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やがて、廊下の足音が近づいてくる。
不安と恐怖が交差する中、
ひとつの足音が止まった。
教室の前で。
「茉耶っ!」
ドア越しに聞こえたその声に、息を詰める。
「李玖……?」
「俺だ!開けて、入っていい?」
入り口の近くの人が鍵を開けた。
彼は息を切らしながら、
教室の中に駆け込んできて、
私を見つけた瞬間、その表情がやわらいだ。
「……良かった」
その一言が、胸に刺さる。
放送を聞いて真っ先に来てくれたんだろう
「ほんとに、来てくれた……」
「当たり前だろ。茉耶が“待ってる”って
言ったから」
彼はそう言って、少し笑った。
そして私の肩にそっと手を置いた。
「もう大丈夫。ここで待とう。俺がいるから」
心臓の鼓動がまだ早くて、
でも、彼の手のぬくもりが、
それを少しずつ落ち着かせてくれた。
私は小さくうなずいた。
――数分後、再び放送が流れ、
不審者が無事確保されたと知らされた。
騒動は落ち着いたけれど、
私の中で静かに揺れていたものは、
まだ止まっていなかった。
帰り道。
並んで歩く李玖の隣で、
私はふと、口を開いた。
「……あのときと、少し似てた。
閉じ込められたのも、怖かったのも。」
「……ありがとう。来てくれて」
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