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「はぁー、今日は楽しかった!」
カフェを出て、キャンパスまでの帰り道。
少しだけ肌に触れる風が気持ちいい。
私が思わずそう言うと、
隣を歩いていた李玖が横目でこっちを見て、
ふっと優しく笑った。
「……ほんと、李玖といると元気出る」
ポツンと、でも本音で出たその言葉に、
李玖の足が一瞬止まりかけたのがわかった。
だけどすぐに、何事もなかったような顔で
肩をすくめてみせた。
「それ、言われると嬉しいけど…
…ちょっと照れるな」
「私が言って照れてんの?」
「うん。だって、茉耶って、
こういうのサラッと流すタイプだったじゃん」
「いや、サラッとじゃなくて
必死に隠してるだけだから」
「……あ、それは知らなかった」
李玖が笑いながら、手で頭をかいた。
「でもさ、俺も同じ。茉耶が笑ってくれてると、
勝手に“今日よかったな”って思える」
「……なにそれ」
「いや、事実だから」
ちょっと照れ隠しのように笑う李玖に、
こっちの心までくすぐったくなる。
「なんかさ……普通に話してるだけなのに、
楽しいんだよね。変だよね」
「変じゃないと思うよ」
「……そっか」
視線が自然と重なって、でもなんだか、
そこで目を逸らすのもったいない気がして──
ほんの数秒、そのまま見つめあった。
「……なんか、お腹すいた」
「話変わるの早っ」
「だって、緊張したくないんだもん」
「……そっか。じゃあ今度、またなんか食べに行こう」
「……うん」
小さく返事をしながら、
心のどこかで
“また”がちゃんと続いていくようにって、
願うような気持ちになる。
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