出逢い
気持ちよく目が覚めた。私はベッドから起き上がり、開放感のある大きな窓の前に立った。Neon tokyo郡の朝は初めてみる。夜は暗闇に包まれ、点在するビル群の灯りしか見えなかったけど、朝は明るいから見えなかった部分がよく見えて、新たな発見があり、とても面白い。ルキたちが住むのは41階だからか、辺りがひらけていて観察するのには最適。例えば、1stはルキの言う通り「高層住宅ビル」という建物が多く建ち並び、ルキ曰く全階数ワンフロアになっていて、全室にプールが付いているんだそう。
「今の時代では当たり前だし、逆にプール付きじゃない物件の方が珍しいよ。ちなみに低層階は中にプール、高層階は外にプールが付いてるビルが多いかな」
とルキは言っていた。
「なんかやっぱり未来はすごいな、何もかも違う笑笑」
私は、そんなことを1人呟きながら部屋を出て、リビングに向かった。
…が
「誰もいない…」
私はリビングを出て、室内を小走りで周った。そして近くにあった部屋のドアを開けると、そこにはルキが居た。
「おはよう沙羅、よく眠れた?」
ルキは私に気づくと、挨拶をした。私も「おはよう」と言いながら、近くのソファに座った。
「あれ?シノさんとエースは?」
「2人はまだ寝てるよ」
「そっか…」
「にしても、そんなに僕に会いたかったのかな?」
ルキは私を満面な笑みで見つめた。私は多少寝惚けていた為、今の状況理解するのに数分掛かった。
「えっ!?ここルキの部屋なの?」
「そうだよ、だから沙羅が来てびっくりしたよ」
私は驚きと恥ずかしさを感じ、少し居心地が悪くなった。
「まぁ、僕は大歓迎だよ」
そう言って、ルキは済ました顔でウィンクをした。
―何笑ってんのよ
私は不貞腐れながら、とりあえずルキの部屋を見渡した。とても明るくて白を基調とした、シンプルな造りとなっている。昨日の部屋と同様2階へ続く階段があり、大きな窓からは、1stの綺麗な景色が一望出来る。
「僕の部屋は1st、エースの部屋は2ndでシノの部屋は3rdがよく見えるんだ」
「へぇ〜、じゃあ昨日のプールのあった部屋は、エースの部屋ってこと?」
「そうだよ。もうエースと仲良くなったんだね」
「うん!昨日夜少し話して…」
そっか。とルキは呟き、片手に持つコーヒーを飲んだ。
「そろそろ2人が起きてくる時間だから、僕たちも行こう」
「どこに?」
「リビングだよ?」
私達は部屋を後にし、リビングへと向かった。リビングはとても広く、天井も高い。天井にはいかにも高級そうなシャンデリアが飾られていて、ザ・リッチな部屋の雰囲気だ。(ちょっと語彙力足りないけど…)
リビングに入ると、エースとシノさんは先に着いていた。
「おはよう、2人とも」
「おはよう、ルキとサラ…」
―エース、めちゃくちゃ眠そう笑笑
エースは重い瞼を擦りながら、何とか眠気を堪えている。
「もう朝食頼んどいたから」
「ありがとう、シノ」
そう言われると、シノさんは微笑んだ。
それから数分後、2台のドローンが何処からとやって来て受け取った。ルキはハニートースト、エースはメープルシロップがたっぷりと掛かったホットケーキ、シノさんはコーヒーのみで、私はクラムチャウダーを貰った。
ルキ曰く、朝食はいつもシノさんのセレクトだそう。
朝ごはんを食べ終えると、各自で支度を終わらせて、数時間後またリビングに集合した。私は昨日と同じく制服を着た。ルキはフォーマルだけど何処かカジュアルさもあるシンプルな服装で、ルキの綺麗な顔を引き立たせている。シノさんは黒のきっちりとしたスーツを可憐に着こなしている。エースは黒のパーカーに、何かポワポワとしたパンツを履いて、首にはヘッドフォンを付けている。
―この時代にもヘッドフォンあるんだ…
「そうだ!沙羅にまだ洋服を買ってなかったね」
「カレンに頼めば、タダで貰えるよ」
―カレン?
