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夕食時のこの時間。
私のうちでは、モノの壊れる音と、
怒鳴り声が壁を震わせていた。
「もう、やだ...」
誰にも聞こえないつぶやき。
私はそっと、部屋のドアを開けて
玄関に向かった。
「おい...どこに行くんだっ」
靴を履く時間すら惜しかった。
ただ、ここから離れたかった。
裸足のまま、その声から逃げるように、
夜の街へ駆けた。
アスファルトの冷たさが、皮膚を刺していく。
それでも、足は止められなかった。
「茉耶?」
走り続けた先で、名前を呼ばれて、
思はず立ち止まる。
そこにいたのは____李玖だった。
街灯の下、少しだけ伸びた前髪の奥から。
真剣な眼差し。
気づけば、私の手は震えていて、
「なんで....」
言葉の続きが出て来なかった。
李玖の視線が、
袖から少しだけはみ出た腕に落ちる。
そこに、紫色に変色した痣があることに、
気づかないことは不可能だった。
「お前、それ....」
____秘密は夜にあっけなく崩れた。
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