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____レコーディングから3日後。
今日は朝から落ち着かなかった。
SNSには「新曲聴いた!」の通知が
次々と流れ、音楽配信サイトでは
ランキング入りもしている。
だけど、そんな中で気になっていたのは
――李玖の反応だった。
“もし聴いてくれたら、どんな顔するんだろう”
そう思っていた矢先だった。
昼過ぎ。スマホが震えた。
《李玖》
「新曲、聴いた。」
一瞬、指が止まる。
続けてメッセージが届く。
「あの曲、恋愛ソングだよな」
「もしかして…実体験だったりする?」
思わず吹き出してしまった。
“やっぱり、そこ聞くんだ。”
ソファに倒れ込みながら、茉耶は指を動かす。
《茉耶》
「だったらどうするの?」
既読がついたのに、すぐには返ってこない。
少しして、通知がまたひとつ。
《李玖》
「……ちょっと気になるってだけ」
“ちょっと”ってなに。
そう思いながら、顔が勝手にゆるむ。
──今回の曲は、片想いの気持ちを綴った
ミドルテンポのラブソングだった。
誰かに惹かれて、でもまだ一歩踏み出せない。
それでも伝えたい、好きっていう気持ち。
自分でも、書きながら気づいていた。
きっと、今の自分の気持ちそのままだって。
でも、それを言葉にする勇気は、
まだ持っていない。
だから代わりに、もう一通だけ送った。
《茉耶》
「李玖に聴いてもらえて、よかった」
それだけで、
なんだか今日一日が少し特別になる気がした。
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