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「てかさ、レポートの書き方、毎回正解がわかんないんだけど。“自分の考えを自由に”とか言いつつ、評価はガッツリ差が出るじゃん?」
「わかる〜。
“自由に”って一番不自由なやつだよね」
「“自由に”って言われたから自由に書いたら、“論理が飛躍している”って書かれたもん」
「あるあるすぎて笑えない。
私なんて、“感性が面白いけど根拠が弱い”ってコメントされたよ?」
「それ、もはや文学じゃなくて裁判の世界」
「いや、それこっちのセリフだから!そっちは全部が裁判の世界でしょ?」
「……ま、確かに。“あなたはどう思いましたか”なんて問われたこと、入学してから一度もない」
「え、じゃあいつも何書いてんの?」
「“この判例では〜”ってひたすら書いてる。思う隙がないの、俺のレポートには」
「おもしろ味ゼロじゃん」
「うん、文字数だけは立派だけど、ユーモアは1ミリもない」
「じゃあさ、今度交換して書いてみる?」
「俺が文学部のレポート書くの? “心の揺らぎを考察せよ”とか出された
ら、震えるんだけど」
「逆に私が法学部のレポート書いたら、“登場人物の心理描写が丁寧”とか褒められたい」
「……いや、それたぶん赤点」
ふたりで吹き出す。
ほんのり夕方に近づいた光が、
カフェの窓から差し込んで、
笑っている李玖の横顔を
やわらかく照らしていた。
楽しい。
ただ話してるだけなのに、
なんでこんなに落ち着くんだろ。
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