p.16



メッセージを送ったあと、スマホを伏せた。




何度も見返してしまいそうだったから。




けど——五秒で後悔する。




……何してんだ、俺。




「また話せたら嬉しい」なんて、




気取りすぎだったか?




いや、重すぎ? 軽すぎ? 




そもそも夜遅かったか?




落ち着こうとして、ベッドに仰向けになる。




なのに、




スマホのバイブが鳴ったような気がして、




すぐに体を起こした。



確認する。



通知──なし。



「……空耳かよ」



目を閉じてみても、茉耶の声が耳に残ってる。



“ありがとう、聴いてくれて”って、あの言い方。



少し震えてて、でも、ちゃんと前を見てた。



それだけで、なんかもう胸いっぱいになってたはずなのに。



欲が出る。



返事が、欲しい。



「……べつに、すぐじゃなくていいし」



小さく声に出して、自分に言い訳みたいに呟く。



けど、そのくせ三分ごとにスマホを開く自分がいる。



LINE、未読。



ステータスも、変わらない。



通知が来てないのに画面を確認する手は、



もう十回目くらい。



はぁ……



まるで中学生かよ、俺。



でも、いいよな。



今日、会えたんだから。



ちゃんと顔を見て、話せたんだから。



「……焦るな、李玖」



そう呟いて、スマホをそっと机に置いた。



すぐに寝れるわけないけど、



たぶんこの夜のソワソワすら、



今だけの特別な時間だって、




どこかでわかってた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る