「あの、カレンってだれ?」
「カレンは…」
「まぁ、カレンは後のお楽しみということで!」
ルキはシノさんの言葉を遮ると、シノさんは少し不服そうな表情をした。私は少し笑いながら、とりあえず1階へ向かった。
「これからどこに行くの?」
「2ndだよ。僕と沙羅が初めてあった場所だよ」
「電車で行くの?」
「違う、僕の愛車で行くよ」
「やった!ルキのマグナムカッケェんだよなー」
「マグナム?」
「僕の愛車だよ。マグナムは僕の好きなお酒の名前」
数分後ルキが運転する車が出て来た。
「これ…」
「沙羅も見たことがあるの?そう!これは2020年代のトヨタの車だよ。アンティーク者でさ、かなり気に入ってるんだよね」
私は、叔父がよくこの車で運転していたのを思い出した。忙しなく海外に飛び回り、毎日仕事に追われていた父の代わりに送り迎えしてくれたり、買い物の付き添いやおでかけに連れて行ってくれたりと、父のいない寂しかったであろう時間は、叔父のおかげで少なかった。
―おじさん、元気かな?何やってるのかな…
「さぁ!沙羅おいで。僕の隣に座って」
ルキはそういうと、助手席の扉を開けて私に手招きした。私は助手席に座って、シノさんとエースは後部座席に座った。それから私達は2ndへ出発した。
『ネオ民の皆さん!おはようございます!本日もNeon tokyo群は美しい日となっております。日付は2070年6月19日、時刻は午前10時。午後からは温度が30℃を超えると予測されておりますので、外出の際は日焼け止めと日傘、もしくはサングラスをお忘れずに。勿論ベランダで日光浴をする方も無理せず、短時間か又はプールに入って体温調節を行なうなど対策をしてください。Sky lineは今のところスムーズに運転しています。Center、Coner、Bay、三本の電車に大きな遅れは出ておりません。いつも通り2ndのCentral Park tower前は混雑しております。なので、ここで今日の私のセレクト!お気に入りのOld japanesepopをお聴き下さい』
とルキの車のラジオから、お姉さんの明るく朝にピッタリな声が聞こえる。
「Air high?」
「そう!今僕の世代では大ブームだよ」
私は助手席に座りながら、後ろに座るエースとAir highについて話している。
「これってどういう物?」
「これはね…」
エースはそう言って、ポケットから手のひらサイズの鍵のような物を出した。
「ここじゃできないけど、」
エースが言うには、鍵のような物のライトの部分を平らな場所にかざすと、1人用のダンスボードが出てくるらしい。
―一周回って、魔法みたい…
「凄い!けど、本当に出来るの?」
「もちろん!後で一緒にやろう!」
「ありがとう!!楽しみにしてるね!」
そう言うとエースは、ニコリと微笑んだ。
それから1時間後私達4人は2ndに到着し、目的地に向かって歩いている。昼の2ndは夜とは違い、違う意味で賑やかさがあり、とても面白い。上では2ndcenterラインが走り、AIロボットが当たり前のように街中を歩いている。
「さぁ着いたよー」
数分後、私達は大きな家の前に到着した。そこは私がNeon tokyo郡に来る前、父と2人である映画を観に行った時に作中に登場してきた家にそっくりだ。周りが草木に囲まれている為、中の様子は分からない。
「凄い…」
私は目を見張った。
「ここはcorner areaで、2ndでもスマートホームが建ち並ぶ少数エリアなんだ!」
確かに私が今まで見てきた2ndは高層ビルが多く建ち並んでいて、この時代の一軒家は初めて見た。あっ今はNeon tokyo群では、タワーマンション→高層住宅ビル、一軒家→スマートホームという呼ばれてるみたい。
「じゃあ行くか」
私達はルキに続いて、敷地内に入った。敷地内には芝刈りを行うロボット、お花に水をやるロボット、そして伸びに伸びた草木を刈るロボットが働いている。メインゲートを潜ると、1人のメイドロボットが私達を向かい入れた。
「黒部様、お待ちしておりました」
ロボットは私たちの荷物を持ち、奥へと消えた。
「今から誰に会うの?」
私は小さな声でシノさんに質問した。
「カレンだよ、さっき俺が言おうとした女性」
「あぁ、あの人…」
どん人なんだろう、カレンさんって。でもこんな豪邸に住んでるって事はそれぐらい稼いでるんだろうな。私は昨日エースに聞いた、地区について思い出していた。
「待ってたわよ、ルキたち!!」
すると1人の女性の声が聞こえた。
―カレンさん??
