バトンタッチされました

 脳神経内科のY先生との対面診察の前にMRIの感想を示しておくのだが、なんとも不思議な感覚だった。やったことある人がどのくらいいるかはわからない。私と同じ感想になるのかもわからない。だがこう……不思議な感覚でしたよね……?

 まず検査の前にクリアすべき項目がたくさんある。ペースメーカーのような装置があれば不可だし、金属類はすべて外す。ほかにもあったがたくさん過ぎて忘れた。撮る時は着替えて病院着になり、異様に静かな待合室でじっと順番を待っている。

 待合室もだが、MRI撮影室は更に静かに感じた。しかし検査技師のお兄さんが、説明をしてくれた後に耳栓を渡してきた。えっこんなに静かなのに……と思ったが、どうも機械が中々の音らしい。

 大人しく耳栓をつけてから寝転がった。撮影が開始されると、耳栓を渡された理由はわかった。


『ゴインゴインゴイン!!!』

『ガー!ガー!ガー!』

『ドゥンッ!ドゥンッ!ドゥンッ!』


 サタデー・ナイト・フィーバーかな? すごくうるさかった。安らかに横になっていたのでちょっと眠れるかなと目を閉じつつ考えていたが余裕で不可能だった。MRIは野獣である。しかしまあ、耳栓をしているので耐えられないわけではない。


 MRI撮影終了後、診察へ。この前もお会いした脳神経内科のY先生は相変わらずのいい笑顔だった……が、しかし。


「草森さんの脳、めまいの原因としての異常は見当たらないんですが……ここを見てください」


 見せられたのは脳を真横に輪切りにしたようなMRI画像。パソコンのマウスをぐるぐるすると脳の中全体を断面図として細かく見ていける仕様で、Y先生は途中の画像部分でマウスを止める。

 示されるのでよく見てみると、なにかのコブのようなものがある。

 脳を上から見た図を思い浮かべて欲しい。右脳と左脳があると思う。そこから少し奥へ潜り込んでいくと、右脳と左脳に分かれつつ、真ん中でひっそり繋がっている図式になる。

 この真ん中でひっそり繋がっている辺り、特に左脳側に変な膨らみがあった。

 なんだこれ? と思っていると、Y先生がこっちを向いた。


「これね、内科分野じゃなんともならなくて」

「へっ」

「脳神経外科に回します」

「えっ」

「めまいに関しては脳は本当に関係ないので、やっぱり耳鼻科にお願いします」


 診察室を出たあと、看護師さんに「脳神経外科はあちらです」と優しい微笑みで誘導してもらった。私はもう、なかなかにフラついていた。なにせこの頃には不眠真っ最中でメンタルガタガタ、毎日どうやって過ごせばいいかわからない異様な状態に陥っていたのである。

 座っているだけで呼吸困難気味という意味不明な症状になりながら脳神経外科の前でじっとしていた。

 呼び出されて診察室に入ると、キリッとした女性であるS先生が待っていた。

 

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