第28話「あり得ない敗北」

#第28話「あり得ない敗北」


「さすがリリア先輩、今日の模擬戦も完璧ですね!」


 後輩のフローラが目を輝かせて私を見上げている。

 私は小さく笑った。


 私は魔法使いとしての努力を続け、気づけば私は“魔法使いのエース”と呼ばれるようになった。


 国でもトップクラスの魔法使いとも言われている。まだまだ領への貢献は足りないが、ようやく1人前になったと言ってもいいと思っている。



 そして何より――


「リリア姉、すごいよ!俺も成長しているはずなのに全然届かない!全然勝てないや!」


 いつものように模擬戦で戦うルカが笑顔でそう言ってくれるのがすごく嬉しい。ルカも身体強化を使えるようになった。わずか5歳で凄いことだ。


 でも、今のところはその成長著しいルカにも模擬戦で負けたことはない。

 私とルカには大きく魔力に差があるのだ。ルカは1歳児に魔力が微小と測定された。魔力の大きさは基本的に変わらないので今もルカの魔力は微小と思われる。本来なら魔法使いとは言えないレベル。


 一方で私は何故か、理由は分からないが魔力が大きく増えた。いくらルカが魔法のセンスに優れていると言っても私の方が一方的に成長しているので負ける要素はどんどん無くなっていくはず。


……そう思っていた。



 けれど、つい先日のことだった。その日もルカとの模擬戦をしていた。


「痛いっ!」


 私の足に痛みが走った。そして私はつい蹲った。

 間違いない。ルカは私の身体強化を破る魔法を放ったのだ。


 悔しいが私はルカに負けた。


 でもこれはおかしい。

 これまでも私はルカの魔法攻撃を受けることは何度もあった。でも私の方が魔力が圧倒的に多いので1度ぐらいの攻撃を受けても魔法を通されることはなかった。


 何度か連続して同じ場所に攻撃を受けない限りは大丈夫。魔法を受けたと感じたらすぐに動いて体勢を変えれば問題なかった。


 しかも私の魔力が上がっているのでその差が広がっている。負ける要素は全くないと言っていいはずなのだ。


 でも現実にはルカの魔法が私の身体強化を突き抜けた。おそらくは何度も連続で攻撃を受けたのだろう。魔力に大きな差があると思っていたので油断をしていたこともあるが……初めてルカに負けた。



 私は魔法使いのセンスではルカには負けている。だから懸命に頑張って成長して魔法使いのエースと呼ばれるほどになった。魔法の総合力だけは唯一ルカにも負けないと思っていたのに……


 1回だけとは言えルカに負けた。悔しい気持ちと嬉しい気持ちが混じって複雑だ。



 私以上の魔法使いの男なんていない。だから私と結婚できる相手はルカしかいないという気持ちもよぎった。


「結婚?」


 頭の中でおかしな言葉がこぼれたと自覚した。

 いや、何を考えているのだ。私たちは年の離れた姉弟だ。


 それに今、肝心なところはそこではない。急激に成長した私にルカは勝ったんだ。どう考えてもおかしい。


 それは何故だ?今、何が起きた?



 今一度、冷静に考えてみよう。

 私の魔法の威力と精度は間違いなく過去最高のはずだ。

 客観的に見ても私の魔物討伐数は上がり、魔法使いのエースとまで呼ばれているのでそれは間違いないだろう。


 これだけ成長した私がルカに負ける要素なんてないはずなのだ。



 ……もしルカに私が負ける可能性があるとしたら、ルカの魔力が――


 これは今すぐに確かめる必要がある。


 私はすぐにルカを魔物討伐に連れ出した。

 ルカの秘密を。いや、これは私の急成長の秘密でもあるかもしれない。


 私の予想が間違っていなければ私だけでなくルカの魔力が大きく上がっている。


 私達2人を元にして魔法の常識が大きく変わるかもしれない。すぐに確かめないと!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る