私達は声がする部屋に入ると、1人の女性が近づいてきた。ソファにはもう1人女性がいる。
「カレン久しぶり、アリスも居たのか」
「そう、今デートしてたの!」
カレンさんはそう言って、エースやシノさんに挨拶を交わした。そして私の方を見ると、驚いた様子を見せた。
「貴方が沙羅ちゃん?ルキから聞いたわ」
「初めまして、青山沙羅です」
私は丁寧にお辞儀をした。カレンさんは金髪ロングでスタイルが良く、洋服をサラッと着こなしている。
―2023年で言うと、渋谷によく居る辛めのギャルみたいな見た目だな、でも凄く美人。
私は綺麗な人を目の前にして、少し緊張した。
「沙羅ちゃんが着てる洋服珍しいわね、凄い!これデザインに取り入れようかしら」
カレンさんは私が着ているセーラー服に、興味がある様だ。
「アリスさん来ていたんですね」
ルキはアリスさんという女性に近づき、挨拶を交わした。
「アリス、来ているなら連絡ぐらいしてよ」
珍しくシノさんがタメ口で会話をしている。よく見るとシノさんとアリスさんはよく似ている。アリスさんは黒髪ロングで、落ち着いた雰囲気の女性。カレンさんとはまた違う魅力があって、凄く綺麗。アリスさんもまたスタイルが良い。
「ごめんねシノ、カレンさんとの時間邪魔されたくなくて」
「あっ紹介が遅れたわね、沙羅ちゃん。この子は摩耶アリス、私のガールフレンドよ」
「あっ」
「そっか、沙羅ちゃん過去の時代から来たものね」
「えっ?」
「ルキから聞いたわよ!素敵ねぇ、タイムリープだなんて」
「はい…」
―ルキ、私が知らない間にいろんな人にバラしてるじゃん!!
私はルキの方に向き、ルキと目が合うと睨んでやった。ルキは、あっけらかんとした表情をしている。
「私と沙羅ちゃん、何処か似てるね」
突然アリスさんが私に近づき、微笑んだ。
「そうですか?」
「うん!何か妹ができたみたい!私シノと兄妹なんだけど、本当は妹が欲しくて」
「俺で済まなかったね」
シノさんはまた不服そうな表情を見せた。
私は一通り会話が終わると、奥にある大きなベランダに出た。
「凄い!2ndが綺麗に見える!」
「ここは丘の上にあるから、凄いだろ?」
「あんまりここ2ndっぽくないね」
「まぁここは2ndのcenterからかなり離れてるし、Neon tokyo群は高層ビルだけじゃないからね」
エースはそう言いながら、私にコーラを渡してきた。
「またコーラ?」
「もしかして沙羅、コーラ嫌い?」
「ううん、コーラ大好きだよ。ありがとうエース」
するとエースは子犬の様な満面の笑みで、私に抱きついてきた。
「ちょっとエース、、」
「僕お姉ちゃんみたいな人、ずっと欲しくて!あっ勿論ルキ兄もシノも大好きだけど」
「でも私たち同じ年じゃん」
「そうだけど!!」
―何か可愛い笑笑
「まぁ別に良いけど」
私はそう言うとまたエースは満面の笑みを浮かべて、今度は私のほっぺにスリスリしてきた。私は何か言おうとしたが、結局何も言わずに笑って居た。
「それで話ってなに?」
エースと沙羅以外の僕たち4人は、お互いドリンクを飲みながら丸い机を囲む様に座っている。
「そうそう、その話について何だけどね。沙羅ちゃんに是非私のブランドのグローバルアンバサダーになって欲しいの」
「急すぎません?」
カレンさんは、いつも全てにおいて急すぎる。前もビルの所有権全て手放して、cornerに移り住むという話も前日に聞かされたほど。
「でも今アリスがいるだろ」
