さてはこれ胃が原因じゃないな
消化器内科にて処方されているアコファイド、結局ぜんぜん効いてはいなかった。
信憑性はともかく私が血眼で調べた結果によると、機能性ディスペプシアにアコファイドが効く確率自体が五分くらいらしい。二度言うが信憑性はともかくだ。
なんせ機能性ディスペプシアと言うと妙にスタイリッシュだが、シンプルに呼ぶならストレス性の胃炎である。
患者によってストレスは違うに決まっているのだ!
時期としては二月頃、また一ヶ月後に〜と言われた消化器内科受診の日が訪れた。相変わらず混んでいた。座っていると何故かいつも息苦しく、この日もぐったりしながら呼ばれるのをひたすら待っていた。
久々に顔を合わせたA先生はやはりぱちぱちと瞬きをしていた。
「草森さん、お加減はどうでしょう」
「最悪です」
「あらら」
あららちゃうねん、うっかり振り込んだアカギかな? とは言わないけれど、軽いな〜とは思った。しかしA先生は担当医。次なる手を打ってほしい。
私がじっとしていると、先生はおもむろにモニターに何かを表示した。
「この前に撮ったCTの画像なんですけどね」
そういえば確認していなかった。
「はい、CT……」
「まあ見てください、このように……(カチッカチッ)問題は〜……(ぱちっぱちっ)ないです……ねえ(カチッぱちっ)」
目まぐるしいな……。
ぜんぜん話が頭に入って来なかったが、とりあえず何らかの異常がないのはわかった。
いや肝臓だけちょっとポリープ? じみたものがあるらしかったが、まあ平気でしょう! で片付けられた。
A先生は再び調子について尋ねてきた。私はすばやく首を振る。
「アコファイドは……効いてないと思われて……特に朝がすんごいもたれて……」
「寝不足だと、それだけで胃腸の具合いは悪くなりますからね〜……」
「ああ……」
「胃もたれどうこうよりも、不眠をどうにかする方が良い方向にいくかもしれませんねえ」
「いや……まあ……」
それなら消化器内科に来ても意味ないのでは……。
そう思いつつ、半夏厚朴湯はすごく効いているという話をした。
A先生はぱちぱちしながらにこにことした。
「じゃあ今回も一ヶ月分、アコファイドと半夏厚朴湯を出しておきます」
「アッ、ハイ」
「それではお大事にしてください」
「ありがとうございました……」
アコファイドはともかく半夏厚朴湯は欲しいので、おとなしく会計をして薬局に行った。
ここから次の受診までの一ヶ月、私はついに決意した。
オンラインのメンタルクリニックをやめて、なんとか通える範囲の精神科クリニックへ行くことにしたのだ。
詳しくは精神科・心療内科項目で書き記すが、オンラインメンタルクリニックはこう……問題がいくつか生じていた。なので、直接対面で診察してもらうと決めた。
そして次に消化器内科へ行った時には、アコファイドはもう要らないし半夏厚朴湯は精神科に処方してもらうと話そうと思った。
消化器内科、けして悪くはないし、色々な検査を経てとりあえずの病名を出してくれたことは物凄く感謝しているのだが、快方へ向かうために通う診療科ではないと薄々感じ始めていた。
なにせ、一番困っているのは不眠だった。
それにA先生は私が不眠がつらすぎると漏らした時に、目をぱちんぱちんさせながら言った。
「僕で良ければ話なら聞くけど、消化器内科だからね……睡眠薬も一応出せますが、そのー、ちゃんとした心療内科へ行かれた方が……あと、オンラインの診断ってあまり信憑性がないんじゃないかなと思いますね……」
これがオフラインメンクリにしようと決めた一因でもあり、消化器内科は多分違うんだと感じた要因だ。
私は一ヶ月の間に駅チカのアクセス良好な精神科クリニックに通い始めた。
そして一ヶ月ぶりの消化器内科受診の日が訪れてすっかり通い慣れたD病院へと向かったところ、まさかの事態が起こった。
A先生が、退職していたのである……!
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