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また別の日。
雨が降っていた。
図書室で時間をつぶしていると
閉館のアナウンスが流れる。
帰りたくなかった。
でも行く場所もなかった。
昇降口で傘を持たずに立ちすくむ茉耶に、
誰かが傘を差し出した。
「お前、また逃げてんのか」
李玖だった。
「……どうして、来たの」
「なんとなく」
「……ストーカー?」
「そっちのほうが怖いだろ、俺の心配しろよ」
ふたりで傘を一つ、家とは逆方向の公園まで歩いた。
雨が止んだ...。
ブランコに座って、しばらく無言。
ぽつり、と茉耶がつぶやく。
「帰っても、誰も待ってないのに」
李玖はそれには答えず、
代わりにポケットからチョコを一粒出して差し出した。
「甘いもん食え。ちょっとマシになる」
「……おじいちゃんかよ」
そう言って、茉耶は少しだけ笑った。
手の中のそれは、私が昔から好きな
チョコだった。
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