整形外科
つまり、よくわからん
はじめに書くが、D病院の整形外科はこの一度しか行っていない。でも飛ばすわけにもいかない大事な診断だったなと思ったので書き残す。
二時間以上待った脳神経内科に比べるとそこそこ空いていた。ぼんやりと椅子に座って待っている間に名前を呼ばれ、あれよあれよとレントゲンを撮ることになり、なんだかサクッと撮影してくれたなあと考えている間にすぐ順番がやってきた。
先生の名前は覚えていない。私のレントゲン写真をすばやく表示して、難しい顔をしながら背骨や肩甲骨の辺りを指し示した。
「この辺りが痛いんでしたよね?」
「あ、はい。半日ほど動くともう痛くて」
「うーん……特に骨に異常はないです」
「え」
「ほらここ、綺麗なもんですよ」
安らかな死に顔への感想のようなことを言われた。しかしながら痛みはこうして話している間にもじわじわじわじわ迫っている。
「えーと、肩甲骨の内側とか、背骨のあたりの筋肉とか、首? とかも痛いんですが……」
「でも本当に異常はないです」
「え、ええ……?」
「痛み止めと湿布を出します。それで、また異常を感じたら来てください」
これで診察は終わった。すごすごと診察室を出て、痛み止めと湿布を薬局でもらって帰宅した。
家に入ってから一応湿布は貼った。ひんやりして気持ちよかったが、とりあえずの炎症を抑えているだけであり……症状の改善とはまた違う……。
私はこの時には色々と症状が出始めていた。意識しないうちに少しずつ精神面がまずくなっていきつつもあった。今考えれば整形外科の先生はできる限りの検査をして様子見をしようと決めてくれただけであり、誤診だったわけではけしてない。
むしろこの背骨や肩甲骨の痛みについては未だに原因不明のままなのだ。現状としてはかなり治まってはいて、姿勢の悪さが一因だったのだろうなあと思ってはいるが定かではない。そして頂いた湿布は別口で腰をいわした時に張り付けられたので整形外科医様々なのである。
ところで、原因不明と言いつつちょっとした後日談がある。
この診察を受けた後、昔からの知人と通話をする機会があり、その時に聞いた話だ。
詳細は伏せるがこの時に知人も病気を抱えていた。その病気は精神面と肉体面の両方に作用するものらしかった。
「そうやったんか……今は大丈夫なん?」
「ぜんぜん大丈夫ちゃうよ〜」
「う……ごめん……」
「あはは、まあせやけどほんま大変やったよ。かなり精神的に追い詰められてた時にさ、肩とか背中とかがバッキバキになってきて」
「えっ?」
「なんかメンタルやられるとフィジカルにも出るらしいんよね。うちは背中とか背骨のあたりがほんまに痛くなってん」
おわかり頂けただろうか。
私は話を聞きながらダラダラダラダラと冷や汗を流していた。
なにせこの話をした時には不眠の真っ只中で、オンラインのメンタルクリニックに睡眠薬を貰い始めていた時期であり、謎の動悸や謎の耳鳴りや謎の焦燥感や……とにかくどんどん限界になっていっている途中だったのだ。
「え、草森くんも背中とか痛いん!? はよなんとかしたほうがええよはよ病院行って検査しな!!!」
知人の訴えを聞きながら動悸が激しくなっていっており、喉がゴロゴロと詰まり始めていた。
今思い返すと整形外科での診察は必要だった。
骨や筋肉に異常はないとしっかり確かめるために診察すべきだったし、私はもっと肩甲骨や背骨の痛みを重く受け止めて詳しく調べるべきだったのである。
まあ遅いんですが。
みんなは気を付けなはれや!
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