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あの日を境に李玖との距離は縮まった。




行き帰りで一緒になると、




2人肩を並べて歩くようになった。




あの日の話題には直接は触れてこないけど、




心配してくれているのは伝わってきた。











ある日は、




父親の怒鳴り声が遠ざかるのを待って、




茉耶はサンダルをつっかけて家を飛び出した。




どこへ行くでもなく、




ただ歩いて、コンビニの前で立ち止まる。




財布は持ってこなかった。




でも、帰る場所もない。




そんな時、ふいに後ろから声がした。




「……茉耶?」




びくりと肩を震わせて振り返ると、




李玖がいた。




部活帰りらしく、




制服の上からパーカーを羽織っている。




「……こんなとこでなにしてんだよ」




「……ちょっと。夜風、涼しいなって……」




笑ってごまかす茉耶を、




李玖は黙って見つめた。




そして、一言。




「アイス食うぞ」




「え?」




「俺が食いたいだけだから。ついでだよ」




無理やり手を引かれ、店の中へ。




外のベンチでアイスを食べながら、




二人は黙って並んで座っていた。




寒くもないのに、




茉耶は凍えるように震えていた。




そっと自分のパーカーをかけてくれた




李玖の手のあたたかさが、




私の心の支えになった。





















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