李玖 side
茉耶がいなくなった朝、
いつもと同じはずの道が違って見えた。
隣を歩く気配も、からかい合う声も、
もうなかった。
最初は「すぐ慣れるだろ」って思ってた。
でも、慣れないまま日が過ぎていった。
茉耶と一緒に見てた景色が、
少しずつ色を失っていった。
連絡先は、消せなかった。
茉耶の「最後の通話履歴」
が通知画面に出るたび、
胸がぎゅっと締めつけられた。
それでも、その履歴があったから、
少しは救われてたのかもしれない。
あの夜、自分は助けられなかった。
手を伸ばしても、届かなかった。
もっと早く気づいていれば——。
だから、次こそはって思った。
勉強に本気で向き合ったのも、
大学を目指すって決めたのも、
「また会える場所」
に自分を連れていきたかったから。
茉耶がどこにいるか、わからなかった。
でも、同じ空の下で生きているってだけで、
頑張れる気がした。
……本当は、忘れたい日もあった。
忘れたほうが、楽だったと思う日もあった。
でも——
忘れるってことは、
“全部なかったことにする”ってことだ。
茉耶との日々も、想いも、約束も。
そんなの、できるわけなかった。
心のどこかで、いつも願っていた。
「もう一度会えたら、今度は逃さない」って。
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