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「……逆にさ」
李玖がカップを置いて身を乗り出す。
「なんで文学部?…歌詞を書くため?とか?」
くすっと笑いながら冗談めかして言う李玖。
思わず吹き出した。
「……それ、めっちゃ失礼じゃない?」
「え、だって書いてそうだし、そういうの向いてそうじゃん?」
「いや、まぁ、否定はしないけど」
少し笑いながら、テーブルの端を指でなぞる。
「でも……正直に言うと、最初は迷ってた。
音楽の道に進むのも、ちょっと考えたんだ」
「……そうだよな」
「でも、なんか……それだけじゃ、
足りない気がして」
「足りない?」
「うん。言葉の力とか、物語とか。
人の心にちゃんと届くものを、自分の中にもっと持ちたいって思った。それで……文学部に行けば、答えが見つかるんじゃないかって」
「……真面目じゃん」
「いや、お互い様でしょ。
法学部で検察官目指してる人に比べたら、
全然フワフワしてるよ」
「……でも、ちょっとわかる気がする」
「え?」
「“心に届くもの”を、
ちゃんと持ってたいってとこ」
その一言に、ふっと和らぐ。
ちょっと、似てるのかな私たち。
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