「私は少しお休みする事にしたの」
「どうして?」
「大した理由じゃないよ、ただ疲れただけ」
アリスさんはさっきから沙羅の方を向いて、何か考えている。
―何を考えているんだ、アリスさんは?昔から、アリスさんは何を考えているのか分からない。
「私さっき沙羅ちゃんを初めて見た時、ビビッと来たの」
「確かに沙羅とアリスさん似てるし、沙羅も綺麗な見た目をしているしね」
今の僕の発言に、シノたちは驚いた表情をした。
「僕何か変なこと言ったかな?」
「いやルキが女の子に綺麗とか言うの初めて聞いたから」
「そうかな?」
「まぁ!そういう事だから、ルキ!沙羅ちゃんに伝えといて」
「自分で話さないの?」
「沙羅ちゃん、ルキには心開いている様に見えるのよね」
と、沙羅の方を向いて呟いた。
「どうしてそう思うんだ?」
「だって沙羅ちゃんの目を見ればすぐ分かるもの、沙羅ちゃんルキを信頼している目をしているわ」
沙羅が僕を信頼している…?まだ1日しか経っていないと言うのに。まぁ昔から僕に近づいてくる女性は、財産・権力・地位しか興味がなく、僕が別れ話をすると被害者ヅラをして、酷く困っていた。でも沙羅は違う。何か僕にとって大切な何かを…。
「ルキ大丈夫?」
「あっうん、ごめんよカレン」
僕は沙羅とエースの方を向いて、2人に近づいた。
「僕Neon tokyo郡が大好きでさ、沙羅にもっと沢山案内してあげたいよ!次何処行きたい?」
「え〜と2ndと1stはもう少し散策してみたいし、3rdも行った事が無いから行ってみたいな!」
「じゃあ僕が案内してあげる!!」
―私たちの時代の男子はどれも魅力が皆無だったから、エースがその時代にいたらさぞかしモテただろうな。
「あっ今ここでAir highやってみる?」
「えっ!?やりたい!!」
エースはポケットから例のキーの様な物を取り出して、ライトの先端部分を平らな床の上にかざした。すると本当にダンスボードが出てきて、エースはその上に乗ると早速曲を選んで踊り出した。
「どうだ沙羅!凄いでしょ?未来のおもちゃは」
「うん!!頭が上がらないよ!!」
―凄い!本当に踊れるんだ。
それから私とエースは交代交代で、長くダンスを楽しんだ。
「2人とも楽しかった?」
ルキが微笑みながら、私たちに近づいて来た。
「凄く楽しかった!!ありがとうエース!」
「楽しかったなら僕も凄い嬉しいよ!いつでも貸してあげるね」
―何て愛らしい子なの…
「沙羅、モデルに興味ない?」
突然、ルキは私の目を見つめながら提案してきた。
「モ、モデル??」
「カレンさん、あぁ見えてRUMORというファッションブランドのデザイナーでさ、アリスの後任として新しくモデルを探してたみたい。難航してたらしいんだけど、今日沙羅を見た瞬間、もう沙羅が良い!!てなったみたい笑」
「RUMOR、、どこかで見た様な…。ていうか、私で良いの?いや、私モデル経験ないし、憧れてはいたけど」
そういうと、ルキは優しく私の頭を撫でた。私は驚いて、ルキを見つめた。ルキの表情は、とても優しかった。
「カレンさん自ら言うなんて珍しいんだ。確かに沙羅自身が決めることだから、ゆっくり決めて良いんだよ?でも、僕もシノもアリスさんも沙羅が良いって」
「えぇ…」
「まぁとりあえず帰ろうか、返事は僕に言って!僕からカレンさんに伝えとくから。さぁ!この後2ndでも散策しよう!」
「賛成!!沙羅が新たなミューズか〜!」
