してきたのだ。


 1発の魔法で軽く数を減らすつもりがほぼ殲滅してしまった。


 これならばあとは騎士団に任せていいだろう。私は他に魔物がいないか注意しながら指示を出していった。


 思えば数年前は一発撃つだけでも緊張していたのに。しかも1匹仕留めるのがやっとだっのに。

 今では一撃で数匹を仕留めるのも珍しくはない。しかも周りを見て指示を出す余裕もある。何だか夢みたいだ。



 今や小型の魔物なら多少数が増えても、もう脅威とは言えない。


 そうして……今日も問題なく討伐が終った。



 討伐後、少し考え事をしていると後輩のフローラから声をかけられた。


「リリア先輩、どうしました?」


「ああ、ちょっと今日の魔物討伐について考えていたんだ」


「さすがリリア先輩……魔物討伐が終わった後でもいろいろと考えているんですね。でも何も問題なかったと思いますけど」


「そうかな。ちょっと私の判断が遅かったような気がしてね」



「えぇー、あのスピードで判断が遅いってほんとあり得ないですよ。リリア先輩は理想が高いですね。ほんと適わないです」


「……そう言えば、最近はリリア先輩。魔法使いのエースと呼ばれていますね。エースってのは何ですか?」



 何て答えようか迷っていたらエリシア先輩が横から口を出してくれた。


「魔法使いのエースというのはね。国でもトップクラスの魔法使いの称号のようなものよ。凄いところになるとシルヴィがいるでしょ?彼女は大魔法使いになると言われているけど魔法使いのエースはその次ぐらいね」


「ということはもう魔法使いではほとんど上がいないということですよね!先輩凄すぎます!」


「そうよ。でも前にも言ったけどリリアは最初は魔法使いとしてギリギリ通用するレベルと言われていたのよ。努力することで這い上がってきたの。あなたも頑張りなさいよ。」



 そうだったなと私は昔を思い出した。まだ10歳だった頃、初めて他領の討伐に連れていかれた時のことを思い出す。

「お前はぎりぎり戦力になるかならないかだ」と言われて泣いたあの日。


 それから懸命に頑張ったけど何も変わらず、13歳の頃にはエリシア先輩らいろいろな人に教えを請うた。そしてできることは何でもやって成長に繋げた。


 そしてようやく15歳になってようやく人並みだと言われ、19歳で班長クラスだと認められた。


 そして今では国でも指折りの魔法使い――「エース」と呼ばれるようになった。



 本当に笑ってしまう。

 落ち込んでばかりだったあの頃の私に教えてあげたい。


(でも、まだまだ――私の力は領の役に立っているとは言えない。もっと頑張って何とかして領に貢献しないと駄目だ)


 だから、ここで止まるわけにはいかない。



 討伐を終えて帰ってくると、今度は別の面倒が待っていた。

 ここ数年は討伐依頼だけでなく、いろいろな手紙が来るようになったらしい。


 今日も母さんから縁談の話を聞かされた。


 でも私は全て興味がない、断って欲しいと伝えている。少なくとも私より凄い魔法使いでないと結婚するつもりはない。



 ひどい話だ。

 領が苦しかった時、苦しんでいたときは誰も私達を助けようとしなかったくせに。

 ヴェルド領が潰れかけていた時、誰も声をかけてくれなかったくせに。


 それが、ヴェルド領の状況が良くなって私が“魔法使いのエース”と呼ばれるようになってから手のひらを返したように連絡してくる人間が多くなった。


 何がよい縁談だ。馬鹿にするのもいい加減にしてほしい。

 だから私は全部、目も通さずに断っている。


「私以上の魔法の実力がない者は相手にしない」


 ――私はそう喧伝している。

 それを聞いたら誰もが口を閉ざすしかないだろう。


 私には――

 魔法がある。

 そして、ルカがいる。


 私が大変だった時に助けてくれたのはルカだ。魔法の実力が上がったのもルカのおかげだ。


 私はルカと魔法以外には興味などない。


 私を一番強くしてくれたのは、あの小さな弟だ。

 だから私はこれからも成長し続ける。そして領に貢献しルカにも認めてもらうのだ。


 私には、まだまだやることがあるはずだ。

 更に模索し成長していこう。そうしないと成長著しいルカに置いて行かれてしまう。

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