茉耶 side




講義が終わって、時計を見る。




13:27




あと30分くらい。




……落ち着け、私。




さっきから、鏡の前で前髪を直しては、




ため息をつくのを繰り返してる。





「会うだけ。話すだけ。

……なのに、なんで緊張してるんだろ」




ずっとずっと、会いたかったくせに。




ずっとあの日を思い出して、




歌に乗せることでしか、




あの想いを手放せなかったのに。





目の前に現れて、




名前を呼ばれて、




「また会おう」って言われて。




……胸の奥で、何かがほどけた気がした。




髪をひとつにまとめていたゴムを外して、




ふわっと巻いた髪を下ろす。




カジュアルすぎず、でも気合い入ってるって




思われすぎないよう朝選んだ服...




最後に、大学のトイレの鏡に向かって




ちょっとだけ笑ってみた。




「……行こ」




歩き出す足は、少しだけ速かった。




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