とエースは、もう私がモデルになった様子を思い浮かべているのか何やらニヤついている。
「あっ!沙羅ちゃん!」
私は突然カレンさんに呼ばれ、後ろを振り向いた。カレンさんは何やら洋服を抱え込んでいる。
「あの少しお願いがあるんだけど」
「はい、、」
「これ!私が手がけるブランドの新作なんだけど、是非沙羅ちゃんに着て欲しいの!!」
「えっ?良いんですか?」
「もちろん!!」
私は洋服を受け取って、アリスさんに連れられて別の部屋で着替える事になった。私はクラシカルな黒のパールが付いた上品なタイトワンピとアクセサリー、ベレー帽を被った。
「今の時代は昔流行ったモノが流行ってるの!」
「なるほど…」
「ルキから聞いた?」
「あっはい!聞きました」
「RUMORのコンセプトはね、この服を着た誰もが誰かの噂の的になる、と言う意味が込められてるの。RUMORが出来た当初からずーとアリスがミューズ努めてきてくれたんだけど、もう6年になるし、心機一転ということで新ミューズを沙羅ちゃんにして欲しいの」
カレンさんの眼差しは、本気で真っ直ぐで強かった。
「こんな代役いいんですか?さっき会ったばかりの、しかも過去から来たといういわくつきの私が…」
するとカレンさんは私の手を取り、今度は笑顔でこう言った。
「私は自分の直感を大切にしてるの!だから、私は沙羅ちゃんに新ミューズになって欲しい!今こうやって、私の新作ドレスも着こなしてるし、沙羅ちゃんならほかの候補者、ブランドを愛してくれているファンの人たちも文句ないわ!もっと自分に自信持って!!あなたはとっても素敵よ」
支度が終わり、私とアリスさんは皆んながいるリビングに戻った。
「沙羅ちゃん素敵〜!!すっごく似合ってるわよ!」
「凄く似合ってるよ沙羅」
「可愛い沙羅!!」
ルキもエースもカレンさん、アリスさんも和かに微笑んで、褒めてくれた。
「どうですか?シノさん」
「良いと思う、、」
―あれ?シノさん意外と…
「ごめんね沙羅ちゃん、お兄ちゃん照れ屋なの」
「アリス、無駄なことを言うな!」
そう言ってシノさんは1人先に出てしまった。
「シノのことは気にしないでちょうだい!あっちょっと待ってて」
数分後、カレンさんはバッグを持って来た。コンパクトなサイズ感で、これも凄く上品だ。
「これ私のお下がりなの、沙羅ちゃんは黒がとても似合うわね〜」
「お下がり…良いんですか?こんな素敵なモノ頂いちゃって」
「もちろんよ!」
「ちなみにそのカバン、80万はするよ」
今のルキの発言に、思わずバッグを落としそうになった。
「8、80万円ですか!?」
「そうなのよ〜私こだわりが強くて、どうしても高くなっちゃうのよねー」
「あ、ありがとうございます!大切に使わせて頂きます」
「喜んでくれたなら嬉しいわ〜あっそうだ!帰りromorに寄ってったらどう?」
「あぁ良いかもね」
「ふふ、私の方から言っとくから!」
「じゃあ僕らはそろそろお暇するよ」
カレンさんは私の方に近づくと、私の手を取った。
「返事待ってるからね」
「はい!」
「今日はありがとう、じゃあね沙羅ちゃん。ルキもエースも。お兄ちゃん宜しくね」
「任せて」
「さようなら〜」
私達はカレンさんとアリスさんに別れを告げて、家を後にした。
「通りすがりの人たち、皆んな沙羅を見てるよ!」
「沙羅は時期RUMORのミューズになる女性だからね」
「沙羅顔真っ赤だよ、、大丈夫?」
「えぇ!顔真っ赤?」
「うん!僕がぎゅーしてあげる」
―なぜ?ぎゅー?
