もう一度。

姫野

再会に祝福を

僕は1年前に1年付き合った彼女と大喧嘩して別れた。喧嘩の原因は価値観の違いだった。大人になった今、あの頃を思い出してみると、生まれ育った環境が違うから価値観が違うのなんて当たり前なのになぜそれに気づけなかったのか。そう思う。1年も付き合えば、それなりの思い出があって、その思い出に未練が残っているのか彼女に未練が残っているのか、それとも情なのかわからなくなってくる。僕の日常に彼女が居たから、どこに行ってもいつまでも思い出して前に進めない。今君は僕じゃない人と幸せになっているのだろうか。ちゃんとご飯を食べれているのだろうか。仕事で嫌な思いはしてないか。1人で泣いている夜はないか。もう会えないのに、そんなことばっかり考える日々だった。


 ある日、友人の結婚式に招待された。友人曰く、元彼女も来るらしい。別れて1年後の再会。いろんな感情が押し寄せて一睡もできなかった。


 会場に着いて、1番最初に目に入ったのが元彼女だった。僕の目にはウェディングドレスを着ている新婦よりもキラキラと輝いていた。ボブだった髪の毛もロングになっていて、綺麗になっていた。

 式が始まってから自由交流の時間になった時、僕は君に声をかけた。


「久しぶり、覚えてる?」


「久しぶりー!覚えてるよもちろん」


 君が笑って答えてくれた。その時僕は、また胸が高鳴った。君の笑顔が好きだったのを思い出した。最後に見た顔が怒った顔だったから、こんなにもかわいく笑う女の子だったんだと実感した。


「元気にしてた?」


「うん、色々あったけど元気にしてたよ。そっちは?」


「僕も元気だったよ。」


 どこかぎこちない挨拶を交わして、お互いの今を話した。彼女は昔からの夢だった自分のアパレルブランドを立ち上げたらしい。そこまでに何回挫折したかを話してくれた。その後も話が色々盛り上がって、恋愛の話になった。


「今、好きた人いるの?」


 彼女にそう聞かれて僕は、


「ずっと忘れられなくてずっと好きな人いる。」


 そう素直に答えた。それに対して彼女は、


「そうだったんだね。実は私も忘れられなくてずっと好きな人がいる。」


 ちょっと泣きそうな目で無理に笑いながら僕の方を見た。胸が苦しくなった。


「私ね、ずっと後悔してたんだ。価値観が違うのなんて当たり前なのにそれを押し付けてばっかりですれ違っちゃって、あの時大嫌いって言ったことずっと後悔してた。ずっと謝りたかった。もう一度会いたかった。」


 僕は彼女から言われた事に涙が止まらなくなった。同じ気持ちだった事、お互い後悔していた事を知った。


「僕も、ずっとずっと君に逢いたかった。君の事がずっと好きだった。忘れられなかった。もう一度、やり直したかった。」 


「私達もう一度、やり直そう。」


 2人とも泣きながらいつのまにかハグしていた。近くで新郎新婦も笑顔で僕達のことを見ていた。

 後日、友人からずっと僕のことが忘れられないと相談していた事を聞いた。結婚式の時新郎新婦は僕と彼女の事をずっと気にかけていたらしい。うまく行きますようにと願ってくれていた。


 それからだいぶ月日が経って、今、僕と彼女は式場にいる。前は喧嘩ばっかりだったものが今は日々笑顔で溢れている。価値観の違いも年月が経てば、お互い成長していたり、理解できることが増えた。でもそれはきっと、彼女と一度離れなかったら気づけなかった事だったと思う。"運命の人とは一度離れる。"恋愛でよく言われる言葉。きっと、僕の運命の人は彼女だろう。そんな彼女と再会できたこの場所で、僕は君と愛を誓う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

もう一度。 姫野 @dio0915

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画