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あの日から、
李玖と過ごす時間が少しずつ増えていった。
無理のない、自然なペースで。
昼休みに中庭で会ったり、
図書館で偶然見つけて「おつかれ」って
声をかけ合ったり。
帰りが同じタイミングになる日は、
並んで歩いて小さな交差点まで一緒に帰った。
不思議と、気を張らずにいられる時間だった。
「なあ」
ふいに、李玖が言った。
「中学のときの俺たちってさ、今思うと、
だいぶこじらせてたよな」
「……え? 何それ、どういう意味?」
「いや、あの頃さ。
俺、お前のこと心配してたくせに、
変にツンツンしてたっていうか……。なんか、
素直じゃなかったなーって」
「行き帰り、並ばず距離空けて歩いてたよね」
私も、思わず笑った。
「あったあった。なんか、思春期のプライド?
みたいなのが変に邪魔してたよな」
「確かに……思春期だったよね、あれは。」
ふたりで、くすくすと笑い合った。
あの頃の自分たちに会えたら、
言ってあげたい。
「もっと素直になっていいんだよ」って。
ゆっくりと積み上がっていく日々。
過去のことも、
思い出せるくらいに癒えてきた気がした。
次は、私の方からも何か届けられたらいいな。
そんな風に、思えた昼休みだった。
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