「さっきは済まなかった。その、、綺麗だよ。すごく」
私の隣を歩いていたシノさんは、私の方は向かず前を向きながら言った。
「ありがとうシノさん!」
またシノさんはそっぽを向いてしまった。
「シノ、また沙羅と手繋いでくれる?最近地区の人たちが不法で上に来てるらしい」
「あぁ」
そう言ってシノさんは、私の右手を握り締めた。
「あの地区の人たちが上に来てるってどう言う意味?」
「あぁ、地区はこの下、地下にあるんだ。それで最近上に不法侵入して、ネオ民になりすましてるみたいでね」
「地下に人が居るの?」
「そうだよ、まぁ沙羅は考えなくていいことだ。それにあくまでこれは噂だからな」
シノさんはそう言って、優しく微笑んだ。私は微笑み返したが、少し複雑な気持ちになった。
―この時代は、もう手に負えないぐらい貧富の差があるらしい。でもどうしてこうなっちゃったんだろう。いわふる地区は、スラム街なのね。
「俺は地区出身ではない!歴としたネオ民だ!!」
何か上の方が騒がしい。男性の怒鳴り声がして、私は思わず肩を震わせた。
「大丈夫か、沙羅?」
「う、うん」
「どうやら噂ではなさそうだね」
私達は念の為、上の方へ向かった。当たりは人だかりが出来あまり見えなかったが、どうやら1人の男性と数人の警察らしき人が口論していた。
「地区民でないのなら、きちんと証明書を見せて下さい」
「そ、そんなものは家に置いて来た、、!」
「そうですか、では家はどちらに?」
「そ、それは…」
私はふとルキの方を向いた。ルキは深刻そうな顔をし、私に気づくと優しく微笑み、頭を撫でた。
「多分あの人地区民だろうね」
隣に居たエースは何食わぬ顔で言った。
「どうして分かるの?」
「うーん、まず見た目かな。見た目で判断するのはいけない事だけど。それに明らかに動揺してるじゃん?大体人間は嘘をつく時、右上を見るから」
―確かに、あの人ずっと右上を見てる。
私は右上に何かあるのかと思い、そちらの方を向いたがそこには何もなかった。
「良いですか?貴方は不法侵入しただけでも、とても重い罪になります。もしここで嘘をつくと、より重くなりますよ」
「くっくそ…俺はただ上の世界を見てみたかっただけなのに」
「くそ!クソクソ!!」
男性は膝を突きながら、悔しそうに叫んだ。
―何か可哀想だな
私は涙をぐっと堪えた。
そう。私は昔から嘘をつくのが苦手で、涙脆い。お父さんによく泣き虫だと笑われていた。
「でも、少しでも上の世界を見れたんだ。綺麗だな、Neon tokyo群は。俺たちには似合わないよ」
男性は寂しそうな笑顔を見せた。そして警察らしき人に連れられて、人混みの中に消えていった。
「どうした沙羅、泣いてるの?」
「えっ?」
―うそ、私泣いてるの?さっき必死に涙を堪えていたのに…
私は悔しさと先ほどの男性の笑顔とお父さんを思い出して、とうとう泣いてしまった。エースは「大丈夫?」と慌てて、優しく両手で涙を拭いてくれた。シノさんはぎゅっと抱きしめてくれた。ルキは頭を優しく撫でてくれた。
―私はたまたまルキが通りかかって声をかけてくれたから、今ここで暮らせている。もしルキと会っていなかったら、今頃私は…。私はルキに救われたんだ。
「どうする?沙羅、今日はもう疲れたから帰る?それともromor寄りたい?」
「寄りたい…寄りたいです、、」
「そっか、じゃあ行こうか」
「俺が沙羅に似合う服探してあげるね!」
「ありがとうエース、ルキもシノさんもありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」
「どうしてルキが感謝するの?感謝したいのは私だよ、ルキがあの時居なかったら、私は今頃…」
「言わなくていい、居た居なかったの問題じゃ無い。僕たちと沙羅は出会うべくして出会ったんだよ、沙羅は何も考えなくていいから、ね?」
ルキはそう言って、優しく抱きしめてくれた。
―あったかいなぁ
ルキもエースもシノさんも、とても暖かくて素敵な人。心の底から出逢えて良かったと思える。
「よし!!出発進行〜!」
エースの元気な掛け声に私もいつの間にかさっきの事は忘れ、笑顔で溢れていた。
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Feel good 創世美姫 @aoaoshinichi
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