番外編

「あっあの!」


ある日の休み時間、クラスメイトの女の子が話しかけてきた。


「はい?何かしら?」


誰だっけこの子?と思いながら表向きは猫を被る。


「こっこれ、赤井さんのじゃないかなって」


そう言って、おずおずと彼女が差し出して来たのは、ハサミを象った飾りのついた銀のネックレスだ。


あたしは咄嗟に首もとに手をやる。ない。


「これ、いつも赤井さんがつけているネックレスかなって……思ったん……だけど……」


そう言って自信なさげに話す彼女の手を取って、あたしは満面の笑みで言う。


「ありがとう!これ、とても大切のものだったの!!嬉しいわ!!」


そう言って彼女の手を握ってぶんぶんと振ると、彼女もホッとした顔になる。


「ねぇっ!せっかくだからこのままお話ししない?これを拾ってくれたお礼もしたいし、私、貴女とお友達になりたいわ!!」


あたしが勢いよくまくし立てると彼女の顔がパッと綻ぶ。


「私も赤井さんとお友達になりたかったの!」


彼女は嬉しそうに笑う。


「赤井さんだなんてなんだか他人行儀だわ。いとって呼んで!ねっ!!」


「う、うん。い、いとちゃん……私のことも名前で……花って呼んで」


「分かったわ、花。良い名前ね」


……こうして、私にとって初めてのクラスメイトのお友達が出来た。


その日の帰路は、善光と花のことを話しながらウキウキで家に帰った。


家に着くと五条さんが待っていて、


「お嬢様、新しいのお仕事のデータでございます」


と、書類の入った封筒を渡された。


内容に素早く目を通す。


依頼者の名前と期日、それから商品の名前と写真。


『吉村花』


そこには、今日新しく覚えた、お友達の顔があった。


「あ〜あ」

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血染めのベティ しゆ @see_you

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